童話『プリン』・・・第二十四章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第二十四章
人気を集めるラッキーポーラやハローバンガードは、好位置と言われる先頭から三、四番手を進んでいる。
あまり後方にいると、ゴール前での最後の勝負に間に合わなくなる。
やがて馬群は向こう正面から、スタンドの方へコースを回ってくる。
哲夫が叫んだ。
「ああ、あんなに後ろにいたら、先頭に届かないぞ!」
洋士の目にも、まだプリンが後方でもたもたしているのがわかった。
どこか落ち着きがなく、キョロキョロと周りの馬に遠慮しているようだった。
馬群は最後のコーナーを曲がり、ゴール前の直線での脚比べになった。
プリンはまだ後方、騎手は洋士が見守るコースの大外へプリンを導いた。
「ああ、これは負けだ」
哲夫が悔しそうに頭を抱えた。
だが洋士は立ち上がって柵にしがみつくと、目の前を走りぬけるプリンに叫んだ。
「プリン!」
プリンは首を曲げて洋士をちらっと見た。
すると全身の筋肉をぎゅっと躍動させ、最後方から矢のようにグンと加速した。
ゴールへ向かって、大外からプリンが風のように駆け抜けて行った。
ワーッという歓声があがり、外れた馬券と競馬新聞が雪のように舞った。
「か、勝ったぞ、プリンが勝った」
哲夫が洋士を抱きしめた。
「プ、プリンが勝ったの?」
「ゴール前で他の馬をごぼう抜きした」
洋士は一瞬幼い頃のプリンを思いだした。
あの甘えん坊だったプリンが、クラシックレースの一冠、皐月賞を勝ったのだ。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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