『風媒花』・・・第九章
『風 媒 花』
第九章
熱塩温泉は、会津盆地の北外れに位置する小さな温泉地である。
旅館は七軒で、湯治場然とした鄙びた建物が軒を連ねている。
予約した旅館に入ると、知彦が案内されたのは、八畳の小さな和室だった。
建てつけの悪い木の扉とささくれ立った畳、煙草のヤニで黄色くなった押入れの襖――食事つきで五千円の部屋である。
部屋の真ん中には炬燵が置かれ、ストーブが赤々と点っている。半纏を着た番頭らしい男が言った。
「夜は冷え込むから、そこにある褞袍を着て下さいよ」
「はい」
「ゆっくり温泉に入って温まってなあ・・今夜はお客さんとご夫婦が一組だけだから」
昨日までの雪と明日が月曜日とあって、旅館は閑古鳥が鳴いていると番頭は嘆いた。
早速知彦は、食事の準備ができるまで、浴衣の上に褞袍を羽織って浴場へ向かった。
熱塩温泉はその名の通り強食塩泉で、大浴場と女湯に分かれていた。
知彦が大浴場の暖簾をくぐると、すでに脱衣所の籠に衣類が入っていた。
(番頭さんが話していた夫婦のご主人が入っているのかな)
知彦は浴衣を脱いで浴場の扉を開いた。
かなり広い岩風呂である。
湯気が朦々と立ち籠め、正面のガラス窓には山奥の暗闇が広がっている。
つづく・・・
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熱塩温泉は、会津盆地の北外れに位置する小さな温泉地である。
旅館は七軒で、湯治場然とした鄙びた建物が軒を連ねている。
予約した旅館に入ると、知彦が案内されたのは、八畳の小さな和室だった。
建てつけの悪い木の扉とささくれ立った畳、煙草のヤニで黄色くなった押入れの襖――食事つきで五千円の部屋である。
部屋の真ん中には炬燵が置かれ、ストーブが赤々と点っている。半纏を着た番頭らしい男が言った。
「夜は冷え込むから、そこにある褞袍を着て下さいよ」
「はい」
「ゆっくり温泉に入って温まってなあ・・今夜はお客さんとご夫婦が一組だけだから」
昨日までの雪と明日が月曜日とあって、旅館は閑古鳥が鳴いていると番頭は嘆いた。
早速知彦は、食事の準備ができるまで、浴衣の上に褞袍を羽織って浴場へ向かった。
熱塩温泉はその名の通り強食塩泉で、大浴場と女湯に分かれていた。
知彦が大浴場の暖簾をくぐると、すでに脱衣所の籠に衣類が入っていた。
(番頭さんが話していた夫婦のご主人が入っているのかな)
知彦は浴衣を脱いで浴場の扉を開いた。
かなり広い岩風呂である。
湯気が朦々と立ち籠め、正面のガラス窓には山奥の暗闇が広がっている。
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