童話『プリン』・・・第二十六章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第二十六章
それから十年近くが経った。
大学へ進学した洋士は、北海道を離れて東京のアパートで一人暮らしをしていた。
大学生活も今年で四年目を迎え、洋士はこのまま東京の会社に就職するつもりでいた。
東京の暮らしは楽しかった。
映画館や劇場、巨大なショッピングセンターに遊園地――牧場ばかりの日高にはない世界が東京にはあった。
目まぐるしい暮らしに、洋士はプリンのことを忘れかけていた。
いや、忘れていたわけではないが、プリンは皐月賞馬の名誉を手にして、幸せな種牡馬生活を送っていると思っていた。
競馬は血統のスポーツと言われる。
サラブレッドは、その祖先を遡ると三頭の馬に辿り着く。
三頭の馬から、人間は約三百年かけて、より速く走る馬をつくりだしてきた。
優秀な馬を見分けるのがレースだった。
人々はレースを勝った牡馬や牝馬の子馬を競って手に入れた。
子馬をまたレースで走らせ、勝てばさらにその子をつくらせる。
こうして改良されたのが、競馬を走っているサラブレッドなのだ。
だから大レースに勝ったプリンは、引退して種牡馬と呼ばれる父馬になった。
馬の寿命は二十歳から二十五歳だ。
プリンは今十三歳ぐらいだから、まだ種牡馬として活躍しているに違いない。
そしてプリンの子供や孫がレースに出て、その強い血を今も競馬界に伝えていることだろう。
馬の世界から離れた洋士は、そんな風にばくぜんと思っていた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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