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『禁断の遺伝子』第一章・・・・(紅殻格子)

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                 『禁断の遺伝子』・・・・紅殻格子

一.

神戸市内のラブホテル。
窓が塞がれた狭い密室には、不釣合いなダブルベッドが、
我が物顔にフロアの大半を占領していた。

枕元に堂々と置かれたティッシュと避妊具が、
早く慣れない紳士淑女面をやめて、淫欲を剥き出しにしろと嘲笑っている。
庭瀬周一は、煙草を燻らせながら心の中で呟いた。

(人間は好色な生き物だ)

ラブホテルの歴史を辿ると、江戸時代の出合茶屋に遡ると言われる。

秩序礼節を重んじる儒教の時代にも拘らず、道ならぬ欲望を満たすため、
人々はせっせと出合茶屋に足を運んだ。

そこには結婚を待てない若者の暴発や、ご法度の不義密通もあっただろう。

だがそれこそが人間の本性だと周一は思う。

シャワーを浴びた清宮玲子が、素っ裸のままベッドへ滑り込んできた。

「ねえ、もう一回して」

「おいおい、何時間延長すれば気が済むんだよ」

「うふん・・気持ちいいんだからしょうがないでしょう」

玲子は甘えた鼻声を出し、萎えた肉茎をいきなり根元までくわえ込んだ。

「んん・・んぐぅ・・」

花奥を満たして欲しい一心で、玲子は貪るように肉茎を頬張り続ける。

うっとりと瞳を閉じた美しい横顔に、グロテスクな肉茎が半ばねじ込まれている。

その好色極まりない構図に、周一は再び体に淫欲がみなぎるのを覚えた。

二人の人目を忍ぶ逢瀬は二年目を迎える。

周一は四十四歳、外資系食品会社の総務部で課長職を務めている。

そして玲子は二十九歳、同じ会社の貿易部に専門職として勤務していた。

玲子は、スタイルが良い現代的な美人で、
アメリカ留学の経験を持つ独身の才媛である。

一方中間管理職の周一は、背の高い痩身で、
中学生の息子がいる立派な妻子持ちだった。
つまり周一と玲子は社内不倫の関係にあった。

二人の関係は、よくあるケースだが、会社の飲み会で意気投合し、
酔いに任せてホテルへ行ったことに始まる。

妻子持ちの周一より、むしろ玲子の方が積極的だった。
以来二人は、こうして週に一夜、アフターファイブの密事を紡いでいる。

続く・・・
              

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『禁断の遺伝子』第二章・・・・紅殻格子

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                 『禁断の遺伝子』・・・・紅殻格子

二・

玲子にも正式な恋人が東京にいる。いわゆる遠距離恋愛である。
彼とは将来結婚を誓い合う仲で、言わば周一は、
平日の一人寝を紛らわせる遊び相手だった。

「課長が好き・・愛しているの・・」

だが密事を重ねるうちに、淫らな玲子の体は周一に馴染んでいく。
貞淑な心も好色な体には勝てない。

いつしか玲子は、恋人と会いに東京へ行くのも忘れ、
火遊びだった周一との逢瀬に溺れて行った。

昂ぶった周一は、玲子を仰向けに押し倒した。
ダークブラウンの髪が白いシーツに広がった。

肋骨が浮き出すほどスリムな肢体に、
水母のような巨乳がふるふると震えている。

その乳房を両掌で揉み上げると、三十路前の熟れた肢体が、
ベッドの上で再び妖しくうねり始めた。

「あ、あん・・」

乳暈が粟立ち、痛々しいほど乳首がピンと立っている。
玲子は男の淫欲を誘うように、
綺麗に整えられた翳りを揺らして両脚を開いていった。
周一は玲子の秘花に顔を埋めた。

シャワーで清めたはずの花芯は、甘く淫靡な芳香を放散し、
花襞の縁に再び淫蜜を滲ませている。

あれほど感じていたのに、まだ物足りないみたいだなあ。

「ああん・・女は貪欲なのよ・・」

「毎日が発情期か・・昼間仕事をしながらも、パンツを濡らしているんだろう?」

「んもう、ばかぁ・・」

艶っぽく口唇を尖らせて、玲子は秘花を周一の顔に押しつけてきた。
一度その火照った肌に触れれば、玲子は狂ったように淫らな本性を露にした。

淫乱と蔑まれるかもしれないが、周一はそんな玲子を愛おしく思っていた。
性の悦びを覆い隠してしまうより、
大らかに表現する方がよほど人間的だと思うからだ。

宗教は有史以来、女の淫欲を罪悪とみなして禁じてきた。
だが裏を返せば、それは神が人間を淫らに造ったからに他ならない。
折角神が与えてくれた悦びを楽しまないのは、
天に向かって唾するのと等しい行為である。

