童話『プリン』・・・第十章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第十章
金子は洋士の頭をなでた。
「大丈夫じゃ。ワシがプリンを立派な競走馬にしてやる。その代わり、大人になるまでしっかりとプリンを育てるんじゃぞ」
洋士はプリンの無邪気な目を見つめた。
大きな競馬場。
大人になったプリンが、鮮やかな緑の芝生を疾走する。
速い。速い。
あっと言う間に、プリンは他の馬を抜き去ってゴールに飛び込む。
何万人もいる大観衆が、声をからせてプリンを応援する。
プリンの幸せを思えば、洋士たちのわがままを通すことはできない。
「・・はい」
洋士と清美は、涙がわき上がるのをけんめいにこらえた。
二人にできるのは、別れの日が来るまで、プリンを一所懸命かわいがってやることだけだった。
そして短い夏がやってきた。
空にはぽっかりと白い雲が浮かび、丘には青々と伸びた牧草が風にそよぐ。
夏の熱い陽射しの中、放牧された馬を避けて、赤いトラクターが牧草を刈っている。
夏は牧草刈りでいそがしい。
牧草が伸びる夏に、馬が一年間食べる干し草をためるのだ。
古谷牧場では家族総出で仕事をするが、大きな牧場になると、アルバイトをやとって牧草を刈り集める。
洋士も今年から牧草刈りを手伝っていた。
ローラの母乳ですくすく育ったプリンも、人間の赤ちゃんと同じで、離乳する時期が近づいてくる。
離乳すると、子馬には飼い葉と呼ばれるエサが与えられる。
飼い葉は青草や干草のほかに、麦や豆、ニンジンやリンゴなどを混ぜてつくられる。
これを朝と夕方の二回、馬に与えるのだ。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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