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童話『プリン』・・・第二十一章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。

日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。

第二十一章

北海道に戻ると、森本が約束してくれた通り、プリンは一月に出走したレースで勝つことができた。

「やった!」

競馬中継を聞きながら、洋士は小さくガッツポーズをした。
二着の馬を大きく引き離しての勝利だった。
洋士は翌日のスポーツ新聞を買って、プリンスバードと名前が出ているのを清美に見せてやった。

そして二月のレースでは二着と惜敗したものの、三月には毎日杯という三歳馬同士の重賞レースに挑戦した。
最後のゴール前で接線になったが、後ろの方から伸びてきたプリンが、二着の馬にクビの差をつけて勝った。

プリンは重賞馬になった。
洋士は信じられなかった。
確かに森本の言葉通りだが、去年まで一勝もできなかったプリンが、あっと言う間に一流馬の仲間入りしたのだ。

哲夫と明子も大喜びだった。
古谷牧場から出た初重賞場だった。
近くの牧場仲間が集まって、にぎやかな酒盛りが繰り返された。

「いよいよ次は皐月賞だね」

「皐月賞でもいい勝負ができるよ」

お祝いに来る人は口々にそう言った。
森本調教師からも、プリンを皐月賞に挑戦させたいと連絡があった。

「いや、そこまで実力はないよ・・」

哲夫は控え目に首を振った。
それもそのはず、つい先週までは、やっと一勝できたプリンにほっとしていたのだ。
皐月賞に出られるなど夢にも思わぬことだった。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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童話『プリン』・・・第二十二章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。

日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。

第二十二章

競馬の重賞レースには、いくつかの格づけがある。
この間プリンが勝った毎日杯はG3で、その上にG2があり、最高峰のレースはG1と呼ばれる。

いくつかあるG1レースの中でも、三歳馬だけしか走れないレースがある。
皐月賞、日本ダービー、菊花賞。

この三つのG1は、クラシックと呼ばれる大レースで、すべてを勝った馬には三冠馬の称号が与えられる。
毎年一万頭近くのサラブレッドが産まれるが、三冠の栄誉を手に入れた馬は、長い競馬の歴史で二頭しかいない。

その初戦にあたる皐月賞に、この間まで負け続けていたプリンが出走する。
だが他にも強い馬が出るので、毎日杯をぎりぎりで勝ったプリンに、期待するのは荷が重すぎると哲夫は考えているようだった。

G1を勝つとその後すぐに表彰式がある。
馬主、調教師と並んで、馬を育てた牧場主も競馬場で表彰されるのだ。
だからプリンが勝つかどうかわからないが、哲夫は千葉にある中山競馬場へ行かなければならない。

「お前も連れて行くから」

プリンの皐月賞出走が決まると、哲夫は中学生になった洋士に命じた。

洋士もプリンが大レースに勝てるとは思えなかった。
負けるプリンを見たくはなかったが、もう一度プリンに会いたいと洋士はうなずいた。

キタコブシの白い花が北海道に遅い春を告げる頃、近所の牧場仲間に見送られて、古谷一家は千葉にある中山競馬場へ向かった。

皐月賞当日、朝から競馬場はたくさんの人でごった返していた。
大レースとあって、競馬ファンは興奮気味だった。

「絶対ラッキーポーラが勝つよ」

「いや、ハローバンガードは強いぞ」

みな応援する馬が勝つとゆずらないが、プリンスバードの名前を挙げる人は、ほとんど見かけなかった。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十三章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
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第二十三章