むろん周一も女好きだ。
いろいろな性を試してみたい欲望がある。
SM、露出、スワッピング――性の辺縁は広い。

その欲望を叶えてくれる最高のパートナーが玲子だった。
周一はねっとりと光沢を帯びた秘花へ舌先を這わせた。

「あっ、いい・・気持ちいいよぉ・・」

もどかしそうに腰をくねらせるたび、
赤茶けた花襞から桃色の花芯が見え隠れする。

(妻もこのぐらい淫らだったら・・)

周一は小振りな尻を持ち上げ、
妖しく息づく玲子の花芯を犬のように舐め上げた。

続く・・・
 

 

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「禁断の遺伝子」第三章・・・(紅殻格子)

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三・

妻とはセックスレスだった。
妻は三十八歳、今がまさに女盛りのはずである。
ところがここ数年、夫婦の性交渉は途絶えていた。

それどころか新婚の頃から夫婦が肌を合わせた頻度は、
一年にわずか二三回程度しかなかった。

原因は妻が性を拒んでいるからだった。
周一がどれだけ尽くしても、妻は性の悦びを声に出さなかった。

不感症ならば諦めもつく。
だが間違いなく妻の体は、周一の愛撫に小さく痙攣して応えていた。

「いけない・・こんなのダメ・・」

ところが妻は、やっと疼き出した悦楽の芽を、強靭な理性で次々に摘み取った。
まるで性に溺れることが罪悪であるかのように、
妻は必死に歯を食いしばり、体に湧き上がる悦びを押し殺してしまうのだった。

新妻の恥じらいならばそれも初々しい。
だが尼僧を抱くような夫婦生活に、周一の淫欲も自然と萎えて行かざるを得ない。

男にとって女の喘ぎ声はご褒美なのだ。
それがなければ男の淫欲は衰え、妻を誘う気力すら失ってしまう。

はっと周一は我に返った。

「ねえ、もう欲しい・・お願い・・早く入れて・・」

すでに玲子の花芽は、淡いピンク色の突起を剥き出しにしていた。
そして充血した花襞からは淫蜜が滴り、シーツにはしたない染みをつくっていた。

周一は玲子の両脚をM字に開くと、整った翳りの下に肉茎を宛がった。

「はう・・突いて・・」

肉茎を押し出すや、花奥はヌルリとそれを呑み込んだ。

「ああっ、入って来る・・あうっ・・」

玲子はぐっと上半身を仰け反らせ、両手でシーツを鷲づかみにした。

「こんな老体に二回もさせるとは、本当にスケベな女だな」

「ううん、言わないで・・だって、ああっ・・体が勝手に感じちゃうの・・」

焦らすように周一はゆっくりと肉茎を出し入れする。

「ふん、オマンコに入れてもらえれば、別に俺じゃなくても感じるんだろう?」

「ううっ、そんなことないわ・・あなただけよ・・ああ、お願い、もっと動かして・・」

「彼氏に入れられても感じないのか?」

「あうぅ・・そうよ・・課長のチンポが一番いいの!」

周一は動きを少し大きくした。
玲子の淫肉が肉茎にねっとりと絡みつき、クチュクチュと卑猥な音を響かせる。

「本当かな・・よし、次に逢うときはカップル喫茶へ行って試してみよう」

「ああん・・カ、カップル喫茶?」

同伴喫茶から発展したカップル喫茶は、男と女の性をお互いに見せ合う場である。

覗き合える個室タイプの店と、オープンスペースで相互観賞できる店がある。
最近は過激なカップルが増え、見せ合うどころか、
スワッピングの相手を探す発展場になっている。

