童話『プリン』・・・第八章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第八章
街路樹のライラックが紫の花をつけると、梅雨がない北海道は、一年で最もさわやかな季節を迎える。
休日で学校がない洋士は、牧場の白い柵に腰かけてプリンを見ていた。
「大変よ、古谷君」
清美が息を切らして走ってきた。
「そんなにあわててどうしたの?」
「馬を買いに来た人がいるのよ」
見ると、厩舎の方から、哲夫が杖をついた老人を連れて歩いてくる。
子馬が産まれると、馬主とか調教師と呼ばれる人たちが牧場を訪れる。
いい子馬を買うためだった。
競馬に出られるのは二歳からだが、走りそうな子馬を探して今から予約しておくのだ。
「今年は何頭産まれた?」
「全部で七頭です」
「走りそうな馬はおるかな?」
「はい、お確かめ下さい」
いつもは厳しい哲夫が、老人の前で小さくなっている。
老人は金子恵太郎と言う馬主だった。
牧場で産まれたサラブレッドは、馬主に買い取られて競馬に出走する。
競馬で走るためには、資格を持った馬主の馬でなければならないからだ。
一方、牧場は馬を売って暮らしている。
馬が売れなければ生活できない。
一秒でも速く走る馬をつくり、馬主に買ってもらわなければ、古谷牧場はつぶれてしまうのだ。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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