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童話『プリン』・・・第一章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。

日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。

第一章
五月のさわやかな風が、なだらかな丘を吹き渡って行く。
遠い山々はまだ残雪を抱いているが、若草色に輝き始めた牧場には、もうすっかり春の匂いがあふれていた。

北海道の日高地方。
広々とした草原で、馬たちが思い思いに青草を食んでいる。
いたずらな春風が馬のたてがみをくすぐる。

ぶるっと体をふるわせた馬は、雲ひとつない青い空を見上げ、また何もなかったように青草を噛み始める。
大きな体の母馬たちに、まだ生まれたばかりの子馬が寄り添っている。

やんちゃで甘えたがりの子馬たち。
ひょろひょろした小さな体で、母馬の気をひこうと飛んだり跳ねたりしている。

日高地方はサラブレッドの産地である。
サラブレッドは競馬で活躍する競走馬で、車なみの時速七十キロぐらいで走ることができる。
日本のサラブレッドの約八割が、日高地方の牧場で生まれ育てられている。

ここ、古谷牧場もそのひとつだった。
母馬が十頭しかいない小さな牧場だが、今日は町の小学校から、生徒たちが二十人ほど社会科見学に来ていた。

「うわぁ、本当の馬ってテレビで見るより大きいなあ」

「あそこにいる子馬、すごくかわいい!」

広い草原を区切る白い柵の前で、牧場の仕事を勉強しに来たのも忘れて、子供たちは大はしゃぎで馬を見ている。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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童話『プリン』・・・第二章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
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第二章
古谷洋士は、そんな子供たちの笑顔に目を細めた。
洋士は五十歳、古谷牧場の牧場長をつとめている。

「そろそろお話をしていただけますか?」

引率の先生が、春の陽射しに気のゆるんだ洋士を促した。

「わかりました」

洋士は子供たちを牧場の隅にある小さな広場に集めた。
そこには一本の木が植えられていた。

キタコブシ。
北海道に遅い春を告げる花で、葉が出る前に大きな白い花を咲かせる。

そのキタコブシは、青空に張り出した枝に、たくさん白い花をつけていた。
洋士はキタコブシの前に立って、子供たちを芝生の上に座らせた。

「みんな、馬を見るのは初めてかな?」

子供たちは興奮して手を挙げた。

「うん、ぼくは馬に乗ってみたい」

「私、子馬を家で飼いたい」

「え~、でも牧場の仕事は大変だって、さっきオバサンが言っていたよ」

今日体験した感想を話す子供たちに、洋士はにっこりと笑いかけた。

「あはは、オジサンはみんなと同じ年ぐらいの時から、この牧場で子馬の世話を始めたんだよ」

「ええっ、すごい!」

「まあ、お父さんのお手伝いみたいなものだったけどね」

洋士はキタコブシの花を見上げた。

「これからみんなに聞いてもらうのは、オジサンが初めて世話をしたプリンという馬の話です」

「プリン?」

子供たちがクスクスと笑った。

「そう、名前の通り、プリンはとてもかわいい子馬だったんだよ」

洋士は目をつむって、子供のころの記憶をたどった。
ふわっと早春の風が吹いた。
キタコブシの白い花が、生きているかのように青い空に揺れ動いた。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第三章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
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第三章

四十年前。
北海道の冬は長い。
もう三月になるのに、気温は氷点下まで下がり、夜になっても雪は降り続いた。
夕飯を食べた洋士は、暖かい部屋でテレビを見ていた。

「学校の宿題は終わらせなさい」

母の明子が、台所で食事の片づけをしながらどなった。

「は~い」

ランドセルから算数の教科書を出すと、洋士はつまらなそうな顔で机に座った。
その時、びゅっと冷たい風が入ってきた。

「明子、ちょっと来てくれ。ローラの子が産まれそうだ」

髪に雪を積もらせた父の哲夫が、真っ白い息を吐きながら母を呼んだ。
勉強したくなかった洋士は、母を追ってローラがいる厩舎へ向かった。

震えるような寒さだった。
古い木造の厩舎は、真ん中が通路になっていて、左右に区切られた部屋が並んでいる。

その一番奥にあるが、ローラが与えられた馬房だった。
洋士は小学校三年生。父が経営する古谷牧場の一人っ子だが、産まれたばかりの子馬を見るのは初めてだった。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第四章

