『人外境の花嫁』一.異界の漂泊民(十一)
『人外境の花嫁』
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一.異界の漂泊民 (十一)
剛志がヒューと口笛を吹いた。
「物乞いの娘にしては、いい乳をしているじゃないですか、ねえ兄貴」
「馬鹿野郎、下衆なことを言うんじゃねえ」
気分を害した寛三は、剛志の尻を思いっきり蹴飛ばした。
すると飴細工の老人が寛三に言った。
「あれは勧進の子じゃ」
「カンジン?」
「この辺りではそう呼んでおる。世間では山窩と言うらしいがな」
「はあ、サンカですか?」
初めて耳にする言葉に寛三は首を傾げた。
老人は飴でできた象の鼻を延ばしながら、都会者には馴染みがないかもしれんと呟いた。
寛三は少年の言葉を思い返した。
「でも彼等は自分をミソ・・何とかと言っていましたが?」
「生業から箕そそくりと呼ぶ地域もある」
箕とは、穀類の実と殻を区分けする竹の皮などで編んだ農具である。
またそそくるは修理するという意味の方言だと老人は教えてくれた。
剛志が横から口を挟んだ。
「ああ、農具の修理屋ですか」
「そうじゃ、山窩は箕つくりや箕直しをしながら、定住する家を持たず、山々を自由に放浪して暮らしているんじゃ」
懐手した剛志が感心したように言った。
「それなら旅回りの俺達と大して変わらないじゃないですかね、兄貴」
「ああ、まだ家族揃って放浪するだけ、一人旅の香具師よりましかもしれないな」
横浜に残した妻と子供を思い返して、寛三は我が身の不憫を自嘲した。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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剛志がヒューと口笛を吹いた。
「物乞いの娘にしては、いい乳をしているじゃないですか、ねえ兄貴」
「馬鹿野郎、下衆なことを言うんじゃねえ」
気分を害した寛三は、剛志の尻を思いっきり蹴飛ばした。
すると飴細工の老人が寛三に言った。
「あれは勧進の子じゃ」
「カンジン?」
「この辺りではそう呼んでおる。世間では山窩と言うらしいがな」
「はあ、サンカですか?」
初めて耳にする言葉に寛三は首を傾げた。
老人は飴でできた象の鼻を延ばしながら、都会者には馴染みがないかもしれんと呟いた。
寛三は少年の言葉を思い返した。
「でも彼等は自分をミソ・・何とかと言っていましたが?」
「生業から箕そそくりと呼ぶ地域もある」
箕とは、穀類の実と殻を区分けする竹の皮などで編んだ農具である。
またそそくるは修理するという意味の方言だと老人は教えてくれた。
剛志が横から口を挟んだ。
「ああ、農具の修理屋ですか」
「そうじゃ、山窩は箕つくりや箕直しをしながら、定住する家を持たず、山々を自由に放浪して暮らしているんじゃ」
懐手した剛志が感心したように言った。
「それなら旅回りの俺達と大して変わらないじゃないですかね、兄貴」
「ああ、まだ家族揃って放浪するだけ、一人旅の香具師よりましかもしれないな」
横浜に残した妻と子供を思い返して、寛三は我が身の不憫を自嘲した。
つづく…
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