『人外境の花嫁』九.秘蹟の祭祀者(一)
『人外境の花嫁』
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九.秘蹟の祭祀者 (一)
人外境。
月絵の脳裏にそんな三文字が過った。
記憶が無意識に呼び覚ました言葉だった。
江戸川乱歩の『孤島の鬼』を読んで覚えたのか、否、最近もどこかで耳にしたような気がする。
人の道に外れた者達の異境。
現代社会から食み出した魔窟には、小賢しい倫理や道徳などと無縁な、剥き出しの本性だけが律法として存在する。
光が届かない闇。
だが文明は闇を消していく。
ニューギニアの裸族が中国製の衣類でお洒落を楽しみ、モンゴルの遊牧民が携帯電話で家族に帰るコールする。
日本に至っては白夜の国である。
二十四時間、街は監視カメラに見張られ、些細な密事をもネットで騒ぎ立てられる。賄賂を、談合を、密談を、差別を、スキャンダルを・・戦前の隣組さながらに人々は闇を暴こうと手を拱いている。
一億総憲兵時代。
ガラス張りの狭い金魚鉢に閉じ込められた人間は、体内の免疫細胞さながら、ヒステリックに異分子を駆逐しようとする。
だが光が強いほど闇は深くなる。
生まれ持った邪な本性は、眩しい光を避けて僅かな闇へ逃げ込んで行く。
人外の欲望は闇の温床で増殖を続け、大暗黒の反社会帝国を密かに建国せんとしているのかもしれない。
事実、ヨガ道場から始まったオウム真理教も、神秘主義に傾倒する若者の心を捉え、無差別殺人を目指す教団へと迷走した。
表向きは貧困者救済慈善団体の天神会は何を目指しているのか?
ショーツ一枚で後ろ手に手錠をかけられた月絵は、三階の大聖天堂の扉の前でぶるっと身震いした。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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月絵の脳裏にそんな三文字が過った。
記憶が無意識に呼び覚ました言葉だった。
江戸川乱歩の『孤島の鬼』を読んで覚えたのか、否、最近もどこかで耳にしたような気がする。
人の道に外れた者達の異境。
現代社会から食み出した魔窟には、小賢しい倫理や道徳などと無縁な、剥き出しの本性だけが律法として存在する。
光が届かない闇。
だが文明は闇を消していく。
ニューギニアの裸族が中国製の衣類でお洒落を楽しみ、モンゴルの遊牧民が携帯電話で家族に帰るコールする。
日本に至っては白夜の国である。
二十四時間、街は監視カメラに見張られ、些細な密事をもネットで騒ぎ立てられる。賄賂を、談合を、密談を、差別を、スキャンダルを・・戦前の隣組さながらに人々は闇を暴こうと手を拱いている。
一億総憲兵時代。
ガラス張りの狭い金魚鉢に閉じ込められた人間は、体内の免疫細胞さながら、ヒステリックに異分子を駆逐しようとする。
だが光が強いほど闇は深くなる。
生まれ持った邪な本性は、眩しい光を避けて僅かな闇へ逃げ込んで行く。
人外の欲望は闇の温床で増殖を続け、大暗黒の反社会帝国を密かに建国せんとしているのかもしれない。
事実、ヨガ道場から始まったオウム真理教も、神秘主義に傾倒する若者の心を捉え、無差別殺人を目指す教団へと迷走した。
表向きは貧困者救済慈善団体の天神会は何を目指しているのか?
ショーツ一枚で後ろ手に手錠をかけられた月絵は、三階の大聖天堂の扉の前でぶるっと身震いした。
つづく…
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