童話『プリン』・・・第七章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第七章
北海道に春がやってきた。
病気にかかることもなく、まだ細い体つきだが、プリンの背はどんどん伸びていった。
そしてローラと一緒に牧場へ出て、少しずつ草原を走り回るようになった。
小学校四年生になった洋士は、クラブ活動を終えると、ランドセルを背負ったまま牧場へ向かった。
「おいで、プリン」
ローラと牧場にいたプリンは、洋士の声を聞くと、尻尾を振りながら走り寄ってきた。
そして柵の上から首を伸ばし、いつものようにランドセルの匂いを嗅いだ。
西に傾きかけた夕日が、プリンの栗毛を金色に輝かせている。
そろそろ馬を厩舎へ戻す時間だった。哲夫は、ローラとプリンに引き綱をつけた。
「洋士は本当にプリンが好きなんだな」
「うん、他の子馬もかわいいけど、プリンは僕を兄さんだと思っているんだよ」
プリンの頭をなでる洋士を見て、哲夫はにっこりと笑った。
一人っ子の洋士は、昔から弟が欲しいと明子にねだっていた。
「そうか・・まだ早いかと思っていたが、プリンの世話を手伝ってみるか?」
「えっ、いいの?」
「プリンは大人しいし、洋士になついているから大丈夫だろう」
「やった」
洋士は小躍りして、哲夫が引くプリンの後をついて行った。
哲夫に言いつけられた仕事は、ローラとプリンが住む馬房の掃除だった。
学校から帰ると、プリンたちが放牧されているうちに、馬房の下に敷く寝藁を取り替えるのだ。
外から見ているだけではあまり感じないが、馬房の中に入るとふんや尿の匂いがする。
だが洋士は、プリンの世話ができる楽しさで、毎日きつい仕事を休まずに続けた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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