『禁断の遺伝子』第一章・・・・(紅殻格子)
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『禁断の遺伝子』・・・・紅殻格子
一.
神戸市内のラブホテル。
窓が塞がれた狭い密室には、不釣合いなダブルベッドが、
我が物顔にフロアの大半を占領していた。
枕元に堂々と置かれたティッシュと避妊具が、
早く慣れない紳士淑女面をやめて、淫欲を剥き出しにしろと嘲笑っている。
庭瀬周一は、煙草を燻らせながら心の中で呟いた。
(人間は好色な生き物だ)
ラブホテルの歴史を辿ると、江戸時代の出合茶屋に遡ると言われる。
秩序礼節を重んじる儒教の時代にも拘らず、道ならぬ欲望を満たすため、
人々はせっせと出合茶屋に足を運んだ。
そこには結婚を待てない若者の暴発や、ご法度の不義密通もあっただろう。
だがそれこそが人間の本性だと周一は思う。
シャワーを浴びた清宮玲子が、素っ裸のままベッドへ滑り込んできた。
「ねえ、もう一回して」
「おいおい、何時間延長すれば気が済むんだよ」
「うふん・・気持ちいいんだからしょうがないでしょう」
玲子は甘えた鼻声を出し、萎えた肉茎をいきなり根元までくわえ込んだ。
「んん・・んぐぅ・・」
花奥を満たして欲しい一心で、玲子は貪るように肉茎を頬張り続ける。
うっとりと瞳を閉じた美しい横顔に、グロテスクな肉茎が半ばねじ込まれている。
その好色極まりない構図に、周一は再び体に淫欲がみなぎるのを覚えた。
二人の人目を忍ぶ逢瀬は二年目を迎える。
周一は四十四歳、外資系食品会社の総務部で課長職を務めている。
そして玲子は二十九歳、同じ会社の貿易部に専門職として勤務していた。
玲子は、スタイルが良い現代的な美人で、
アメリカ留学の経験を持つ独身の才媛である。
一方中間管理職の周一は、背の高い痩身で、
中学生の息子がいる立派な妻子持ちだった。
つまり周一と玲子は社内不倫の関係にあった。
二人の関係は、よくあるケースだが、会社の飲み会で意気投合し、
酔いに任せてホテルへ行ったことに始まる。
妻子持ちの周一より、むしろ玲子の方が積極的だった。
以来二人は、こうして週に一夜、アフターファイブの密事を紡いでいる。
続く・・・