『風媒花』・・・第十章
『風 媒 花』
第十章
知彦はぎょっとした。
白い湯気の中、湯船に二つの人影が見えたからだ。
大浴場は混浴が許されている。
ならば夫婦で仲良く温泉を楽しんでいるに違いない。
知彦は浴場を出ようかと思ったが、それも不自然過ぎるので、目を逸らすようにして洗い場に腰かけた。
(これは困ったな)
夫婦の閨に迷い込んだような気まずさに、知彦は湯船に浸からず、夫婦へ背を向けたまま体を洗い始めた。
そんな知彦を気遣ってくれたのか、小さな湯音を立てた一人の影が、知彦の背後を通って脱衣場へ向かった。
洗い場には正面に鏡が設えてある。
人影が鏡の中を横切るのを知彦は見逃さなかった。
まだ若い女だった。
立ちこめる湯気でぼやけてはいたが、豊かな乳房とむっちりと肉づきのいいヒップが、知彦の網膜へしっかりと焼きつけられた。
女が浴場を出た後、体を洗った知彦は湯船に浸かった。
「申し訳なかったね」
一人残った男が話しかけてきた。
三十代後半ぐらいだろうか、髪を五分刈りにした体格のいい男だった。
「あ、いえ、こちらこそ済みませんでした」
「君が謝ることはないよ。若い人には目の毒だったかな」
「・・は、はあ」
知彦は顔が上気させた。
こっそり女の体を盗み見たのを、男に見透かされていたようだったからだ。
つづく・・・
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知彦はぎょっとした。
白い湯気の中、湯船に二つの人影が見えたからだ。
大浴場は混浴が許されている。
ならば夫婦で仲良く温泉を楽しんでいるに違いない。
知彦は浴場を出ようかと思ったが、それも不自然過ぎるので、目を逸らすようにして洗い場に腰かけた。
(これは困ったな)
夫婦の閨に迷い込んだような気まずさに、知彦は湯船に浸からず、夫婦へ背を向けたまま体を洗い始めた。
そんな知彦を気遣ってくれたのか、小さな湯音を立てた一人の影が、知彦の背後を通って脱衣場へ向かった。
洗い場には正面に鏡が設えてある。
人影が鏡の中を横切るのを知彦は見逃さなかった。
まだ若い女だった。
立ちこめる湯気でぼやけてはいたが、豊かな乳房とむっちりと肉づきのいいヒップが、知彦の網膜へしっかりと焼きつけられた。
女が浴場を出た後、体を洗った知彦は湯船に浸かった。
「申し訳なかったね」
一人残った男が話しかけてきた。
三十代後半ぐらいだろうか、髪を五分刈りにした体格のいい男だった。
「あ、いえ、こちらこそ済みませんでした」
「君が謝ることはないよ。若い人には目の毒だったかな」
「・・は、はあ」
知彦は顔が上気させた。
こっそり女の体を盗み見たのを、男に見透かされていたようだったからだ。
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