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『人外境の花嫁』九.秘蹟の祭祀者(二)

『人外境の花嫁』 

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九.秘蹟の祭祀者 (二)

そこはまたも不可思議な空間だった。

一階の修行者居室の二倍、建物三階フロアの大半に相当する広さがありそうだった。

緩やかな傾斜を持った擂り鉢状のアリーナ構造で、中央の祭壇が四方から見下ろせるようになっている。

天神会総本山の大聖天堂。

まず月絵の目に飛び込んで来たのは、再び血を撒き散らしたような一面の赤色だった。

月絵はズキンと下腹部に疼きを覚えた。

(人を狂わせる赤・・)

赤の絨毯、赤の壁、そして赤の天井。

窓一つのない密閉された赤の空間は、本能的に人間を発情させる仕掛けなのかもしれない。

そして香が焚かれているのか、ホール全体に白い煙と甘い匂いが漂っている。

深く息を吸い込む度に、頭が研ぎ澄まされて胸の鼓動が高鳴ってくる。

ふと奇妙な木像が目についた。

(・・象の人型?)

ホールの中央にある祭壇に、象面人身の二体が抱擁する巨大な彫像がそびえていた。

夥しい蝋燭の炎に照らされ、彫像は油を塗ったようにてらてらした光沢を帯びている。

その彫像を囲んで、おそらく天神会の幹部なのだろうか、色彩々の貫頭衣を着た男女が平伏していた。

(黒ミサ、黒魔術・・?)

月絵は経験したこともない異様な光景にたじろいだ。

荘厳でありながら、どこか滑稽でもあり、背筋が凍るような狂気がひたひたと染みてくる。

理性を失いそうな幻覚の波に、月絵は慌てて頭を左右に激しく振った。

つづく…

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『人外境の花嫁』九.秘蹟の祭祀者(一)

『人外境の花嫁』 

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九.秘蹟の祭祀者 (一)

人外境。

月絵の脳裏にそんな三文字が過った。

記憶が無意識に呼び覚ました言葉だった。

江戸川乱歩の『孤島の鬼』を読んで覚えたのか、否、最近もどこかで耳にしたような気がする。

人の道に外れた者達の異境。

現代社会から食み出した魔窟には、小賢しい倫理や道徳などと無縁な、剥き出しの本性だけが律法として存在する。

光が届かない闇。

だが文明は闇を消していく。

ニューギニアの裸族が中国製の衣類でお洒落を楽しみ、モンゴルの遊牧民が携帯電話で家族に帰るコールする。

日本に至っては白夜の国である。

二十四時間、街は監視カメラに見張られ、些細な密事をもネットで騒ぎ立てられる。賄賂を、談合を、密談を、差別を、スキャンダルを・・戦前の隣組さながらに人々は闇を暴こうと手を拱いている。

一億総憲兵時代。

ガラス張りの狭い金魚鉢に閉じ込められた人間は、体内の免疫細胞さながら、ヒステリックに異分子を駆逐しようとする。

だが光が強いほど闇は深くなる。

生まれ持った邪な本性は、眩しい光を避けて僅かな闇へ逃げ込んで行く。

人外の欲望は闇の温床で増殖を続け、大暗黒の反社会帝国を密かに建国せんとしているのかもしれない。

事実、ヨガ道場から始まったオウム真理教も、神秘主義に傾倒する若者の心を捉え、無差別殺人を目指す教団へと迷走した。

表向きは貧困者救済慈善団体の天神会は何を目指しているのか?

ショーツ一枚で後ろ手に手錠をかけられた月絵は、三階の大聖天堂の扉の前でぶるっと身震いした。

つづく…

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『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(二十三)

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八.山奥の探索者 (二十三)

突然、ホールの扉が突然開いた。

作務衣を着た男が走り寄り、陰部を舐めさせて陶然とする菜穂に耳打ちした。

「子猿、箕面谷の神社跡に、赤いスカイラインが脱輪して停まっているとの連絡だよ。横浜ナンバーをつけているけど、運転者の姿はどこにも見当たらないらしいのさ」

子猿は月絵の体を男達に預けると、菜穂の足許に跪いた。

「今夜の大事な儀式を前に、また不審な侵入者ですか。横浜ナンバー・・まさかお前達の仲間じゃないだろうな?」

子猿は月絵を怒鳴りつけた。

「・・知りません」

「まあいい。こんな山奥で車がなければ、大概の人間は樹海に迷って生きては帰れない」

そう毒づくと、子猿は修行者の男達を連れてホールを出て行った。

月絵は溢れる涙を零さないよう必死に口唇を噛んだ。

(先生・・来てくれたのね・・)

