童話『プリン』・・・第二章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第二章
古谷洋士は、そんな子供たちの笑顔に目を細めた。
洋士は五十歳、古谷牧場の牧場長をつとめている。
「そろそろお話をしていただけますか?」
引率の先生が、春の陽射しに気のゆるんだ洋士を促した。
「わかりました」
洋士は子供たちを牧場の隅にある小さな広場に集めた。
そこには一本の木が植えられていた。
キタコブシ。
北海道に遅い春を告げる花で、葉が出る前に大きな白い花を咲かせる。
そのキタコブシは、青空に張り出した枝に、たくさん白い花をつけていた。
洋士はキタコブシの前に立って、子供たちを芝生の上に座らせた。
「みんな、馬を見るのは初めてかな?」
子供たちは興奮して手を挙げた。
「うん、ぼくは馬に乗ってみたい」
「私、子馬を家で飼いたい」
「え~、でも牧場の仕事は大変だって、さっきオバサンが言っていたよ」
今日体験した感想を話す子供たちに、洋士はにっこりと笑いかけた。
「あはは、オジサンはみんなと同じ年ぐらいの時から、この牧場で子馬の世話を始めたんだよ」
「ええっ、すごい!」
「まあ、お父さんのお手伝いみたいなものだったけどね」
洋士はキタコブシの花を見上げた。
「これからみんなに聞いてもらうのは、オジサンが初めて世話をしたプリンという馬の話です」
「プリン?」
子供たちがクスクスと笑った。
「そう、名前の通り、プリンはとてもかわいい子馬だったんだよ」
洋士は目をつむって、子供のころの記憶をたどった。
ふわっと早春の風が吹いた。
キタコブシの白い花が、生きているかのように青い空に揺れ動いた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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