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第四章

恐る恐る洋士は馬房を覗いてみた。
父と母、そしてローラが見守る中、敷きつめた藁の上に子馬が横たわっていた。

ローラが子馬の鼻先をペロリとなめた。
子馬は大きな黒い目でローラを見て、ぶるぶる震える脚で立ち上がろうとした。

だが細い脚でふんばっても、すぐによろけて転んでしまう。
それでも子馬は、何度も何度も立ち上がろうとする。

「父さん、助けてあげてよ」

見かねた洋士は、馬房に入って哲夫に頼んでみだ。

「洋士、それはできないんだよ」

「どうして?」

哲夫は優しい顔で子馬を見守りながら、洋士の頭を大きな手でつかんだ。

「大自然の中で、ひとりで立ち上がれない子馬は、死んでいくしかない弱い馬なんだ」

「で、でもここは牧場じゃないか」

「お前も大人になればわかるだろうが、サラブレッドの世界は、草原のシマウマより厳しいんだよ。私たちは応援してあげることしかできないんだ」

洋士は父の言葉がよくわからなかった。
だが目の前にいる子馬は、立ち上がれなければ母馬からも見放されてしまうのだ。

「がんばれ!」

洋士は泣きながら子馬に声援を送った。
その声に励まされたのか、子馬は必死に立ち上がると、二歩、三歩、転ぶことなくローラのところまで歩いた。

「よし!」

哲夫がうれしそうに洋士の肩を何度も叩いた。
洋士はローラに甘える子馬を見て、全身の力が抜けたように、その場で座り込んでしまった。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第五章

