童話『プリン』・・・第十五章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第十五章
初めての馬運車に、プリンはなかなか乗ろうとしなかった。
不安なのか、耳をクルクル回して警戒している。
無理矢理綱で引くと、後ろ足を跳ね上げて暴れた。
「大人しくするんだよ」
洋士は持ってきたニンジンの細切りを差し出した。
プリンはおいしそうにニンジンを食べると、洋士の気持ちがわかったのか、暴れるのを止めて馬運車に乗り込んだ。
プリンを乗せると、馬運車の扉がゆっくりと閉まり始めた。
「プリン」
思わず洋士は大きな声で名を呼んだ。
するとプリンは、哀しそうな目で洋士を振り返った。
「い、いやだ。お父さん、やっぱりプリンはこのまま牧場に・・」
哲夫はぐっと手で洋士の肩をつかんだ。
見上げると、父の目にも涙が潤んでいた。
きっと哲夫は、こうして毎年馬を送り出す時、洋士よりもつらい思いをしてきたのかもしれない。
手塩にかけて育ててきた馬が、競馬の世界で勝ち残っていけるのか、不安でしかたなかったはずだ。
馬運車が牧場を出て行った。
ぽつんと取り残された洋士は、いつまでもその車が走っていくのを見送った。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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