童話『プリン』・・・第六章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第六章
二人はよろこんだが、犬や猫と違って、馬の名前をどうつけていいかわからなかった。
「そんなに悩まなくていいんだよ」
競走馬としての正式な名前は、この子馬を買った馬主がつける。
二人が決めるのは、この牧場にいる間の呼び名だった。
洋士はふと馬房に貼ってある紙を見た。
『父ファバード、母ローラ、父の父プリンスリールーラ』
哲夫にたずねると、それは子馬の血統だと教えてくれた。
子馬の父も祖父も、海外で活躍した強い馬だったらしい。
清美がぷっとふきだした。
「おじいさんがプリン何とかだって・・そうだ、プリンがいいわ、すごくかわいいもの」
「でも男の子だよ・・」
洋士は不満だった。
もっと強くて速そうな名前がいいと思った。
だが清美は一度言い出したら聞かない。
「いいの、プリンに決定。オジサン、今日からこの子馬はプリンって呼んで」
「ああ、わかったよ。さあ、そろそろ学校へ行かないと遅刻するぞ」
哲夫はにっこり笑って、洋士と清美を厩舎から送り出した。
それからと言うもの、洋士は毎日早起きしてプリンを見に行くようになった。
もちろん清美も学校へ通う途中、プリンの馬房に立ち寄って行く。
ローラの母乳を吸いながら、すくすく成長するプリンを二人は見守った。
世話をするのは哲夫だが、プリンは毎日顔を合わせる洋士と清美がわかるようだった。
二人が厩舎へ行くと、馬栓棒という馬房の入り口をふさぐ木の棒から、プリンは顔を出して鼻を寄せてくる。
「くすぐったいよ」
哲夫に馬を触ってはいけないと注意されていた。
いたずらして人をかむことがあるからだ。
洋士はおそるおそる頭をなでてみた。
毎日ブラシをかけているので、すべすべした毛の手触りがした。
プリンはかむどころか、目を細めてうれしそうに洋士を見つめた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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