プリンは八番人気だった。
実力からすれば仕方ないが、洋士はちょっぴり悔しい気持ちがした。

哲夫と洋士は、プリンが準備する競馬場の馬房へ向かった。
特別に森本調教師がプリンに会わせてくれた。そこには、ツヤツヤした栗色の馬体を輝かせたプリンでいた。

「プリン!」

洋士の姿を見つけたプリンは、ブルルッと鼻を鳴らした。
そして甘えたくて、頭を突き出してなでてもらおうとする。

いつものプリンだった。
レース前でニンジンをやることができないが、洋士はすりつけてくるプリンの顔を優しくなでてやった。

「勝てなくてもいいから、怪我をしないで帰ってくるんだぞ」

人気がなくて悔しい気持ちはもう消えていた。
やはりプリンは洋士の弟だった。
プリンはいつものプリンでいいと洋士は思った。

レースの時間が近づいた。
スタンドはぎっしり人で埋まっている。
初めて走るプリンを近くで見たくて、森本調教師に頼んで、ゴールから二〇〇メートル手前のスタンド脇に、洋士は母と一緒に陣取っていた。
コース外柵のすぐ外で、馬に手が届きそうな芝生の上だった。

G1レースのファンファーレが鳴る。
皐月賞―二〇〇〇メートル芝コース。
ぐっと洋士は汗ばむ手を握りしめた。

ゲートが開いた。
馬はわれ先に飛び出し、コースを時計回りに猛然と走りだした。
スタンド前から向こう正面を進む馬を、哲夫はずっと双眼鏡で見守っていた。

「プリンは後ろから三番手ぐらいだ」

「大丈夫かな?」

「ああ、まだ勝負はわからない」
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十四章

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臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
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第二十四章

人気を集めるラッキーポーラやハローバンガードは、好位置と言われる先頭から三、四番手を進んでいる。
あまり後方にいると、ゴール前での最後の勝負に間に合わなくなる。

やがて馬群は向こう正面から、スタンドの方へコースを回ってくる。
哲夫が叫んだ。

「ああ、あんなに後ろにいたら、先頭に届かないぞ!」

洋士の目にも、まだプリンが後方でもたもたしているのがわかった。
どこか落ち着きがなく、キョロキョロと周りの馬に遠慮しているようだった。

馬群は最後のコーナーを曲がり、ゴール前の直線での脚比べになった。
プリンはまだ後方、騎手は洋士が見守るコースの大外へプリンを導いた。

「ああ、これは負けだ」

哲夫が悔しそうに頭を抱えた。
だが洋士は立ち上がって柵にしがみつくと、目の前を走りぬけるプリンに叫んだ。

「プリン!」

プリンは首を曲げて洋士をちらっと見た。
すると全身の筋肉をぎゅっと躍動させ、最後方から矢のようにグンと加速した。

ゴールへ向かって、大外からプリンが風のように駆け抜けて行った。
ワーッという歓声があがり、外れた馬券と競馬新聞が雪のように舞った。

「か、勝ったぞ、プリンが勝った」

哲夫が洋士を抱きしめた。

「プ、プリンが勝ったの?」

「ゴール前で他の馬をごぼう抜きした」

洋士は一瞬幼い頃のプリンを思いだした。
あの甘えん坊だったプリンが、クラシックレースの一冠、皐月賞を勝ったのだ。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十五章

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第二十五章

スタンド前へ戻ってきたプリンに、たくさんの観客が大きな声援を送った。
騎手は誇らしげに手を上げたが、プリンはキョロキョロして落ち着かなく見えた。

レース後、口取り式があった。
皐月賞と刺繍された優勝レイをかけたプリンを中心に、長い引き綱を関係者が持って並んだ。

馬主の金子、調教師の森本、哲夫と明子、そして洋士も、報道陣のカメラの前で綱を取った。
口取り式が終わると、洋士はプリンの前に出て肩のあたりをなでた。

「・・・・」

プリンを褒めてやろうとしたが、洋士は胸が詰まって言葉がでなかった。
プリンは安心したように目を細め、洋士の顔へ鼻先をくっつけてきた。

子馬の頃と変わらない甘えん坊のプリンだった。
表彰式に引かれていくプリンが、ゆらゆらと涙で滲んで見えた。

その後プリンは、三歳馬最高峰のレース、日本ダービーに挑戦した。
一番人気だった。
だがゴール前でラッキーポーラに抜かれて二着に終わった。

しかも残念なことに、レース中に足を怪我していた。
重傷ではなかったが、治療に一年ぐらいかかるため、プリンは引退することになった。

全成績十一戦三勝。
プリンの名前は、皐月賞馬として、競馬の歴史にしっかりと刻まれたのだった。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十六章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
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第二十六章

