『風媒花』・・・最終章
『風 媒 花』
最終章
一馬と一哉、三十二年前、一人息子、仙台で会社経営――先ほど感じた胸騒ぎが、次第に現実味を帯びて知彦に覆い被さってきた。
意を決した知彦は清子に尋ねた。
「か、一哉君の苗字を知っているか?」
「ええ、確か館内って言っていたわ」
知彦は顔から血の気が引くのがわかった。
(嘘だ・・あり得ないことだ・・あってはならない偶然だ・・)
風で運ばれた遺伝子が、逆風に乗って再び戻って来たとしたら、因果応報の業火で知彦は身を炙られなければならない。
知彦は狂わんばかりに懊悩した。
兄妹婚など許されるはずがない。
だが三十二年前の出来事を公にすれば、生木を裂かれた香織は、知彦を信じてきた清子は、幸せな久喜家は、火達
磨となって修羅場へと転落するに違いない。
知彦のグラスを持つ手が震えた。
(落ち着け。まだ自分の子供と決まったわけじゃない)
美幸が産んだ子が男だとは限らない。
顔が似ていても他人の空似と言う故事もある。
館内姓など日本にいくらでも住んでいる。
仙台にだって館内と名乗る旧家は腐るほどあるはずだ。
清子が心配そうに知彦の顔を覗き込んだ。
「どうしたの? あなた、顔が真っ青よ」
「・・あ、ああ」
知彦が額の汗を拭った時、突然個室の扉が開いて香織が現れた。
「遅くなってごめんなさい。なかなか駐車場が見つからなかったの」
息を切らした香織の背後に、黒い影が控えているのを知彦は見た。
「いいから早く入りなさい」
清子が香織を個室に招き入れた。
「えへへ・・その前に紹介します。私がおつきあいしている館内一哉さんです」
その黒い影がぬっと前に立ちはだかった。
知彦は恐る恐るその顔を見上げた。
――閉幕――
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意を決した知彦は清子に尋ねた。
「か、一哉君の苗字を知っているか?」
「ええ、確か館内って言っていたわ」
知彦は顔から血の気が引くのがわかった。
(嘘だ・・あり得ないことだ・・あってはならない偶然だ・・)
風で運ばれた遺伝子が、逆風に乗って再び戻って来たとしたら、因果応報の業火で知彦は身を炙られなければならない。
知彦は狂わんばかりに懊悩した。
兄妹婚など許されるはずがない。
だが三十二年前の出来事を公にすれば、生木を裂かれた香織は、知彦を信じてきた清子は、幸せな久喜家は、火達
磨となって修羅場へと転落するに違いない。
知彦のグラスを持つ手が震えた。
(落ち着け。まだ自分の子供と決まったわけじゃない)
美幸が産んだ子が男だとは限らない。
顔が似ていても他人の空似と言う故事もある。
館内姓など日本にいくらでも住んでいる。
仙台にだって館内と名乗る旧家は腐るほどあるはずだ。
清子が心配そうに知彦の顔を覗き込んだ。
「どうしたの? あなた、顔が真っ青よ」
「・・あ、ああ」
知彦が額の汗を拭った時、突然個室の扉が開いて香織が現れた。
「遅くなってごめんなさい。なかなか駐車場が見つからなかったの」
息を切らした香織の背後に、黒い影が控えているのを知彦は見た。
「いいから早く入りなさい」
清子が香織を個室に招き入れた。
「えへへ・・その前に紹介します。私がおつきあいしている館内一哉さんです」
その黒い影がぬっと前に立ちはだかった。
知彦は恐る恐るその顔を見上げた。
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