「そうだ。俺が見ている前で他の男に貸し出してやる。
 その男に犯されて感じなければお前を信じよう」

「い、嫌・・そんなの変態じゃない・・」

「ふ~ん、行きたくないの?」

周一は熱い花奥から、ゆっくりと肉茎を抜く素振りをした。

「だめ、抜いちゃ嫌・・ああん、カップル喫茶に行くから・・もっと激しく突いて・・」

玲子は周一を仰向けに押し倒すと、股間の上に跨って自分から腰を振った。

「いいっ、気持ちいい・・ああ、私、犯されるのね・・
 あなたの見ている前で、見ず知らずの男達に犯されるのね・・」

「お前は誰にでも体を開くメス奴隷になるんだ。
 たくさんの男に犯されて、精液をオマンコに注ぎ込まれるんだぞ」

玲子の腰の動きに併せて、周一は下から強く突き上げた。

「あっ、あっ・・メス奴隷になりたい・・たくさんの男に犯されたい・・
ああっ、もうだめ・・いく・・いっちゃう!」

玲子は周一の上で天を仰ぐと、カクカクと体を小刻みに痙攣させ、
崩れ落ちるように胸板にしなだれかかってきた。

周一は熱い花奥めがけて、二度目となる精液を激しく撃ち上げた。

焦点が合わないトロンとした瞳で、玲子は乾き切った口唇を重ねてきた。

(可愛い女だ)

周一はそう心中で呟くと、汗ばんだ玲子の体を強く抱いた。
カップル喫茶で何人もの男に抱かれる玲子を想像して、
周一はまだ衰えない己の肉茎をゆっくりと引き抜いた。

続く・・・ 

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「禁断の遺伝子」第四章・・・(紅殻格子)

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四・

しとしとと雨が降り続いている。
川沿いに続く道を遡ると、田植えを終えた広々とした田園風景が、
いつしか深い山里の風景へと移り変わっていく。

県道を外れて対向車もない林道に入ると、川幅は渓流ほどに狭まり、
昼なお暗い鬱蒼とした森林がしばらく続く。

濃緑の迷路に飽き始めた頃、忽然と目の前が開けて小さな谷地に集落が現れた。
兵庫県北部の山里、檜原集落。

周一は、車のワイパーを間歇から連続へと切り替えた。
梅雨空からは、頻りに細かい雨が降り続き、折り重なる山々が白く濁っている。

(まるで横溝正史が書いた小説の世界だ)

深山に囲まれた鍋底状の土地に、点在する三十戸ほどの家々が、
澱のようにどんよりと沈んで見えた。

猫の額ほどの平地に水田が開かれ、切妻造りの古めかしい山家が、
そぼ降る雨で暗い灰色に霞んでいる。

その集落の正面奥には小高い丘があり、
白壁に囲まれた一際大きな屋敷が建っていた。

古谷野家。

周囲の家々を睥睨するように建つ屋敷は、黒光りする瓦を載せ、
まるで城砦のような厳しさを具えていた。

敷地内には、本邸とは別に蔵が三つ建てられ、
その権勢を周囲にひけらかしているようにも見えた。

周一の運転する車が、古びたガラス戸を閉ざした万屋へさしかかった時、
助手席に座っていた妻の月絵が声をかけた。

「ちょっと停めて。町で買い忘れたものがあるから」

周一は万屋から少し離れたバス停に車を停めた。
ここが山奥の終着駅だった。

錆びついた鉄板には、朝二便、夕二便しかないバスの時刻が書かれていた。
月絵は車のドアを開けると、白いワンピースの裾をはためかせて店へ入って行った。

「これは、お嬢様」

店の老婆らしい声が、雨音に掻き消されながらも聞こえてきた。
周一は胸のポケットから煙草を取り出すと、僅かに車の窓を開けて火をつけた。

続く・・・

 

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「禁断の遺伝子」第五章・・・(紅殻格子)

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五・

月絵は古谷野家の一人娘である。
古から庄屋として集落に君臨してきた古谷野家は、
今なおこの山奥で隠然たる力を保っているようだった。

いかに世の中が変わろうと、隔絶されたこの集落では、
江戸時代の主従関係が生き続けているらしい。

店から出てきた月絵は、荷物を後部座席に置いて助手席に乗り込んだ。

「さあ、行きましょう」

肩まである黒髪を薙いで雨粒を払うと、月絵は凛とした声でそう周一に命じた。
着物が似合いそうな細面に切れ長の瞳、
すっと通った鼻梁と控え目な口許――
若い頃地味に見えた和風の顔立ちは、三十八歳を迎えた今になって、
しっとりと落ち着いた女の美しさを醸し始めている。

周一は月絵の横顔をしばし見惚れた。

(まるで別人のようだ・・)

普段生活する神戸のマンションで、家事に追われる専業主婦の顔ではなかった。
ここ檜原へ戻った途端、見飽きたはずの古女房の顔に、
お姫様らしい気品と気高さが具わって見えた。