それから十年近くが経った。
大学へ進学した洋士は、北海道を離れて東京のアパートで一人暮らしをしていた。
大学生活も今年で四年目を迎え、洋士はこのまま東京の会社に就職するつもりでいた。

東京の暮らしは楽しかった。
映画館や劇場、巨大なショッピングセンターに遊園地――牧場ばかりの日高にはない世界が東京にはあった。

目まぐるしい暮らしに、洋士はプリンのことを忘れかけていた。
いや、忘れていたわけではないが、プリンは皐月賞馬の名誉を手にして、幸せな種牡馬生活を送っていると思っていた。

競馬は血統のスポーツと言われる。
サラブレッドは、その祖先を遡ると三頭の馬に辿り着く。
三頭の馬から、人間は約三百年かけて、より速く走る馬をつくりだしてきた。

優秀な馬を見分けるのがレースだった。
人々はレースを勝った牡馬や牝馬の子馬を競って手に入れた。
子馬をまたレースで走らせ、勝てばさらにその子をつくらせる。
こうして改良されたのが、競馬を走っているサラブレッドなのだ。

だから大レースに勝ったプリンは、引退して種牡馬と呼ばれる父馬になった。
馬の寿命は二十歳から二十五歳だ。
プリンは今十三歳ぐらいだから、まだ種牡馬として活躍しているに違いない。

そしてプリンの子供や孫がレースに出て、その強い血を今も競馬界に伝えていることだろう。
馬の世界から離れた洋士は、そんな風にばくぜんと思っていた。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十七章

            『プリン』
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第二十七章

ある朝、清美から電話がかかってきた。
高校を卒業した清美は、やはり東京のデパートに就職していた。
お互いに忙しくてめったに連絡は取れないが、年に一度は日から出てきた仲間で親睦会がある。
だが清美の声は慌てていた。

「古谷君、大変よ、大変なのよ!」

「どうしたの?」

「き、昨日の朝売新聞の夕刊読んだ?」

「いや、朝売はとっていないから・・」

「とにかく、今から古谷君のアパートへ行くから待っていて」

清美は一方的に電話を切った。
平日だが清美は仕事が休みなのだろう。
洋士も今日は大学での講義はなかった。

アパートに清美が駆け込んできた。
そしてバッグから新聞を取り出すと、洋士の前に広げた。

『皐月賞馬プリンスバード、哀れな死』

新聞の見出しは、確かにプリンの死を伝えていた。
洋士は急いで記事を読み始めた。

『およそ十年前、皐月賞優勝、日本ダービー二位の栄誉に輝いたプリンスバードが、先月千葉県南房総にある観光牧場で、ひっそりと亡くなっているのが確認された。

プリンスバードは引退後、種牡馬となったものの活躍する子が現れず、乗馬センターへ引き取られた。
しかしそこでも、人を乗せると暴れたりしたため、三ヵ月後にはその観光牧場へ売り渡された。

牧場では、園内イベントや馬のショーで働いていた。
今年の夏、中世ヨーロッパの騎馬戦ショーが催された。

プリンスバードは、鎧をつけた九十キロ以上の人を乗せ、三週間にわたって炎天下のショーを強いられた。
長期にわたる過酷な使役で、プリンスバードは日射病にかかり、飼い葉もほとんど食べられず衰弱死した。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十八章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
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第二十八章

むろん一年に一万頭近く生まれるサラブレッドは、乗馬になることもかなわず死んでいく。
だが皐月賞馬として愛された馬の最後としては、あまりにも切なく哀しい流転の生涯である』

もう涙で洋士は記事が読めなかった。清美も泣いている。
洋士はうめくように名を呼んだ。

「プリン・・」

悔しくて言葉にならなかった。
幸せな生活をしていると、洋士は勝手に想像してプリンを見捨てたのだ。
もしプリンの苦しみがわかっていたら、哲夫に頼み込めば、古谷牧場へ引き取ることもできたはずだ。

