童話『プリン』・・・第十二章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第十二章
今年産まれた七頭の子馬たちは、母馬と別れた寂しさを忘れて、じゃれあったり、群れになってかけっこをしたりする。
哲夫は洋士を呼んだ。
「ほら、子馬たちを見てみろ。あの鹿毛の子馬がリーダーだ」
体が少し大きい茶色い毛の子馬が、群れの先頭を走っている。
「あれはきっと将来強い馬になるぞ」
哲夫は、将来この牧場を継ぐ洋士に、いい子馬の見分け方を教えようとした。
だが洋士は、教育よりもプリンのことが気になった。
子馬の群れで、プリンはいつもポツンと離れていた。
一緒に走ることがあっても、群れの最後をやる気なくついて行くだけだった。
心配になった洋士は哲夫に聞いてみた。
「お父さん、プリンは強くなるかな?」
「馬主の金子さんはいい子馬だと言うが、プリンはあまり走る気がないみたいだな」
子馬たちと一緒にいたプリンは、洋士がいるのを見つけて、群れから離れて駆け寄ってきた。
「プリン・・」
洋士はプリンの頭をなでながら不安になった。
こんな甘えん坊なプリンが、この先競馬の世界でやっていけるのだろうか。
哲夫は笑った。
「そんなに心配するな。いい馬かどうかなんて、本当に走ってみないとわからないさ」
古谷牧場は、祖父の代まで牛を飼っていたが、哲夫が馬の生産に切り替えたのだった。
馬を飼い始めて十年経つが、まだ大きなレースを勝つ強い馬は育っていなかった。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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