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『風媒花』・・・第十七章

『風 媒 花』
  第十七章

知彦の目は釘づけになった。
女の陰部を生で見るのは初めてだった。

湯を滴らせた翳りの下には、複雑な形をした薄褐色の花裂が走っている。
その終点近くで花裂は綻び捲れて、神秘的な濃桃色をした内肉を覗かせている。

「・・・・」

知彦は言葉を失った。
お世辞にも綺麗とは言い難い。
白い美肌からは想像できないグロテスクさに、改めて女性が獣の雌と変わらないことを知らされた。

だがその醜悪さを目の前にして、頭の中とは裏腹に、肉茎は弾けんばかりに血液を逆流させていた。
美幸は淫らに腰を「の」の字に揺らした。

「ねえ、見てばかりいないで・・」

誘われるままに知彦は、湯から上半身だけ乗り出すと、半ば無意識に露な陰部へと口唇を這わせた。

「あっ・・ああん・・」

真っ白な内腿がピクッと震えるや、美幸は上半身を仰け反らせた。
知彦は犬のように美幸の秘唇を無心で舐めた。
誰かに教わったわけでもないのに、知彦は美幸の花襞を掻き分け、尖った肉芽を剥き出すように舌先で嬲っていた。

「いいっ・・いいの・・久喜さんったら上手だわ・・」

いつしか知彦も浴槽を這い出し、二人は岩貼りのタイルで抱き合った。
やがて知彦を仰向けに寝かせると、美幸はいきり立った肉茎を口にくわえた。

「んぐぅ」

喉を鳴らして美幸が半ば辺りまで呑み込んでいく。
温かい美幸の口の中で、知彦は肉茎が蕩けるような悦楽を感じた。
つづく・・・
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『風媒花』・・・第十六章

『風 媒 花』
  第十六章

湯船の中で知彦はのぼせ上がった。
そんな童貞男の欲情を掻き毟るように、あろうことか美幸は知彦に並んで湯船に浸かった。

「いいお湯ね、久喜さん」

「・・は、はい」

知彦は、話しかけてくる美幸の正反対を向いて相槌を打った。
知彦の頭は忙しく回転した。

(一体どういうつもりなんだ)

知彦を子供扱いして、男として意識していないのか。
それとも一馬と言う夫がありながら、本気で挑発しようとしているのか。
波立つ湯面に、美幸の白い裸身が揺れて映っている。

(どうしよう)

懊悩する知彦へ、美幸はさらに困惑させる行為を仕掛けてきた。

「嫌ねえ・・久喜さんって見かけによらずエッチなのね」

驚いたことに美幸は、湯の中で猛り狂っている知彦の肉茎へ触れてきたのだ。

「あっ、そ、そんなこと・・」

知彦は身を捩って美幸の手を振り解こうとした。
ところが美幸は、ぎゅっと肉茎を強く握ると、そのまま上下にしごき始めた。

「うふふ、凄く大きい・・逞しいわ・・」

「や、止めて下さい・・ご主人がいるのに許されません」

言葉では抗う知彦だったが、初めて女性に肉茎を弄ばれる感触に、その手を払い除けることができなくなっていた。
すっかり知彦の淫欲を掌中にした美幸は、湯から上がって浴槽の縁に座ると、伸びやかな両脚を知彦に向けてM字に開いた。

「夫が言うように、ここを見たら百年の恋も冷めちゃうかな?」

淫らな微笑を口許に湛えた美幸は、小首を傾げて媚びるような瞳を知彦に向けた。
つづく・・・
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『風媒花』・・・第十五章

『風 媒 花』
  第十五章

カランと女湯から桶を転がす音がした。
檜造りの薄い板塀の向こうで、美幸があの白い裸身を晒している。
その音で純真な清子の面影は消え去り、妖艶な美幸の肢体が知彦の脳裏に広がった。

(男って生き物は・・)

