童話『プリン』・・・第二十章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第二十章
森本厩舎は十頭の馬を預かっている。
並んだ馬房を歩きながら、洋士は心臓がドキドキするのを感じた。
「プリン!」
洋士は思わず声を出してしまった。
そこには別れた時より一回り体が大きくなったプリンがいた。
ピンと耳を前に向けて、プリンはじっと洋士を見つめた。
「ヒヒン」
一声高くいななくと、プリンは頭を低くして馬栓棒から顔を出した。
プリンは洋士を覚えていたのだ。
円らな目を細めて、子馬のように鼻先をこすりつけてきた。
「プリン・・」
うれしいのに涙があふれてきた。
泣きながら洋士は、プリンの顔を抱くように何度もなでてやった。
プリンが前足でコンクリートの床をガリガリかいた。
「お腹が空いたのか?」
ニンジンの細切りをやると、プリンは美味しそうに食べ始めた。
森本が驚いた顔で近づいてきた。
「ほう、プリンの好物はニンジンか」
「はい、でも細切りにしてやらないとあまり食べないんです」
「なるほど、そうだったのか。これからはもっとニンジンの細切りをあげよう」
森本はプリンの食欲がないのを気にしていた。
競走馬は激しい運動をするので、飼い葉を食べる量は健康上大切なことだった。
洋士は気になっていたことを森本に聞いて見た。
「プリンは・・強い馬になれますか?」
「ああ、大丈夫だ。三歳になったから、きっと勝てるようになると思うよ」
力強い森本の言葉に、洋士は安心して気持ちがゆるむのを感じた。
洋士はニンジンを食べさせながら、プリンに何度も頑張れと話しかけていた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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