今もプリンの顔が目に浮かぶ。
もっと一緒に遊んでやりたかった。
もっと甘えさせてやりたかった。
もっとニンジンの細切りを食べさせてやりたかった。
しばらく子供のように泣いていた洋士に、プリンが死んだ観光牧場へ行きたいと清美は言った。

「・・しかし」

泣いていた清美は、有無を言わせず洋士に支度させると、手を引いてアパートから引っ張り出した。
そして東京駅で列車に乗ると、二人は一路晩夏の房総半島へ向かった。

きらきらと波頭が輝く海の近くに、その観光牧場はあった。
砂のコースがあるだけの、どこかさびれた田舎の観光施設だった。

洋士はがく然とした。
東京から列車で一時間半ぐらいの距離にプリンはいたのだ。

そして過酷な重労働を強いられていた。
そんなプリンを放ったらかしにして、洋士は東京で楽しい生活をぬくぬくと送っていた。
そう思うと、プリンが死んだ観光牧場へ入るのが、洋士は恐くてしかたなかった。
つづく・・・
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童話「プリン」・・・第二十九章

            『プリン』
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第二十九章

プリンの生産者だと告げると、経営者はプリンが暮らした馬房で、世話をしていた老人に会わせてくれた。

「畠山です」

白髪頭の老人は、申し訳なさそうに頭を下げた。
古びた馬房には、ここで撮られたプリンの写真と花が活けてあった。
老人はプリンをタロウと呼んだ。タロウは孫の名前だという。

「そんなに偉い馬だとは知らなかったんですよ。タロウは力があって、よく働いてくれる馬だったんです」

清美が泣きながら畠山に食ってかかった。

「どうしてそんなひどいショーに出させたんですか? 日射病になるまでプリンを働かせるなんて・・」

「すみません・・でもタロウは、集まってくる子供が大好きで、ショーに出るのを嫌がらなかったんです」

「そんなことわかるんですか?」

「ええ、子供が近くにいると、目を細めて鼻をこすりつけるような仕草をして・・」

洋士は、プリンの写真の前で膝から崩れ落ちた。

「ごめん、プリン・・」

たぶん畠山の言うことは本当だろう。
ここへ来てからも、プリンは洋士のことを思っていてくれていた。
子供の頃の洋士を、プリンはずっと探していてくれたのだ。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第三十章

            『プリン』
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第三十章

洋士はプリンの写真を見た。
プリンが畠山に顔をすりよせ、仲良く並んで写っている。

「畠山さん、プリンを大切に面倒みて下さったんですね」

「・・申し訳ないことです。あなたが大切に育てたタロウを殺してしまって・・」

皺だらけの顔をくしゃくしゃにして、畠山は涙をこぼして頭を下げた。

「いえ、プリンは幸せだったと思います。この写真と馬房を見ればわかります。きっと子供たちと遊べて、プリンは毎日が楽しかったはずです。ありがとうございました」

洋士も、プリンをかわいがってくれた畠山に頭を下げた。
皐月賞馬の哀れな死――競馬ファンからすれば、それは新聞に書かれた通りだろう。

だがプリンは、たくさんの子供たちに囲まれて幸せだったに違いない。
大人を乗せる乗馬は嫌でも、子供が集まる観光牧場では、牧場で洋士と一緒にいた日々を思い出していたに違いない。

東京へ戻る列車に、洋士と清美は乗っていた。
二人はずっと黙ったまま、夕陽に染まる海を車窓から眺めていた。
洋士は、畠山からもらったプリンのたてがみをにぎりしめた。

「・・大学を卒業したら、日へ帰ろうと思うんだ」

「牧場を継ぐの?」

「うん、引退したプリンの子を探して、かわいい孫を育ててみたくなった」

「いいわね、私も協力してあげる」

洋士と清美は遠く空へ目をやった。
茜色に輝く湧きあがった雲が、栗毛だったプリンの横顔のように見えた。
つづく・・・
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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご挨拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。               
児童文学 『プリン』
  
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※ 小説を読まれる方へ・・・   更新記事は新着順に表示されますので、小説を最初からお読みになりたい方は、各カテゴリーから選択していただければ、第一章からお読みいただけます。
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