童話『プリン』・・・第四章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第四章
恐る恐る洋士は馬房を覗いてみた。
父と母、そしてローラが見守る中、敷きつめた藁の上に子馬が横たわっていた。
ローラが子馬の鼻先をペロリとなめた。
子馬は大きな黒い目でローラを見て、ぶるぶる震える脚で立ち上がろうとした。
だが細い脚でふんばっても、すぐによろけて転んでしまう。
それでも子馬は、何度も何度も立ち上がろうとする。
「父さん、助けてあげてよ」
見かねた洋士は、馬房に入って哲夫に頼んでみだ。
「洋士、それはできないんだよ」
「どうして?」
哲夫は優しい顔で子馬を見守りながら、洋士の頭を大きな手でつかんだ。
「大自然の中で、ひとりで立ち上がれない子馬は、死んでいくしかない弱い馬なんだ」
「で、でもここは牧場じゃないか」
「お前も大人になればわかるだろうが、サラブレッドの世界は、草原のシマウマより厳しいんだよ。私たちは応援してあげることしかできないんだ」
洋士は父の言葉がよくわからなかった。
だが目の前にいる子馬は、立ち上がれなければ母馬からも見放されてしまうのだ。
「がんばれ!」
洋士は泣きながら子馬に声援を送った。
その声に励まされたのか、子馬は必死に立ち上がると、二歩、三歩、転ぶことなくローラのところまで歩いた。
「よし!」
哲夫がうれしそうに洋士の肩を何度も叩いた。
洋士はローラに甘える子馬を見て、全身の力が抜けたように、その場で座り込んでしまった。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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