だが周一と月絵は危機を迎えている。
結婚十五年。部活があるので周一の親元に預けてきたが、
一人息子の公一はもう中学二年になる。

だが一度冷めてしまった感情は二度と蘇ることなく、
二人は公一のために仮面夫婦を演じ続けてきた。

それも周一に玲子と言う愛人ができ、深夜の帰宅が増えるに連れて、
修復不可能な亀裂は深まりつつあった。

月絵はややヒステリックに声を荒げた。

「あなた、早く車を出して」

「あ、ああ」

ぼんやりとしていた周一は、月絵に注意されてアクセルを慌てて踏んだ。
急発進した車は水溜りを跳ね上げ、
狭い農道の奥に佇む古谷野家へと向かった。

続く・・・ 

 

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「禁断の遺伝子」第六章・・・(紅殻格子)

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六・

車を築地塀の外に停めて周一と月絵は冠気門を潜った。
広い中庭の正面には、漆喰壁で飾られた二階建ての母屋があり、
左手には三棟の蔵、右手には柿の古木が青々とした枝葉を広げている。

月絵は母屋の戸の口を開けて人気のない屋敷に入った。
暗く黴臭い土間に黒光りする大黒柱がそびえている。
土間からうっすらと埃が積もった座敷に上がり、
江戸城の大奥さながら、幾重にも襖で仕切られた部屋を抜けて奥の仏間へ進んだ。

仏壇を前に二人は手を合わせた。
供えられた位牌と写真はまだ新しい。
線香の煙が棚引く仏間で、周一は月絵の背中を静かに見守った。

月絵の父、古谷野孝蔵が、心筋梗塞で亡くなったのは先週のことである。
享年七十三歳。庭にある柿の木の下で倒れているところを、
翌日お手伝いの老婆に発見された。一人暮らしの孤独な死だった。

月絵の母、静子はすでに八年前、五十二歳の若さで他界していた。
静子は孝蔵の後妻で、年が十三も離れていた。
月絵は静子との間の子で、病弱だった先妻との間に子はなかった。

周一と月絵は、先週の葬儀に引き続き、
遺品を整理するためにこの家を泊りがけで訪れたのだ。

周一は黒光りする太い柱を叩いた。

「これだけの古民家は貴重だよ」

大正初期に建てられたと言う古谷野家は、優に築九十年以上が経っている。

「そうかしら? 田舎へ行けばこんな家いくらでもあるわ」

月絵はにべも無く言った。孝蔵の死後、
無人となったこの家をどうするか、夫婦の意見は食い違っていた。

「お前が生まれ育った家だろう。
 このまま残して別荘代わりに使ってもいいじゃないか」

「いいえ、残しても仕方ないでしょう。家も家財もきれいさっぱり処分します」

周一は首を傾げた。
本来なら月絵の方が家に執着するところだ。
だが月絵には全く未練がなかった。
それどころか、早くこの家から解放されたいような口ぶりだった。

(いくら親子仲が悪いと言っても・・)

続く・・・

 

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「禁断の遺伝子」第七章・・・(紅殻格子)