            『プリン』
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第五章

翌朝、降り続いていた雪は止んでいた。
早起きした洋士は、学校へ行く前に子馬の馬房へ向かった。

「古谷君、おはよう」

同級生の尾形清美が、ランドセルを背負って厩舎へ歩いてきた。
清美は村にある酒屋の子で、毎朝学校へ行くのに、近道をして古谷牧場を無断で横切って通るのだ。

「お、おはよう」

「いつも遅刻ギリギリなのに、今朝は珍しく早起きじゃない」

洋士は清美が苦手だった。
とにかくおしゃべりで口うるさいからだ。

「昨日子馬が産まれたから、見に行こうと思っていたんだ」

「子馬? 私も見に行っていい?」

洋士が返事もしないのに、清美は勝手にローラがいる厩舎までついて来た。
昨夜産まれた子馬は、元気にローラの横で立っていた。

「かわいい!」

清美の大きな声にびっくりして、子馬はローラの陰に隠れてこわごわとこちらを見た。
栗毛と呼ばれる明るい茶色の馬体で、額には白い毛で雲のような模様が入っている。

子馬は耳を立ててクルクル動かし、不思議そうに首をかしげて洋士を見つめた。
そこへ哲夫がやってきた。

「清美ちゃん、子馬を驚かしたらダメだよ」

「ごめんなさい。でもオジサン、この子馬は何て名前なの?」

「まだ決めていないよ」

「男の子? 女の子?」

「男の子だよ。洋士と二人で考えてごらん」

洋士と清美は顔を見合わせた。

「え、父さん、僕たちが決めていいの?」

「わあ、うれしい」
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第六章

            『プリン』
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第六章

二人はよろこんだが、犬や猫と違って、馬の名前をどうつけていいかわからなかった。

「そんなに悩まなくていいんだよ」

競走馬としての正式な名前は、この子馬を買った馬主がつける。
二人が決めるのは、この牧場にいる間の呼び名だった。
洋士はふと馬房に貼ってある紙を見た。

『父ファバード、母ローラ、父の父プリンスリールーラ』

哲夫にたずねると、それは子馬の血統だと教えてくれた。
子馬の父も祖父も、海外で活躍した強い馬だったらしい。

清美がぷっとふきだした。

「おじいさんがプリン何とかだって・・そうだ、プリンがいいわ、すごくかわいいもの」

「でも男の子だよ・・」

洋士は不満だった。
もっと強くて速そうな名前がいいと思った。
だが清美は一度言い出したら聞かない。

「いいの、プリンに決定。オジサン、今日からこの子馬はプリンって呼んで」

「ああ、わかったよ。さあ、そろそろ学校へ行かないと遅刻するぞ」

哲夫はにっこり笑って、洋士と清美を厩舎から送り出した。
それからと言うもの、洋士は毎日早起きしてプリンを見に行くようになった。

もちろん清美も学校へ通う途中、プリンの馬房に立ち寄って行く。
ローラの母乳を吸いながら、すくすく成長するプリンを二人は見守った。

世話をするのは哲夫だが、プリンは毎日顔を合わせる洋士と清美がわかるようだった。
二人が厩舎へ行くと、馬栓棒という馬房の入り口をふさぐ木の棒から、プリンは顔を出して鼻を寄せてくる。

「くすぐったいよ」

哲夫に馬を触ってはいけないと注意されていた。
いたずらして人をかむことがあるからだ。

洋士はおそるおそる頭をなでてみた。
毎日ブラシをかけているので、すべすべした毛の手触りがした。
プリンはかむどころか、目を細めてうれしそうに洋士を見つめた。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第七章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
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第七章

北海道に春がやってきた。
病気にかかることもなく、まだ細い体つきだが、プリンの背はどんどん伸びていった。

そしてローラと一緒に牧場へ出て、少しずつ草原を走り回るようになった。
小学校四年生になった洋士は、クラブ活動を終えると、ランドセルを背負ったまま牧場へ向かった。

「おいで、プリン」

ローラと牧場にいたプリンは、洋士の声を聞くと、尻尾を振りながら走り寄ってきた。
そして柵の上から首を伸ばし、いつものようにランドセルの匂いを嗅いだ。

西に傾きかけた夕日が、プリンの栗毛を金色に輝かせている。
そろそろ馬を厩舎へ戻す時間だった。哲夫は、ローラとプリンに引き綱をつけた。

「洋士は本当にプリンが好きなんだな」

「うん、他の子馬もかわいいけど、プリンは僕を兄さんだと思っているんだよ」

プリンの頭をなでる洋士を見て、哲夫はにっこりと笑った。
一人っ子の洋士は、昔から弟が欲しいと明子にねだっていた。

「そうか・・まだ早いかと思っていたが、プリンの世話を手伝ってみるか?」

「えっ、いいの?」

「プリンは大人しいし、洋士になついているから大丈夫だろう」

「やった」

洋士は小躍りして、哲夫が引くプリンの後をついて行った。
哲夫に言いつけられた仕事は、ローラとプリンが住む馬房の掃除だった。
学校から帰ると、プリンたちが放牧されているうちに、馬房の下に敷く寝藁を取り替えるのだ。

外から見ているだけではあまり感じないが、馬房の中に入るとふんや尿の匂いがする。
だが洋士は、プリンの世話ができる楽しさで、毎日きつい仕事を休まずに続けた。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第八章

            『プリン』
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第八章

街路樹のライラックが紫の花をつけると、梅雨がない北海道は、一年で最もさわやかな季節を迎える。
休日で学校がない洋士は、牧場の白い柵に腰かけてプリンを見ていた。

「大変よ、古谷君」

清美が息を切らして走ってきた。

「そんなにあわててどうしたの?」

「馬を買いに来た人がいるのよ」

見ると、厩舎の方から、哲夫が杖をついた老人を連れて歩いてくる。
子馬が産まれると、馬主とか調教師と呼ばれる人たちが牧場を訪れる。

いい子馬を買うためだった。
競馬に出られるのは二歳からだが、走りそうな子馬を探して今から予約しておくのだ。

「今年は何頭産まれた?」

「全部で七頭です」

「走りそうな馬はおるかな?」

「はい、お確かめ下さい」

いつもは厳しい哲夫が、老人の前で小さくなっている。
老人は金子恵太郎と言う馬主だった。

牧場で産まれたサラブレッドは、馬主に買い取られて競馬に出走する。
競馬で走るためには、資格を持った馬主の馬でなければならないからだ。

一方、牧場は馬を売って暮らしている。
馬が売れなければ生活できない。
一秒でも速く走る馬をつくり、馬主に買ってもらわなければ、古谷牧場はつぶれてしまうのだ。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第九章

