童話『プリン』・・・第十四章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第十四章
その秋、プリンも育成牧場へ巣立ちする日がやってきた。
プリンが預けられる牧場は、北海道から遥か離れた茨城県にあった。
馬を輸送する馬運車で、プリンはまる二日近くかけて運ばれていくのだ。
前夜、洋士は一睡もできなかった。
いつかプリンがこの牧場から去って行くことは、世話を始めた頃からわかっているつもりだった。
馬主の金子にも言われていた。
だがプリンが明日からそばにいなくなると思うと、涙があふれて止まらなくなった。
円らで澄んだ目で見つめるプリン。
鼻をこすりつけて甘えるプリン。
ニンジンの細切りが好きなプリン。
洋士を見つけると駆け寄ってくるプリン。
わずか一年半だったが、かわいいプリンの顔が一晩まぶたから消えなかった。
声を押し殺して泣いているうちに、別れの日の朝が明けてしまった。
朝、プリンを乗せる馬運車が到着した。
「いい子で頑張るのよ」
お別れに来た清美は、わんわん泣きながら何度もプリンの体をなでた。
清美は毎日学校の帰りに牧場へ立ち寄り、母親のようにプリンを見守ってくれた。
洋士もつられて涙があふれるのをぐっとこらえた。
(馬はペットではない)
馬主の金子が話してくれた言葉が、洋士の心から離れなかった。
プリンはずっとこの牧場にはいられない。
甘えん坊のプリンのままでは、競馬の世界で生きていけない。
強い馬にならなければ、過去の名馬のように、たくさんの人々から愛してもらえないのだ。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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