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七・

仏壇に額ずくのもほどほどに、
納戸の片づけを始める月絵を周一は目で追った。

そもそもの出会いは、周一が担当する食品卸で、
月絵が事務員をしていた頃に遡る。

当時月絵は、旧家のお嬢様という雰囲気ではなく、
神戸の安アパートで一人暮らしをしていた。

神戸での一人暮らしは短大時代からで、
仕送りはしてもらっていたが、半ば家出同然の状態だったらしい。

結婚式も月絵は両親を呼びたくないと言い張った。
周一が何とか説得して、やっとのことで孝蔵と静子に出席してもらったのだ。
結婚後も関係は改善しなかった。

孫の公一が生まれた時は、さすがに周一が怒って古谷野家へ連れて行った。
だがその後も月絵は、静子が亡くなった時にしか実家へ戻っていない。

理由ははっきり言わないが、周一が見るところでは、
月絵の方が両親を遠ざけているように思えた。

夕方、周一が納戸の整理をしていると土間で声がした。

「ごめんください」

年の頃六十ぐらいだろうか、中肉中背で白髪の老人が、
傘を差して戸の口に立っていた。

バス停から歩いて来たらしく、ジャケットとズボンが雨で濡れている。

「私、孝蔵様にお世話になった者で、鴻巣元治と申します。
一昨日訃報に接しまして、遅蒔きながら、
ご仏前に手を合わせたくお伺いした次第です」

言葉遣いは丁寧だが、
茶色の偏光眼鏡と口髭にどこか怪しい感じが漂っている。

「それは有難うございます」

周一は訝しいと思いながらも鴻巣を仏間へ案内した。
鴻巣は孝蔵の位牌と遺影に長い時間頭を垂れていた。

襖を開けて二階から下りてきた月絵が仏間へ入ってきた。
周一は隣に座った月絵に鴻巣のことを耳打ちした。

「月絵お嬢様とご主人様ですね」

「は、はあ・・そうですが」

鴻巣は畳に額づき、改めて二人に悔み言を述べた。

「私がK町に住んでおりました頃、
町会議員をされていた孝蔵様に面倒を見て頂きまして・・」

檜原集落は、山麓のK町に行政上属しており、
孝蔵は長年その町会議員を務めていた。

どうやら月絵も面識がないらしく、ただ鴻巣の話に頷いているばかりだった。

「実は私、訃報に接してご恩を思い出し、
取る物も取り敢えず大阪から駆けつけて参りました。
お恥ずかしい話ですが、先ほどバスの時刻表を見ましたら、
もうこの時間、最終のバスが出てしまった後でして・・」

鴻巣は申し訳ないように頭を掻いて、今夜一晩泊めてもらいたいと願い出た。

「私共もここには住んでおりませんから、大したお構いはできませんけど・・」

檜原集落に宿屋はなく、老人を雨中に追い返すこともできないので、
月絵は途惑いながらも鴻巣に一夜の宿を貸すことを許した。

鴻巣は周一と月絵に平身低頭した。
だが周一は、茶色の偏光眼鏡の奥で、鴻巣の目が鈍く光るのを見逃さなかった。

春雷が縁側の障子に青光り映した。
しばらくして雷音がドロドロと深山を木霊した。

続く・・・

   

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「禁断の遺伝子」第八章・・・紅殻格子

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八.

買い込んできた食糧で早い夕食を済ませると、
周一は蔵の整理をするために庭へ出た。

まだ雨は降り続いているが、辺りはすっかり闇に包まれていた。
明るい神戸の夜に慣れた周一は、闇に妖怪の姿を想像した古人の恐れが、
どことなくわかるような気がした。

(あの老人も・・)

ふと周一は鴻巣と名乗る老人を妖怪に重ねてみた。
帰りのバスがないのを知らなかったと言うわりには、
町で買った夕食用のコンビニ弁当をしっかり持参していた。

月絵はすっかり気を許しているが、
周一は最初から鴻巣がこの家に泊まるつもりだと怪しんでいた。

周一は蔵の戸を開けた。
黴臭さむっと鼻腔を突く。周一は澱んだ空気を掻き分け、
天井からぶら下がった裸電球を灯した。

埃が積もった床板には、雑然と古い家具や荷物が散在している。

「おや?」

十坪以上ありそうな大型の蔵だが、耐火造りで窓がないのを利用して、
片隅に写真を現像する機材が設えてあった。
あまり話したことがない義父だが、
本格的な写真が趣味だとは聞いたことがなかった。

周一は近くに置かれた机の引き出しを開けてみた。

「こ、これは・・」

引き出しの中には分厚い封筒があり、その中から百枚以上の写真が出てきた。
男と女の絡み写真だった。

周一は生唾を呑んで写真を捲った。
四十路に近い人妻らしき女が、若く筋骨逞しい男に弄ばれている。

むっちりとした乳房を背後から揉みしだかれている写真。
大きく両脚を開かされて舐め上げられている写真。
男の黒々とした巨茎をくわえさせられている写真。
両手で尻を鷲づかみにされて後ろから犯されている写真。

幾夜にもわたって撮影されたのか、
艶かしい熟女の体は同じ男の精液で何度も穢されていた。

続 く・・・

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「禁断の遺伝子」第九章・・・(紅殻格子)

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九・

女の好色ぶりも並ではなかった。
悦びに口を大きく開いて喘ぎ、淫らな肢体を執拗に男へ絡ませている。
男に組み敷かれた女の表情は、艶かしいばかりの美しさを放散していた。

「いい女だなあ・・おや?」

周一は女の顔に見入った。どこか月絵に似ている。
そう言えば、仏間に飾られている遺影の静子に面影がある。
写真を撮った和室も、先ほど夕食をとった母屋にそっくりだった。

