『風媒花』・・・第十四章
『風 媒 花』
第十四章
大笑いした一馬が不意に知彦へ尋ねた。
「ところで・・久喜君の血液型は?」
「はあ、A型ですが、何か?」
「いやいや、済まんね。A型は真面目な人が多いからさ」
誤魔化すように一馬は言い訳すると、美幸や知彦に徳利を傾け、寂しい雪国の夜を懸命に盛り上げた。
二時間も飲んで騒いだ後、美幸がもう一度温泉に入りたいと言い出した。
「あなた、行きましょう」
「いや、飲み過ぎに温泉は毒だ。お前は俺を早死にさせるつもりか」
転がっている徳利の大半は一馬が空けていた。
一馬はすでに顔を真っ赤にして、目を眠たそうにとろんとさせている。
「でも一人じゃ恐いわ」
確かに宿泊客がいない旅館は、ひっそりと静まり返って不気味だ。
「しょうがないなあ・・そうだ久喜君、君もひとっ風呂浴びてきたらどうだ?」
「頼りにならない人ね。ねえ、久喜さん、一緒に行ってくれないかしら?」
「そ、それは構いませんが・・」
飲んだくれた一馬を残して、知彦と美幸は浴場がある二階へ、照明が消された廊下を浴衣姿で向かった。
大浴場は知彦の貸し切りだった。
酔いが醒めた知彦は、童心に返って広い浴槽を一頻り泳ぎ回った。
(清子・・)
窓の外に広がる暗闇へ目を遣った。
清子は明日東京へ帰る知彦を想い、長い手紙をしたためている頃だろう。
才媛の清子のことだ。
きっと来年の春は、東京のキャンパスで二人腕を組んで歩けるに違いない。
つづく・・・
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大笑いした一馬が不意に知彦へ尋ねた。
「ところで・・久喜君の血液型は?」
「はあ、A型ですが、何か?」
「いやいや、済まんね。A型は真面目な人が多いからさ」
誤魔化すように一馬は言い訳すると、美幸や知彦に徳利を傾け、寂しい雪国の夜を懸命に盛り上げた。
二時間も飲んで騒いだ後、美幸がもう一度温泉に入りたいと言い出した。
「あなた、行きましょう」
「いや、飲み過ぎに温泉は毒だ。お前は俺を早死にさせるつもりか」
転がっている徳利の大半は一馬が空けていた。
一馬はすでに顔を真っ赤にして、目を眠たそうにとろんとさせている。
「でも一人じゃ恐いわ」
確かに宿泊客がいない旅館は、ひっそりと静まり返って不気味だ。
「しょうがないなあ・・そうだ久喜君、君もひとっ風呂浴びてきたらどうだ?」
「頼りにならない人ね。ねえ、久喜さん、一緒に行ってくれないかしら?」
「そ、それは構いませんが・・」
飲んだくれた一馬を残して、知彦と美幸は浴場がある二階へ、照明が消された廊下を浴衣姿で向かった。
大浴場は知彦の貸し切りだった。
酔いが醒めた知彦は、童心に返って広い浴槽を一頻り泳ぎ回った。
(清子・・)
窓の外に広がる暗闇へ目を遣った。
清子は明日東京へ帰る知彦を想い、長い手紙をしたためている頃だろう。
才媛の清子のことだ。
きっと来年の春は、東京のキャンパスで二人腕を組んで歩けるに違いない。
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