童話「プリン」・・・第二十九章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第二十九章
プリンの生産者だと告げると、経営者はプリンが暮らした馬房で、世話をしていた老人に会わせてくれた。
「畠山です」
白髪頭の老人は、申し訳なさそうに頭を下げた。
古びた馬房には、ここで撮られたプリンの写真と花が活けてあった。
老人はプリンをタロウと呼んだ。タロウは孫の名前だという。
「そんなに偉い馬だとは知らなかったんですよ。タロウは力があって、よく働いてくれる馬だったんです」
清美が泣きながら畠山に食ってかかった。
「どうしてそんなひどいショーに出させたんですか? 日射病になるまでプリンを働かせるなんて・・」
「すみません・・でもタロウは、集まってくる子供が大好きで、ショーに出るのを嫌がらなかったんです」
「そんなことわかるんですか?」
「ええ、子供が近くにいると、目を細めて鼻をこすりつけるような仕草をして・・」
洋士は、プリンの写真の前で膝から崩れ落ちた。
「ごめん、プリン・・」
たぶん畠山の言うことは本当だろう。
ここへ来てからも、プリンは洋士のことを思っていてくれていた。
子供の頃の洋士を、プリンはずっと探していてくれたのだ。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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