童話『プリン』・・・第十一章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第十一章
哲夫は飼い葉やりも洋士に任せた。
飼い葉や水を入れる桶は重いが、洋士がつくった飼い葉をプリンが食べてくれるはうれしかった。
プリンはお腹がすくと、前足で地面をかくくせがあった。
それは父の哲夫にはせず、飼い葉をくれる洋士だけに見せるおねだりだった。
賢いプリンは、洋士をちゃんとわかってくれているのだった。
プリンはニンジンの細切りが好物だった。
洋士は他の子馬につくる飼い葉より、プリンにはニンジンの細切りを多く入れてやった。
そして秋になると、子馬たちはつらい仔分けを迎える。
仔分けとは、母馬と子馬を分けて育てることである。
子馬は寂しい思いをするが、競走馬としての訓練をするために仕方ないことだった。
プリンもローラと馬房を別々にされた。
そして放牧される牧場も、母馬は母馬同士、子馬は子馬同士に分けられた。
しばらくプリンはローラを探して鳴いてばかりいた。
それはローラも同じだった。
離れ離れにされた母子を見て、洋士も悲しく切なかった。
「我慢しろ、プリン」
洋士は特別にニンジンの細切りをやった。
プリンはローラとの別れを我慢するように、馬房の柵から顔を出して洋士に何度もこすりつけてきた。
仔分けしてから、プリンはいっそう洋士を頼りにしているようだった。
「困るわね、プリンには」
夕方の飼い葉をやっていた母の明子が、笑いながら洋士に話しかけた。
「先週、洋士が秋の遠足でいなかった時、母さんが飼い葉をやったんだけど、ほとんど食べないで心配しちゃったわ」
「プリンは洋士の弟だからな」
一緒に仕事をしていた哲夫も笑った。
洋士はプリンの頭をなでた。
くりくりした大きな目で、プリンは洋士をじっと見つめた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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