知彦は苦笑いした。
白い肌を夢想しただけで、肉茎が力を漲らせ始めていたからだ。

突然浴室のガラス戸が開いた。
バスタオルを巻いた美幸が立っていた。

「ええっ!」

反射的に知彦は湯船に飛び込んだ。

「女湯に一人だと恐くて・・一緒に入っていいかしら?」

「いや、困ります・・目の遣り場が・・」

「構わないでしょう? だってさっきも鏡で私の体を見ていたくせに」

そう言うと、いきなり美幸はバスタオルを足元に落とした。

「ああっ・・いや、しかしご主人に・・」

おどおど言い訳しながらも、知彦は視線を美幸から逸らすことができなかった。
湯気よりも白い肌が浮かび上がった。
どちらかと言えば痩身であるのに、美しいフォルムを保った豊かな乳房が、水母のようにふるふると迫り出している。

そしてその頂には、薄い鳶色をした乳暈と乳首が小さく震えていた。
とろりと溶け出しそうな薄い脂肪の乗る下腹部には、男心を掻き乱す淡い翳りが、まだ見ぬ神秘を隠すように覆っていた。

「そんなにじろじろ見たら嫌」

美幸は桶を手にすると、しゃがんだまま背中を向けて、浴槽の湯を汲んで肩からかけ流した。
量感のある白桃のようなヒップが、知彦の眼前にむっちりと映し出された。
つづく・・・
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『風媒花』・・・第十四章

『風 媒 花』
  第十四章

大笑いした一馬が不意に知彦へ尋ねた。

「ところで・・久喜君の血液型は?」

「はあ、A型ですが、何か?」

「いやいや、済まんね。A型は真面目な人が多いからさ」

誤魔化すように一馬は言い訳すると、美幸や知彦に徳利を傾け、寂しい雪国の夜を懸命に盛り上げた。
二時間も飲んで騒いだ後、美幸がもう一度温泉に入りたいと言い出した。

「あなた、行きましょう」

「いや、飲み過ぎに温泉は毒だ。お前は俺を早死にさせるつもりか」

転がっている徳利の大半は一馬が空けていた。
一馬はすでに顔を真っ赤にして、目を眠たそうにとろんとさせている。

「でも一人じゃ恐いわ」

確かに宿泊客がいない旅館は、ひっそりと静まり返って不気味だ。

「しょうがないなあ・・そうだ久喜君、君もひとっ風呂浴びてきたらどうだ?」

「頼りにならない人ね。ねえ、久喜さん、一緒に行ってくれないかしら?」

「そ、それは構いませんが・・」

飲んだくれた一馬を残して、知彦と美幸は浴場がある二階へ、照明が消された廊下を浴衣姿で向かった。
大浴場は知彦の貸し切りだった。
酔いが醒めた知彦は、童心に返って広い浴槽を一頻り泳ぎ回った。

(清子・・)

窓の外に広がる暗闇へ目を遣った。
清子は明日東京へ帰る知彦を想い、長い手紙をしたためている頃だろう。

才媛の清子のことだ。
きっと来年の春は、東京のキャンパスで二人腕を組んで歩けるに違いない。
つづく・・・
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『風媒花』・・・第十三章

『風 媒 花』
  第十三章

知彦は美幸の顔を上目遣いに見た。
綺麗に整えられた柳眉と長い睫毛に彩られた瞳、仄かな色気を浮かべた口許が、成熟した女のフェロモンを漂わせている。
浴場で見たあの白い裸身が、また知彦の脳裏に蘇ってきた。

(・・清子)

慌てて知彦は、淫らな妄想を振り払うように、清子の純真な笑顔を想い浮かべた。
まだ青く酸っぱい果実にも似た清子は、初々しい清冽な美しさを煌かせていた。

だがそんな清子に愛おしさを覚えながらも、知彦は目の前に置かれた甘く熟した果実に、裏切りの蠱惑を抱かずにはいられなかった。
一馬は、何度も美幸に目配せしながら、根掘り葉掘り知彦のことを尋ねてきた。