そしてこの現像機材。どうやらこれらの写真は、
孝蔵と静子の秘蔵プライベート写真に違いなかった。

周一は唸った。
現代のようにデジカメが普及してから、
妻との閨房を撮影する好事家が増えたらしい。

しかしデジカメもない時代、
現像機材を自宅に構えてまで写真を撮るからには、
かなり好色な夫婦だったと想像せざるを得ない。
夫婦の熱情に感心しながらも、周一は写真の男を見てふと違和感を覚えた。

「しかし・・えっ、まさか・・」

男は明らかに孝蔵ではなかった。孝蔵と静子は十三年が離れている。
静子の熟肉が三十代後半だとすれば、孝蔵は五十歳近い年齢になる。
だが写真の男は、どう見ても静子と同い年ぐらいに見えた。

しかもカメラは固定撮影ではなく、
静子と男が交わっているのを明らかに第三者が写している。

「3P・・か?」

周一が唖然として写真を眺めていると、不意に蔵の入り口が開いた。
鴻巣だった。

「それは私だ」

続く・・・

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「禁断の遺伝子」第十章・・・(紅殻格子)

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十・

鴻巣はつかつかと蔵に入ってくると、周一が持っていた写真を取り上げた。

「あなた方にこの写真は必要ない」

「こ、鴻巣さん、あなたは一体古谷野家とどういう関係があるんですか?」

「世の中には知らない方がいいこともある。
 幸いお嬢様も私に気づいていないようだし・・」

先ほどまでの低姿勢だった鴻巣とは打って変わり、
ぞんざいな態度で蔵を出て行こうとした。

「ちょっと待って下さい。あなたなら知っているんじゃないですか。
妻の月絵は亡くなった今も実父を憎んでいる。
実母もです。頑ななまでに月絵が両親を拒む理由を知りたいんです」

鴻巣は立ち止まった。

「・・お嬢様はまだ孝蔵様と静子奥様を許していないのか?」

「ええ。孫の顔もほとんど見せないほど」

「そこまで恨んでいたのか・・」

鴻巣は近くにあったダンボール箱に腰を下ろすと、
ぽつりぽつりと記憶を辿るように昔話を始めた。

二十三年も前の話だった。

「私はK町で小学校の教員をしていた・・」

当時檜原集落には近隣K町の分校があった。
三十代後半だった鴻巣は、三年間檜原分校へ異動の辞令を受けた。

檜原集落では、遠路分校に通う先生に感謝して、
月に二三度、有力者の孝蔵が教員を夕食に招くのが常になっていた。

ある春の夜、鴻巣はいつものように古谷野家で晩餐をふるまわれていた。
ちょうど夏休み前で、鴻巣も心の緩みからいつもより深酒した。

「鴻巣君、今夜は泊まって行きたまえ」

「しかしご迷惑でしょうから・・」

「でもそんなに酔っていたら、車は運転できませんよ」

着物姿の静子が食膳を片づけながら、細面の整った顔立ちで微笑した。
その静子の言葉に後押しされて、泥酔した鴻巣はK町の妻に外泊の電話をした。

深夜、鴻巣はなかなか寝つかれなかった。
安普請の自宅とは違い、どっしりした旧家の重みが神経を昂ぶらせていた。

「・・だめ・・聞こえちゃう・・」

鋭敏になった耳を澄ますと、襖の向こうから静子の声が微かに聞こえてきた。

「あん・・いや、あなた、感じる・・」

襖一枚隔てた先は孝蔵夫婦の寝室だった。
艶かしい静子の声が徐々に羞恥を失っていく。

その淫らな喘ぎ声は、聖職者とは言いながらも、
生身の男である鴻巣の下半身を直撃した。

鴻巣は気づかれないように襖をそっと開いた。

(えっ!)

煌々と明かりが灯る広い和室の布団の上で、
静子は胡坐座りの孝蔵に背後から抱きかかえられていた。

「ああっ、もう・・もうだめ・・」

乳房を揉まれ、両脚をM字に開かされている。
その丸見えになった花芯が、まるで鴻巣の好色心を見透かすかのように、
細く開いた襖の方へ向けられているのだった。

露になった花芽をグリグリと指で捏ねくりながら、
孝蔵が襖の合わせから覗いている鴻巣に声をかけた。

「鴻巣君、見ているだけじゃ体に悪いぞ。
 こっちへ来て静子を一緒に犯してくれないか」

鴻巣はまるで夢遊病者のように、言われるままに襖を開けて隣室に導かれた。

続く・・・

theme : 官能小説
genre : アダルト

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紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

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児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

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