『風媒花』・・・第二章
『風 媒 花』
第二章
知彦は五十二歳、一部上場する製薬会社の法務部で執行役員を務めている。
四十九歳の清子は専業主婦である。
久喜家は、横浜市北部にある閑静な住宅街に居を構え、子供は香織の他に大学生になる長男がいる。
良妻賢母と素直で心優しい子供達に囲まれ、知彦は何の憂いもない幸せな家庭を営んできた。
普段は冷徹な知彦が動揺する様を見て、逆に清子の方がどっしり腹を据えようだった。
「法律専門の堅物も、娘のことになるとただの父親になっちゃうのね」
チクリと耳元で皮肉った清子は、知彦をリラックスさせようと、持ち前のお喋りを遺憾なく発揮し始めた。
「あなた、娘を取られると思ったらダメ。新しい家族が増えると考えればいいのよ」
「・・ああ、わかっている」
清子の話は尤もなのだが、娘の父親としてはそう簡単に納得はできない。
どこの馬の骨ともわからない男に、二十五年間愛しんできた娘を奪われるのだ。
「香織は私と違って男を見る目があるから」
「ん、それはどういうことだ?」
「冗談よ。でも一哉さんって・・あ、彼氏の名前ね・・今は東京の商社で働いているんだけど、実家は仙台で大きな会社を経営しているらしいの」
「ふん、どうせ二世のボンボンだろ」
「でも一人息子だから、香織は将来社長夫人になるかもしれないわ。玉の輿よ」
まるで自分のことのように、少女に戻った清子は夢見る瞳を潤ませた。
つづく・・・
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四十九歳の清子は専業主婦である。
久喜家は、横浜市北部にある閑静な住宅街に居を構え、子供は香織の他に大学生になる長男がいる。
良妻賢母と素直で心優しい子供達に囲まれ、知彦は何の憂いもない幸せな家庭を営んできた。
普段は冷徹な知彦が動揺する様を見て、逆に清子の方がどっしり腹を据えようだった。
「法律専門の堅物も、娘のことになるとただの父親になっちゃうのね」
チクリと耳元で皮肉った清子は、知彦をリラックスさせようと、持ち前のお喋りを遺憾なく発揮し始めた。
「あなた、娘を取られると思ったらダメ。新しい家族が増えると考えればいいのよ」
「・・ああ、わかっている」
清子の話は尤もなのだが、娘の父親としてはそう簡単に納得はできない。
どこの馬の骨ともわからない男に、二十五年間愛しんできた娘を奪われるのだ。
「香織は私と違って男を見る目があるから」
「ん、それはどういうことだ?」
「冗談よ。でも一哉さんって・・あ、彼氏の名前ね・・今は東京の商社で働いているんだけど、実家は仙台で大きな会社を経営しているらしいの」
「ふん、どうせ二世のボンボンだろ」
「でも一人息子だから、香織は将来社長夫人になるかもしれないわ。玉の輿よ」
まるで自分のことのように、少女に戻った清子は夢見る瞳を潤ませた。
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