童話『プリン』・・・第二十七章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第二十七章
ある朝、清美から電話がかかってきた。
高校を卒業した清美は、やはり東京のデパートに就職していた。
お互いに忙しくてめったに連絡は取れないが、年に一度は日から出てきた仲間で親睦会がある。
だが清美の声は慌てていた。
「古谷君、大変よ、大変なのよ!」
「どうしたの?」
「き、昨日の朝売新聞の夕刊読んだ?」
「いや、朝売はとっていないから・・」
「とにかく、今から古谷君のアパートへ行くから待っていて」
清美は一方的に電話を切った。
平日だが清美は仕事が休みなのだろう。
洋士も今日は大学での講義はなかった。
アパートに清美が駆け込んできた。
そしてバッグから新聞を取り出すと、洋士の前に広げた。
『皐月賞馬プリンスバード、哀れな死』
新聞の見出しは、確かにプリンの死を伝えていた。
洋士は急いで記事を読み始めた。
『およそ十年前、皐月賞優勝、日本ダービー二位の栄誉に輝いたプリンスバードが、先月千葉県南房総にある観光牧場で、ひっそりと亡くなっているのが確認された。
プリンスバードは引退後、種牡馬となったものの活躍する子が現れず、乗馬センターへ引き取られた。
しかしそこでも、人を乗せると暴れたりしたため、三ヵ月後にはその観光牧場へ売り渡された。
牧場では、園内イベントや馬のショーで働いていた。
今年の夏、中世ヨーロッパの騎馬戦ショーが催された。
プリンスバードは、鎧をつけた九十キロ以上の人を乗せ、三週間にわたって炎天下のショーを強いられた。
長期にわたる過酷な使役で、プリンスバードは日射病にかかり、飼い葉もほとんど食べられず衰弱死した。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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