『人外境の花嫁』 一.異界の漂泊民(一)
官能小説家、降矢木士朗は語った。
『人類原始の性的乱交は共産主義の出発点なんだよ』
異界の民、乱姦、性宴の邪教、そして驚愕の最終章・・・
満を持して紅殻格子が放つ異色官能小説。
緩み切った官能小説界を戦慄させる本格官能作品です。
最後までお楽しみ下さい。
『人外境の花嫁』
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一.異界の漂泊民(一)
昭和二十九年。
九州、球磨地方。
空が熟柿色に染まっている。
四方に連なる稜線は漆黒の影となり、山腹の斜面にへばりついた家々が、夜の闇にじわじわと呑み込まれていく。
神楽笛の音が、夕暮れの山峡にもの哀しく木霊する。
山深い僻村の秋祭り。
射的、綿菓子、金魚すくい。
小高い山を背にした神社の境内には、十軒ほどの露店が並んでいた。
客の姿は疎らだった。
ヨーヨー釣りの番をする足立寛三は、夕焼け空を見ながら煙草に火をつけた。
「けっ、しけた山奥の秋祭りじゃ、稼ぎもたかが知れているな」
「本当っすね、兄貴。さっき神主を捕まえて聞いたら、この集落には子供が十人しかいないらしいですよ」
カルメ焼きを売る弟分の川嶋剛志も、退屈そうに大きな欠伸をした。
すると飴細工を拵えていた老人が、ギロリと鋭い目で寛三達を睨みつけた。
若い衆よ、香具師にはな、商いよりも大切にしているものがあるんじゃ」
「・・はあ」
「ここは西山親分の故郷よ。だから儲けがなかろうと、義理を欠かすわけにはいかないんじゃ」
老人は凄みを利かせた表情で、寛三に出来上がったニワトリの飴細工を渡した。
今にも鳴き出さんばかりの見事な細工に、香具師として駆け出しの寛三は、ただ平身低頭して詫びるしかなかった。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。