童話『プリン』・・・第十八章
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
第十八章
三連敗。
馬主の金子は、期待できるとプリンを買った。
何年も馬主を続けてきた金子が買うのだから、プリンには走る素質はあるのだろう。
哲夫が買う競馬専門新聞を読むと、プリンには走る気持ちがないと書かれていた。
(ぼくが甘やかしたからだ)
プリンが勝てないのは、自分の責任だと洋士は感じた。
もっと厳しくプリンに接していれば、競走馬としての自覚が生まれていたに違いない。
レースの中継が終わると、牧草刈りを手伝うのも止めて、洋士は一人牧場の丘を下りて家へ向かった。
また北海道に長い冬がやってきた。
プリンは十二月になっても一勝もできず、六連敗で二歳馬すべてのレースを終えた。
(プリンに会いたい)
年が明けてプリンは三歳になるが、遠く北海道にいる洋士は心配でしかたなかった。
曇りガラスの外で雪が降りしきる夜、夕飯を終えた哲夫が年始の予定を洋士に話した。
「新年は母さんの実家へ行くぞ」
「え、東京の?」
「ああ、ずっと会っていないからね」
洋士はしばらく考えて聞いてみた。
「父さん、東京へ行ったらプリンに会えるかな?」
「ああ、プリンがいる茨城なら、東京から電車で二時間ぐらいかな」
洋士は喜んだ。
その日から毎日のように、トレーニング・センターへ行くことを哲夫に念押しした。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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