『風媒花』・・・第八章
『風 媒 花』
第八章
喜多方に着くと、和彦は熱塩へ行く日中線のホームへ向かった。
日中線は、喜多方から熱塩まで五駅しかないローカル線である。
日の中走らないのに日中線と言われるように、朝一便と夕二便しかダイヤがない。
ホームに着くと知彦は目を見張った。
そこには蒸気機関車のC11が、客車二輌を従えて白い蒸気を上げていた。
(C11が結びの神か・・)
知彦はカメラを取り出してシャッターを切った。
東京へ戻ったら、この蒸気機関車の写真を清子に送ってやろうとほくそ笑んだ。
ゆっくりと列車が動き出した。
旧式の木製客車に乗客は疎らだった。
青白い蛍光灯が、居眠りを始めた老婆をうら寂しく照らしている。
すでに日が落ちた雪の大地を、汽車はゆっくりと北へ向かう。
ポォーっと長く細い汽笛が、哀しみを湛えて山々に木霊した。
終着駅の熱塩は、時代こそ経っているがモダンな造りの駅舎だった。
C11に別れを告げて駅の外へ出ると、そこは人家も街路灯もない山奥の闇が支配していた。
(さて今夜の宿は・・)
遠く山裾に明かりが見えた。
知彦は人気のない真っ暗な山道を、積雪に注意しながらとぼとぼ歩き始めた。
つづく・・・
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日中線は、喜多方から熱塩まで五駅しかないローカル線である。
日の中走らないのに日中線と言われるように、朝一便と夕二便しかダイヤがない。
ホームに着くと知彦は目を見張った。
そこには蒸気機関車のC11が、客車二輌を従えて白い蒸気を上げていた。
(C11が結びの神か・・)
知彦はカメラを取り出してシャッターを切った。
東京へ戻ったら、この蒸気機関車の写真を清子に送ってやろうとほくそ笑んだ。
ゆっくりと列車が動き出した。
旧式の木製客車に乗客は疎らだった。
青白い蛍光灯が、居眠りを始めた老婆をうら寂しく照らしている。
すでに日が落ちた雪の大地を、汽車はゆっくりと北へ向かう。
ポォーっと長く細い汽笛が、哀しみを湛えて山々に木霊した。
終着駅の熱塩は、時代こそ経っているがモダンな造りの駅舎だった。
C11に別れを告げて駅の外へ出ると、そこは人家も街路灯もない山奥の闇が支配していた。
(さて今夜の宿は・・)
遠く山裾に明かりが見えた。
知彦は人気のない真っ暗な山道を、積雪に注意しながらとぼとぼ歩き始めた。
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