『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(二十三)
『人外境の花嫁』
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八.山奥の探索者 (二十三)
突然、ホールの扉が突然開いた。
作務衣を着た男が走り寄り、陰部を舐めさせて陶然とする菜穂に耳打ちした。
「子猿、箕面谷の神社跡に、赤いスカイラインが脱輪して停まっているとの連絡だよ。横浜ナンバーをつけているけど、運転者の姿はどこにも見当たらないらしいのさ」
子猿は月絵の体を男達に預けると、菜穂の足許に跪いた。
「今夜の大事な儀式を前に、また不審な侵入者ですか。横浜ナンバー・・まさかお前達の仲間じゃないだろうな?」
子猿は月絵を怒鳴りつけた。
「・・知りません」
「まあいい。こんな山奥で車がなければ、大概の人間は樹海に迷って生きては帰れない」
そう毒づくと、子猿は修行者の男達を連れてホールを出て行った。
月絵は溢れる涙を零さないよう必死に口唇を噛んだ。
(先生・・来てくれたのね・・)
赤いスカイラインは降矢木の愛車である。
おそらく一昼夜かけて、横浜から月絵のことを心配して駆けつけてくれたのだろう。
ときめく鼓動が月絵の胸を締めつける。
(先生、先生、先生・・ああ、でも・・)
いくら頭脳が明晰でも、非力な降矢木が狂気の天神会に勝てるわけがない。
この建物に近づいただけで射殺されるかもしれない。
月絵は慄いた。
(先生の身に何かあったら・・)
菜穂や子猿程度の下っ端ではなく、直接乱裁道宗と話をつけなければと思った。
心の中でぷつんと何かが切れた。
月絵は大声で菜穂を怒鳴りつけた。
「ちょっとアンタ、大人しくしてりゃいい気になりやがって、もう我慢できないわ!」
菜穂は吃驚した表情を月絵に向けた。
「あたしを誰だと思っているのよ。横浜若葉会の親分、吉水金治の娘だよ。吉水金治はアンタの親分、足立寛三の弟分だ。アンタ等、弟分の娘にこんな仕打ちをするのかよぉ。おい、事を荒立てたくないなら、今すぐ足立寛三に吉水の娘が来たと伝えるんだよっ!」
そう叫ぶや、月絵は後ろから首を抱えていた配下の男に強烈な頭突きを見舞った。男は鼻を強打されて腰から砕け落ちた。
月絵の豹変に菜穂は茫然としながらも、男の一人を呼んでホールの外へ走らせた。
「つ、月絵ちゃん・・」
何が恐くて震えているのかわからない畠山を尻目に、覚悟を決めた月絵は、ショーツ一枚の艶めかしい裸身でどっかりと胡坐をかいた。
つづく…
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子猿は月絵の体を男達に預けると、菜穂の足許に跪いた。
「今夜の大事な儀式を前に、また不審な侵入者ですか。横浜ナンバー・・まさかお前達の仲間じゃないだろうな?」
子猿は月絵を怒鳴りつけた。
「・・知りません」
「まあいい。こんな山奥で車がなければ、大概の人間は樹海に迷って生きては帰れない」
そう毒づくと、子猿は修行者の男達を連れてホールを出て行った。
月絵は溢れる涙を零さないよう必死に口唇を噛んだ。
(先生・・来てくれたのね・・)
赤いスカイラインは降矢木の愛車である。
おそらく一昼夜かけて、横浜から月絵のことを心配して駆けつけてくれたのだろう。
ときめく鼓動が月絵の胸を締めつける。
(先生、先生、先生・・ああ、でも・・)
いくら頭脳が明晰でも、非力な降矢木が狂気の天神会に勝てるわけがない。
この建物に近づいただけで射殺されるかもしれない。
月絵は慄いた。
(先生の身に何かあったら・・)
菜穂や子猿程度の下っ端ではなく、直接乱裁道宗と話をつけなければと思った。
心の中でぷつんと何かが切れた。
月絵は大声で菜穂を怒鳴りつけた。
「ちょっとアンタ、大人しくしてりゃいい気になりやがって、もう我慢できないわ!」
菜穂は吃驚した表情を月絵に向けた。
「あたしを誰だと思っているのよ。横浜若葉会の親分、吉水金治の娘だよ。吉水金治はアンタの親分、足立寛三の弟分だ。アンタ等、弟分の娘にこんな仕打ちをするのかよぉ。おい、事を荒立てたくないなら、今すぐ足立寛三に吉水の娘が来たと伝えるんだよっ!」
そう叫ぶや、月絵は後ろから首を抱えていた配下の男に強烈な頭突きを見舞った。男は鼻を強打されて腰から砕け落ちた。
月絵の豹変に菜穂は茫然としながらも、男の一人を呼んでホールの外へ走らせた。
「つ、月絵ちゃん・・」
何が恐くて震えているのかわからない畠山を尻目に、覚悟を決めた月絵は、ショーツ一枚の艶めかしい裸身でどっかりと胡坐をかいた。
つづく…
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