「久喜君、恋人はいるの?」

「あ、いえ、まだ・・」

ふと清子を思い浮かべたが、まだ恋人と呼ぶのはおこがましいかと堪えた。

「じゃあ、まだ童貞かな?」

「えっ・・ええ・・まあ・・」

そう一馬に図星をつかれた知彦は、赤面してちらっと美幸の表情を窺った。

「あなたったら久喜さんに失礼よ」

美幸は一馬を叱りながらも、艶っぽい微笑を口唇の端に浮かべている。

「あはは、ごめんよ、久喜君。でも覚えておいた方がいい。女を聖なるものとして憧れられるのは、女を知らない童貞の間だけだぞ」

「・・はあ」

「一度女のアソコを見たら、百年の恋も一遍に冷めてしまうからな」

「あなた!」

一馬の膝を叩いた美幸は、身の置きどころがないようにもじもじと体をよじった。
つづく・・・
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『風媒花』・・・第十二章

『風 媒 花』
  第十二章

知彦が泊まる安部屋とは違い、新館にある館内夫婦の部屋は、豪華な和洋折衷の造りになっていた。
扉を開けると、正面にツインベッドが横に並び、その足元側には襖を隔てて畳敷きの和室が設えてある。

その和室で宴が始まった。
一馬が手を回したのか、知彦の夕餉の膳が部屋に届けられていた。

「お、いける口じゃないか」

「いえ、そんなには飲めません」

館内夫婦と知彦は、向かい合って膳を並べた。
山の幸を肴に、徳利の熱燗を差しつ差されつ、会話は和やかに進んだ。

だが知彦は、一馬と杯を重ねたものの、まだ美幸の顔を正面から見られずにいた。
浴場で見た白い肢体が、青年の羞恥心を必要以上に煽り立てていた。

「美幸も久喜君に注いでもらいなさい」

一馬が肘で美幸の腕を突いた。

「・・ええ」

浴衣姿の美幸は、恥ずかしそうにお猪口を知彦へ差し出した。
緩い浴衣の合わせから、真っ白な乳房の谷間が覗いている。
徳利を持つ知彦の手が震えた。

「東京の学生さんにお酌してもらうなんて、なかなか体験できることではないよ」

「そうね・・」

淡い桃色の口唇を杯につけると、美幸は艶かしく体を斜めに傾けて呑み干した。
つづく・・・
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『風媒花』・・・第十一章

『風 媒 花』
  第十一章

男は館内一馬と名乗った。
舘内家は仙台で古くから食料品卸を営む旧家で、一馬はその跡取りとして専務を務めていると言う。

妻の美幸は三十二歳で子供はまだいない。
二人は会津へ旅行で来ると、この鄙びた旅館を定宿にしているらしかった。

「ほう、久喜君は東京の大学生か。うん、若い頃は一人旅するのも大切な勉強だよね」

「え、ええ・・」

「どうだね、久喜君。今夜、この旅館の客は我々だけだ。お近づきの印に、これから僕等の部屋で一献酌み交わさないか?」

「でも折角夫婦水入らずのところを・・」

「関係ないよ。もう十年近く夫婦をやっているんだ。たまには若い人を交えて酒を飲むのも、夫婦の刺激になっていいものさ」

一馬は豪快に笑って知彦の肩を叩いた。
今夜知彦は、清子のことを想いながら一人静かに過ごそうと思っていた。

だが一馬の妻、美幸の白い肌が脳裏にちらついた。
知彦は一馬の誘いを拒み切れず、館内夫婦の部屋へ連れて行かれたのだった。
つづく・・・
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『風媒花』・・・第十章

『風 媒 花』
  第十章

知彦はぎょっとした。
白い湯気の中、湯船に二つの人影が見えたからだ。

大浴場は混浴が許されている。
ならば夫婦で仲良く温泉を楽しんでいるに違いない。
知彦は浴場を出ようかと思ったが、それも不自然過ぎるので、目を逸らすようにして洗い場に腰かけた。

(これは困ったな)

夫婦の閨に迷い込んだような気まずさに、知彦は湯船に浸からず、夫婦へ背を向けたまま体を洗い始めた。
そんな知彦を気遣ってくれたのか、小さな湯音を立てた一人の影が、知彦の背後を通って脱衣場へ向かった。

