童話『プリン』・・・第三章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第三章
四十年前。
北海道の冬は長い。
もう三月になるのに、気温は氷点下まで下がり、夜になっても雪は降り続いた。
夕飯を食べた洋士は、暖かい部屋でテレビを見ていた。
「学校の宿題は終わらせなさい」
母の明子が、台所で食事の片づけをしながらどなった。
「は~い」
ランドセルから算数の教科書を出すと、洋士はつまらなそうな顔で机に座った。
その時、びゅっと冷たい風が入ってきた。
「明子、ちょっと来てくれ。ローラの子が産まれそうだ」
髪に雪を積もらせた父の哲夫が、真っ白い息を吐きながら母を呼んだ。
勉強したくなかった洋士は、母を追ってローラがいる厩舎へ向かった。
震えるような寒さだった。
古い木造の厩舎は、真ん中が通路になっていて、左右に区切られた部屋が並んでいる。
その一番奥にあるが、ローラが与えられた馬房だった。
洋士は小学校三年生。父が経営する古谷牧場の一人っ子だが、産まれたばかりの子馬を見るのは初めてだった。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
★『降矢木士朗・紅殻格子 メディア掲載作品&携帯小説配信サイト』紹介はこちらです★
官能小説ランキングに参加しています。応援、宜しくお願いしますm(__)m
にほんブログ村 恋愛小説(愛欲)
FC2 官能小説 人気ブログランキング~愛と性~