赤いスカイラインは降矢木の愛車である。

おそらく一昼夜かけて、横浜から月絵のことを心配して駆けつけてくれたのだろう。

ときめく鼓動が月絵の胸を締めつける。

(先生、先生、先生・・ああ、でも・・)

いくら頭脳が明晰でも、非力な降矢木が狂気の天神会に勝てるわけがない。

この建物に近づいただけで射殺されるかもしれない。

月絵は慄いた。

(先生の身に何かあったら・・)

菜穂や子猿程度の下っ端ではなく、直接乱裁道宗と話をつけなければと思った。

心の中でぷつんと何かが切れた。

月絵は大声で菜穂を怒鳴りつけた。

「ちょっとアンタ、大人しくしてりゃいい気になりやがって、もう我慢できないわ!」

菜穂は吃驚した表情を月絵に向けた。

「あたしを誰だと思っているのよ。横浜若葉会の親分、吉水金治の娘だよ。吉水金治はアンタの親分、足立寛三の弟分だ。アンタ等、弟分の娘にこんな仕打ちをするのかよぉ。おい、事を荒立てたくないなら、今すぐ足立寛三に吉水の娘が来たと伝えるんだよっ!」

そう叫ぶや、月絵は後ろから首を抱えていた配下の男に強烈な頭突きを見舞った。男は鼻を強打されて腰から砕け落ちた。

月絵の豹変に菜穂は茫然としながらも、男の一人を呼んでホールの外へ走らせた。

「つ、月絵ちゃん・・」

何が恐くて震えているのかわからない畠山を尻目に、覚悟を決めた月絵は、ショーツ一枚の艶めかしい裸身でどっかりと胡坐をかいた。

つづく…

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『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(二十二)

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八.山奥の探索者 (二十二)

後ろ手に手錠をかけられた月絵は、カッターの刃先よりも、狂気に支配された男達の凶悪な目に恐怖を感じた。

「や、やめて・・」

すでにTシャツはボロボロで跡形もなく、上半身は薄いピンク色のブラジャーだけが身を守っていた。

だがその頼みの綱もあっさり切り落とされた。

「おおっ、結構でかいパイオツじゃねえか」

「へへ、吸いつきたくような乳首だぜ」

ブラジャーを失ってこぼれ出た乳房に、男達が卑猥な言葉を浴びせかける。

気丈な月絵も羞恥に震えた。

「厭、見ないで・・お願い、見ないで・・」

露にされた乳房が、ハイエナのような男達の目に晒されている。

手を背中で戒められた上、首を子猿に抱えられて身を屈めることもできない。

畠山は顔を月絵から背けて項垂れている。

「月絵ちゃん、不甲斐なくて申し訳ない。俺は先生に何て謝れば・・」

止めどなく月絵の目から涙が溢れた。

(もう先生に逢えない)

人吉の温泉で、軽率にも体を濡らした妄想が現実となってしまった。

しかもこのまま天神会に洗脳され、降矢木のことも記憶から消し去られてしまうかもしれない。

「厭、絶対に厭っ!」

月絵は渾身の力で暴れようとしたが、動けば動くほど、首に食い込んだ子猿の腕が締っていく。

「いいぞ、もっと暴れろ。小便を漏らすまで首が絞まっていくだけだ」

子猿は月絵の断末魔を楽しみながら、ゆっくりとショーツに片手をかけた。

つづく…

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『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(二十一)

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八.山奥の探索者 (二十一)

月絵は目を瞑った。

「狂っている・・自分の意志がない世界なんてありえないわ」

「ああん・・そうかしら。世の中の人間なんて、大半がクラゲのように意志もなく漂っているだけじゃない?」

「で、でも・・」

「確かにセックスは気持ちいいわ・・でもそれ以上に、全てを曝け出した『私』のない共同世界には、悩むこともなく、迷うこともなく、見栄を張ることもない。だから逆に心と体の自由があるのよ。そしてセックスを共有し合うことで、全員が夫婦のように深い絆で結ばれるのよ」