洗い場には正面に鏡が設えてある。
人影が鏡の中を横切るのを知彦は見逃さなかった。
まだ若い女だった。

立ちこめる湯気でぼやけてはいたが、豊かな乳房とむっちりと肉づきのいいヒップが、知彦の網膜へしっかりと焼きつけられた。
女が浴場を出た後、体を洗った知彦は湯船に浸かった。

「申し訳なかったね」

一人残った男が話しかけてきた。
三十代後半ぐらいだろうか、髪を五分刈りにした体格のいい男だった。

「あ、いえ、こちらこそ済みませんでした」

「君が謝ることはないよ。若い人には目の毒だったかな」

「・・は、はあ」

知彦は顔が上気させた。
こっそり女の体を盗み見たのを、男に見透かされていたようだったからだ。
つづく・・・
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『風媒花』・・・第九章

『風 媒 花』
  第九章

熱塩温泉は、会津盆地の北外れに位置する小さな温泉地である。
旅館は七軒で、湯治場然とした鄙びた建物が軒を連ねている。
予約した旅館に入ると、知彦が案内されたのは、八畳の小さな和室だった。

建てつけの悪い木の扉とささくれ立った畳、煙草のヤニで黄色くなった押入れの襖――食事つきで五千円の部屋である。
部屋の真ん中には炬燵が置かれ、ストーブが赤々と点っている。半纏を着た番頭らしい男が言った。

「夜は冷え込むから、そこにある褞袍を着て下さいよ」

「はい」

「ゆっくり温泉に入って温まってなあ・・今夜はお客さんとご夫婦が一組だけだから」

昨日までの雪と明日が月曜日とあって、旅館は閑古鳥が鳴いていると番頭は嘆いた。
早速知彦は、食事の準備ができるまで、浴衣の上に褞袍を羽織って浴場へ向かった。

熱塩温泉はその名の通り強食塩泉で、大浴場と女湯に分かれていた。
知彦が大浴場の暖簾をくぐると、すでに脱衣所の籠に衣類が入っていた。

(番頭さんが話していた夫婦のご主人が入っているのかな)

知彦は浴衣を脱いで浴場の扉を開いた。
かなり広い岩風呂である。
湯気が朦々と立ち籠め、正面のガラス窓には山奥の暗闇が広がっている。
つづく・・・
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『風媒花』・・・第八章

『風 媒 花』
  第八章

喜多方に着くと、和彦は熱塩へ行く日中線のホームへ向かった。
日中線は、喜多方から熱塩まで五駅しかないローカル線である。
日の中走らないのに日中線と言われるように、朝一便と夕二便しかダイヤがない。

ホームに着くと知彦は目を見張った。
そこには蒸気機関車のC11が、客車二輌を従えて白い蒸気を上げていた。

(C11が結びの神か・・)

知彦はカメラを取り出してシャッターを切った。
東京へ戻ったら、この蒸気機関車の写真を清子に送ってやろうとほくそ笑んだ。

ゆっくりと列車が動き出した。
旧式の木製客車に乗客は疎らだった。

青白い蛍光灯が、居眠りを始めた老婆をうら寂しく照らしている。
すでに日が落ちた雪の大地を、汽車はゆっくりと北へ向かう。
ポォーっと長く細い汽笛が、哀しみを湛えて山々に木霊した。

終着駅の熱塩は、時代こそ経っているがモダンな造りの駅舎だった。
C11に別れを告げて駅の外へ出ると、そこは人家も街路灯もない山奥の闇が支配していた。

(さて今夜の宿は・・)

遠く山裾に明かりが見えた。
知彦は人気のない真っ暗な山道を、積雪に注意しながらとぼとぼ歩き始めた。
つづく・・・
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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご挨拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。               
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
※ 小説を読まれる方へ・・・   更新記事は新着順に表示されますので、小説を最初からお読みになりたい方は、各カテゴリーから選択していただければ、第一章からお読みいただけます。
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