『人外境の花嫁』九.秘蹟の祭祀者(二)
『人外境の花嫁』
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九.秘蹟の祭祀者 (二)
そこはまたも不可思議な空間だった。
一階の修行者居室の二倍、建物三階フロアの大半に相当する広さがありそうだった。
緩やかな傾斜を持った擂り鉢状のアリーナ構造で、中央の祭壇が四方から見下ろせるようになっている。
天神会総本山の大聖天堂。
まず月絵の目に飛び込んで来たのは、再び血を撒き散らしたような一面の赤色だった。
月絵はズキンと下腹部に疼きを覚えた。
(人を狂わせる赤・・)
赤の絨毯、赤の壁、そして赤の天井。
窓一つのない密閉された赤の空間は、本能的に人間を発情させる仕掛けなのかもしれない。
そして香が焚かれているのか、ホール全体に白い煙と甘い匂いが漂っている。
深く息を吸い込む度に、頭が研ぎ澄まされて胸の鼓動が高鳴ってくる。
ふと奇妙な木像が目についた。
(・・象の人型?)
ホールの中央にある祭壇に、象面人身の二体が抱擁する巨大な彫像がそびえていた。
夥しい蝋燭の炎に照らされ、彫像は油を塗ったようにてらてらした光沢を帯びている。
その彫像を囲んで、おそらく天神会の幹部なのだろうか、色彩々の貫頭衣を着た男女が平伏していた。
(黒ミサ、黒魔術・・?)
月絵は経験したこともない異様な光景にたじろいだ。
荘厳でありながら、どこか滑稽でもあり、背筋が凍るような狂気がひたひたと染みてくる。
理性を失いそうな幻覚の波に、月絵は慌てて頭を左右に激しく振った。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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天神会総本山の大聖天堂。
まず月絵の目に飛び込んで来たのは、再び血を撒き散らしたような一面の赤色だった。
月絵はズキンと下腹部に疼きを覚えた。
(人を狂わせる赤・・)
赤の絨毯、赤の壁、そして赤の天井。
窓一つのない密閉された赤の空間は、本能的に人間を発情させる仕掛けなのかもしれない。
そして香が焚かれているのか、ホール全体に白い煙と甘い匂いが漂っている。
深く息を吸い込む度に、頭が研ぎ澄まされて胸の鼓動が高鳴ってくる。
ふと奇妙な木像が目についた。
(・・象の人型?)
ホールの中央にある祭壇に、象面人身の二体が抱擁する巨大な彫像がそびえていた。
夥しい蝋燭の炎に照らされ、彫像は油を塗ったようにてらてらした光沢を帯びている。
その彫像を囲んで、おそらく天神会の幹部なのだろうか、色彩々の貫頭衣を着た男女が平伏していた。
(黒ミサ、黒魔術・・?)
月絵は経験したこともない異様な光景にたじろいだ。
荘厳でありながら、どこか滑稽でもあり、背筋が凍るような狂気がひたひたと染みてくる。
理性を失いそうな幻覚の波に、月絵は慌てて頭を左右に激しく振った。
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