菜穂は男の舌を奥へ誘うように、立ったまま腰を悩ましく振った。

すると、子猿が再び背後から月絵の首筋へ腕を回した。

「動くと死ぬことになるぞ」

子猿が声をかけると、周囲の男達が何かを片手に集まってきた。

カッターナイフだった。

「な、何をするつもりなの?」

「くっくっ、そんなにいきり立つな。お互い裸になってゆっくり話そうじゃないか」

背後から首を固められた月絵に、男達が群がり着衣を切り刻んでいく。

「い、厭っ!」

「おいおい、ちょっとでも動くと綺麗な肌に傷がついちゃうよ」

興奮して息を荒げた子猿は、耳を舐めんばかりに口を近づけて囁いた。

つづく…

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『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(二十)

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八.山奥の探索者 (二十)

月絵は顔を背けた。

「・・穢らわしい!」

だが月絵は菜穂に髪をつかまれ、絡み合う男と女の痴態へ顔を向けさせられた。

「よく見るのよ。この天神会では全てを乱裁様が司られているの。己のものなど何一つない。財産も肉体も、そして命ですら、乱裁様お一人のために捧げなければならない」

「・・・・」

「そして乱裁様は、自分のものを全て平等に分け与えられるの。つまり天神会に仕える者は、全て乱裁様の所有物であり、全て乱裁様から平等に与えられているのよ」

菜穂はそう耳元で囁きながら月絵を背後から羽交い絞めにした。

「こんなの宗教でも何でもないわ。ただの変態よ、変態の集まりだわ」

「聞きなさい、小娘。私達は乱裁様と言う神の下で自由でいられるの。煩わしい『私』などない。全ては乱裁様のものであり、天神会全員のものであるのよ。だからここでは、好きな時に女を抱くこともできれば、性欲のままに男をくわえることも許されているの」

菜穂はそう言うと、若い修行者の男を手招きした。

「さあ、私のオメコを舐めなさい」

菜穂はスカートを捲ってショーツを足首まで下ろすと、立ったまま陰部を男の前に突き付けた。

「仰せの通りに」

まだ子供の面影を残す若者が、菜穂の足許に跪き、顔を上げて濃い陰毛の奥へ口唇を近づけた。

「ああ、もっと舌先を堅くして・・そうよ、オメコを掻き混ぜるように舐めなさい」

くちゅくちゅと音を立てて、若い男は仁王立ちした菜穂の陰部を舐り始めた。

つづく…

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『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(十九)

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八.山奥の探索者 (十九)

この世の光景とは思えなかった。

男と女の秘め事が、白昼堂々、しかも仲間達の前で堂々と営まれているのだ。

一人はまだ二十代前半だろうか、キャバクラで働いていそうな茶髪の女である。

「ああっ、とろけちゃう」

四つん這いになって上半身を弓なりに反らし、背後から中年男に尻を抱えられていた。

脇でじっと見ていた若い男が、すでにそり立った男根を、うっとりした女の口許へ捩じり込んでいく。

また一人の女はもう三十代半ばぐらいか、むっちりとした小太りな体が艶めかしい。

「んぐっ、んぐぅ・・おいひい、大きなチンポがおいひいよぉ」

両脚をV字に開いて男を受け入れながら、顔の左右から差し出された若い男の男根二本を交互に頬張っている。

もう一人の女は、おそらく五十路に近い熟女で、細いフレームの眼鏡をかけた、インテリ女教師然とした顔立ちをしている。

「いいっ、たまらないわぁ・・お願い、硬いチンポでお尻の穴をもっと突いてぇ!」

女はその容貌からは想像できない隠語を連呼し、仰向けに寝た若い男に跨り、千切れんばかりに垂れた乳房を揺らしている。

月絵は唖然と立ち尽くすしかなかった。

人前で性行為に耽ること自体があり得ないのに、もっと不気味なのは、それを平然と周囲の者が受け入れていることだった。

性行為に麻痺しているのか、女達の喘ぎ声など気にせず、読書に集中したり会話に花を咲かせたりしている修行者が多いのだ。

まるで食事かスポーツでもするかのように、セックスが羞恥も遠慮もない日常生活と認められているようだった。

つづく…

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『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(十八)

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八.山奥の探索者 (十八)

