童話『プリン』・・・第五章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第五章
翌朝、降り続いていた雪は止んでいた。
早起きした洋士は、学校へ行く前に子馬の馬房へ向かった。
「古谷君、おはよう」
同級生の尾形清美が、ランドセルを背負って厩舎へ歩いてきた。
清美は村にある酒屋の子で、毎朝学校へ行くのに、近道をして古谷牧場を無断で横切って通るのだ。
「お、おはよう」
「いつも遅刻ギリギリなのに、今朝は珍しく早起きじゃない」
洋士は清美が苦手だった。
とにかくおしゃべりで口うるさいからだ。
「昨日子馬が産まれたから、見に行こうと思っていたんだ」
「子馬? 私も見に行っていい?」
洋士が返事もしないのに、清美は勝手にローラがいる厩舎までついて来た。
昨夜産まれた子馬は、元気にローラの横で立っていた。
「かわいい!」
清美の大きな声にびっくりして、子馬はローラの陰に隠れてこわごわとこちらを見た。
栗毛と呼ばれる明るい茶色の馬体で、額には白い毛で雲のような模様が入っている。
子馬は耳を立ててクルクル動かし、不思議そうに首をかしげて洋士を見つめた。
そこへ哲夫がやってきた。
「清美ちゃん、子馬を驚かしたらダメだよ」
「ごめんなさい。でもオジサン、この子馬は何て名前なの?」
「まだ決めていないよ」
「男の子? 女の子?」
「男の子だよ。洋士と二人で考えてごらん」
洋士と清美は顔を見合わせた。
「え、父さん、僕たちが決めていいの?」
「わあ、うれしい」
つづく・・・
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