            『プリン』
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第九章

馬を売らなければならないことは、洋士もよくわかっていた。
だがプリンは別だった。

弟を売ることなどできない。
初めて世話をしたプリンを手放したくなかった。
プリンが洋士を見つけて駆け寄ってきた。

(こっちへ来たらダメだ!)

そう心の中で大声を出すと、洋士はプリンを追い払おうとした。
しかしプリンは、いつものように柵から首をのぞかせ、洋士の腕に顔をすり寄せてきた。
金子があごのひげをなでながら、ちらっとプリンに目をやった。

「ほう、なかなかバランスがいい馬じゃな」

「ファバードの子供です」

哲夫が引き綱をつけようとすると、プリンは嫌がって洋士の背中に隠れた。

「坊や、この馬は何という名前なのかな?」

「・・プリンです」

「なるほど、快速馬だった祖父プリンスリールーラに似ているな」

金子は満足そうに頷くと、プリンの体をまじまじと見回した。
洋士と清美は、プリンの前に立って、なるべく老人の目から隠そうとした。

「プ、プリンは他の子馬にくらべて足が遅いんです。そ、それに・・」

言葉が詰まった洋士を継いで、清美も必死にプリンの悪口を言った。

「それに甘えん坊で、走ろうとする気持ちがないんです」

馬主の金子はかっかっと笑った。

「坊やたちはプリンが大好きなんじゃな。離れたくないから、そんなに悪く言っているんじゃろう?」

洋士と清美は黙ってうつむいた。

「じゃがな、馬はペットじゃないぞ。走るために産まれてきた生き物じゃ。競馬で走ってこそ、サラブレッドは幸せなんじゃ」

子馬をずっと牧場に置いておくわけにはいかない。
馬主が買いに来なくても、子馬たちはセリに出される。
そこでも買い手がつかない馬は、結局役立たずと言われて牧場から追い出されるのだ。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第十章

            『プリン』
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第十章

金子は洋士の頭をなでた。

「大丈夫じゃ。ワシがプリンを立派な競走馬にしてやる。その代わり、大人になるまでしっかりとプリンを育てるんじゃぞ」

洋士はプリンの無邪気な目を見つめた。
大きな競馬場。
大人になったプリンが、鮮やかな緑の芝生を疾走する。

速い。速い。
あっと言う間に、プリンは他の馬を抜き去ってゴールに飛び込む。
何万人もいる大観衆が、声をからせてプリンを応援する。
プリンの幸せを思えば、洋士たちのわがままを通すことはできない。

「・・はい」

洋士と清美は、涙がわき上がるのをけんめいにこらえた。
二人にできるのは、別れの日が来るまで、プリンを一所懸命かわいがってやることだけだった。

そして短い夏がやってきた。
空にはぽっかりと白い雲が浮かび、丘には青々と伸びた牧草が風にそよぐ。
夏の熱い陽射しの中、放牧された馬を避けて、赤いトラクターが牧草を刈っている。

夏は牧草刈りでいそがしい。
牧草が伸びる夏に、馬が一年間食べる干し草をためるのだ。
古谷牧場では家族総出で仕事をするが、大きな牧場になると、アルバイトをやとって牧草を刈り集める。

洋士も今年から牧草刈りを手伝っていた。
ローラの母乳ですくすく育ったプリンも、人間の赤ちゃんと同じで、離乳する時期が近づいてくる。

離乳すると、子馬には飼い葉と呼ばれるエサが与えられる。
飼い葉は青草や干草のほかに、麦や豆、ニンジンやリンゴなどを混ぜてつくられる。
これを朝と夕方の二回、馬に与えるのだ。
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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご挨拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。               
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