関係者以外立入禁止。

赤字で書かれた扉のセキュリティを解除した菜穂は、本部の直属修行者達の居室スペースへ足を踏み入れた。

「あっ!」

思わず月絵は声を上げて畠山の顔を見た。畠山も目を見開いたまま凍りついている。

そこは巨大なホールになっていた。

広さは学校の体育館ほどあるだろうか、窓のない赤い壁と天井、そして床にも赤いカーペットが敷き詰められている。

赤一色の空間。

壁際にはスティール製の二段ベッドがずらりと並べられ、ホールの中央右側には五十席近くのテーブルと椅子、そして左側は何も置かれていないスペースになっている。

菜穂は驚く二人を見ながら言った。

「ここで修行者が共同生活をしているの。ご覧の通り、老若男女の区別なく、トイレ以外にプライバシーはないのよ」

「こんなことって・・」

月絵は絶句して、慌ててホールから目を逸らした。

修行者と呼ばれる者達は皆全裸だった。

両脚を開いて陰部を露出したまま食事をしている男もいれば、床に胡坐をかいて乳房を揺らして談笑に耽る女達もいる。

それはまるで、幼い頃、養父に連れられて行った銭湯の光景だった。

それだけではない。

血が滴ったような赤いカーペットの上で、三人の女が複数の男達と絡み合っていた。

「ああっ、いい」

男に犯されている女達の喘ぎ声が、赤いホール全体に響き渡っているのだった。

つづく…

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『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(十七)

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八.山奥の探索者 (十七)

月絵は菜穂の話をうわの空で聞いていた。

(ああ、どうしたらいいのかしら・・)

既に菜穂は、月絵と畠山が仲間になったかの如く、天神会入会のオリエンテーションに熱が入っている。

確かに人数からすれば圧倒的に不利な状況であり、このまま道場に留め置かれれば、精神的にも支障を来たす可能性が高い。

体覚醒とは何なのか?

子猿と呼ばれる男が語った卑猥な言葉から考えれば、おそらくセックスによる服従のようなものなのだろう。

昔、降矢木が話していたことがある。

人間には、脳内モルヒネと呼ばれるβ―エンドルフィンという物質があり、エクスタシーなどの際に脳内で分泌され、多幸感や鎮痛作用をもたらすらしい。

セックスに依存性があるのは、脳内モルヒネの作用によるものだと降矢木は言っていた。

確かにこの頑強な建物に閉じ込められ、日夜男に犯されながら信仰を耳元で囁かれれば、如何なる賢人であろうと、狂気に逆らうことができなくなるのかもしれない。

エントランスを進んで、菜穂は一階中央にある自動扉を開けた。

建物の奥へ一直線に廊下が続いている。

「廊下の左側が天神会本部の執務室、右側が宿泊施設の厨房やリネン室。真っ直ぐ行った突き当たりが、直属修行者の居室スペースになっているのよ」

八角形をした建物の半径ぐらい廊下を進むと、正面に重々しい鉄の扉が現れた。

つづく…

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『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(十六)

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八.山奥の探索者 (十六)

菜穂は続けた。

「いずれにしろお前達は、殺されるか、天神会の人間になるかの二者択一しかないのさ。まあ、御沙汰は教祖様のお考え次第だけど、この本部道場について教えておいてやるわ」

苦痛に歪んだ月絵の顔を楽しみながら、菜穂は深山に鎮座する建物の説明を始めた。

この本部道場は、天神会の祭事を取り仕切る大本山であり、全国に五十人あまりいる幹部のための修養施設である。

ここには、菜穂や子猿のように本部で仕える二十人の幹部の他、作務衣姿の直属修行者が三十人ほど暮らしている。

直属修行者とは、天神会本部を支える作業部隊で、事務職から料理人、システムエンジニアに至るまで、準幹部としての地位が与えられている。

彼等はここで修業を終えると、幹部に昇格して各地の支部へと配属されていく。

菜穂は月絵に言った。

「あんた達も五年ぐらい彼等のように修行したら、天神会の幹部として箕面谷から出られるようになるかもね」

「い、厭です。こんな暴力教団の信者になどなりません・・あっ、厭っ!」

「せいぜい今のうちにほざいておきなさい。ふふ、この体が心と裏腹に、天神会から離れられなくなるんだからね」

両手で月絵の乳房をぎゅっと鷲づかみにすると、菜穂は勝ち誇ったように話を続けた。

建物の一階は、天神会の本部執務室や大厨房、そして直属修行者達の居室スペースになっている。

そして二階は、修行に訪れた幹部達の宿泊エリアで、大食堂や温泉つき大浴場、ホテル並の個室が用意されている。

また菜穂や子猿など、本部に仕える幹部も普段は二階で暮らしている。

最上階の三階は、幹部だけが入室を許されるフロアで、天神会総本山の大聖天堂に充てられている。

そこには本尊の聖天像が設えており、教祖である乱裁道宗の居住区もあると言う。

つづく…

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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご挨拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。               
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
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