『風媒花』・・・第六章
『風 媒 花』
第六章
朝八時、蔵を改装した喫茶店に清子がやって来た。
清子との出会いは、知彦が友人と猪苗代湖を旅した半年前の夏に遡る。
その湖畔に、清子も友達と湖水浴に来ていたのだ。
大学生と高校生は、自然と親しくなって連絡先を教え合った。
すると東京へ戻った知彦へ、清子から文通したいと手紙が届いたのだった。
初めて会った時より大人びていたが、清子はまだ十七歳のあどけない女子高生である。
「お兄ちゃん、疲れたでしょう?」
「うん・・なかなか夜行急行じゃ眠れないからね」
清子は手紙の中でも知彦をお兄ちゃんと呼ぶ。
その呼称に違わず、手紙のやり取りをしていても、幼い清子に特別な恋愛感情など感じられなかった。
単に知彦は、東京の大学生として憧れられているだけだった。
清子は知彦を上目遣いに見ながら、クスクスと愛らしく微笑んだ。
「でも、兄ちゃんって変わっている」
ポニーテールの黒髪に、くりくりと無邪気な瞳がよく動く。
雪国生まれの透き通った肌に、ルージュに汚されていない口唇が清楚に見えた。
白いセーターの眩しさに劣らないほど、清子は無垢な輝きを放っていた。
「どうして?」
「だって、汽車を乗りにわざわざ会津まで来るなんて・・可笑しいわ」
知彦は今回会津へ訪れる目的を、現役で走る蒸気機関車に乗るためと伝えていた。
取り立てて鉄道マニアではないが、消えゆく蒸気機関車に乗ってみたいとは思っていた。
だがそれはあくまで表向きの理由で、清子と半年ぶりに会いたかったのが知彦の本心だった。
(やれやれ・・まだ子供だな)
知彦は落胆しながらも、清子がずっと今のままでいて欲しいとも願った。
つづく・・・
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清子との出会いは、知彦が友人と猪苗代湖を旅した半年前の夏に遡る。
その湖畔に、清子も友達と湖水浴に来ていたのだ。
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すると東京へ戻った知彦へ、清子から文通したいと手紙が届いたのだった。
初めて会った時より大人びていたが、清子はまだ十七歳のあどけない女子高生である。
「お兄ちゃん、疲れたでしょう?」
「うん・・なかなか夜行急行じゃ眠れないからね」
清子は手紙の中でも知彦をお兄ちゃんと呼ぶ。
その呼称に違わず、手紙のやり取りをしていても、幼い清子に特別な恋愛感情など感じられなかった。
単に知彦は、東京の大学生として憧れられているだけだった。
清子は知彦を上目遣いに見ながら、クスクスと愛らしく微笑んだ。
「でも、兄ちゃんって変わっている」
ポニーテールの黒髪に、くりくりと無邪気な瞳がよく動く。
雪国生まれの透き通った肌に、ルージュに汚されていない口唇が清楚に見えた。
白いセーターの眩しさに劣らないほど、清子は無垢な輝きを放っていた。
「どうして?」
「だって、汽車を乗りにわざわざ会津まで来るなんて・・可笑しいわ」
知彦は今回会津へ訪れる目的を、現役で走る蒸気機関車に乗るためと伝えていた。
取り立てて鉄道マニアではないが、消えゆく蒸気機関車に乗ってみたいとは思っていた。
だがそれはあくまで表向きの理由で、清子と半年ぶりに会いたかったのが知彦の本心だった。
(やれやれ・・まだ子供だな)
知彦は落胆しながらも、清子がずっと今のままでいて欲しいとも願った。
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