童話『プリン』・・・第二十五章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第二十五章
スタンド前へ戻ってきたプリンに、たくさんの観客が大きな声援を送った。
騎手は誇らしげに手を上げたが、プリンはキョロキョロして落ち着かなく見えた。
レース後、口取り式があった。
皐月賞と刺繍された優勝レイをかけたプリンを中心に、長い引き綱を関係者が持って並んだ。
馬主の金子、調教師の森本、哲夫と明子、そして洋士も、報道陣のカメラの前で綱を取った。
口取り式が終わると、洋士はプリンの前に出て肩のあたりをなでた。
「・・・・」
プリンを褒めてやろうとしたが、洋士は胸が詰まって言葉がでなかった。
プリンは安心したように目を細め、洋士の顔へ鼻先をくっつけてきた。
子馬の頃と変わらない甘えん坊のプリンだった。
表彰式に引かれていくプリンが、ゆらゆらと涙で滲んで見えた。
その後プリンは、三歳馬最高峰のレース、日本ダービーに挑戦した。
一番人気だった。
だがゴール前でラッキーポーラに抜かれて二着に終わった。
しかも残念なことに、レース中に足を怪我していた。
重傷ではなかったが、治療に一年ぐらいかかるため、プリンは引退することになった。
全成績十一戦三勝。
プリンの名前は、皐月賞馬として、競馬の歴史にしっかりと刻まれたのだった。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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