『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(十八)
『人外境の花嫁』
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七.迷宮の案内者 (十八)
たった七文字の謎に、降矢木は頭脳をフル回転させていた。
「クマミノウタニ」
尋常ならざる降矢木に眉を顰めた金治は、テーブルに置かれた封書を手に取った。
「な、何?」
手を震わせながら、金治は封書に書かれた差出人の名前を凝視した。
「足立・・寛三だと?」
「ご存じなんですか?」
降矢木は掻い摘んで事情を話した。
麻美の拉致。
宅急便を装った謎の集団。
サンカ文字の手紙。
「その手紙に、クマミノウタニと・・?」
「ええ、これは麻美の母親が受け取った手紙なのですが・・」
金治はぽつりと呟いた。
「球磨の・・箕面谷かもしれんな」
「え、地名なのですか?」
「もし球磨地方の箕面谷ならば、足立寛三という差出人も合点がいくな」
驚く降矢木に、金治はまだ下積み時代だった頃の話を始めた。
愚連隊、香具師時代を通じて、金治は寛三を兄貴分と慕っていた。
そしてその弟分だった川嶋剛志とは三下時代に同じ釜の飯を食った仲間だった。
戦後十年ほど経った時、九州は西山親分の縄張りから戻った寛三は、稼業も疎かになって横浜から姿を消した。
妻の浮気が原因だと仲間は噂した。
旅稼業が多い香具師の生活に堪えられなかった寛三の妻は、若い男と懇ろになり、娘を連れて家を飛び出してしまったのだ。
だが金治は、妻の浮気が発覚する以前、九州から戻った時から寛三の様子がおかしいのに気づいていた。
金治は川嶋を問い質した。
すると熊本人吉の山村で、二人が不思議な少女に出逢ったことを話し出した。
「川嶋よ、ミソソクリの人生も素晴らしいかもしれねえな」
横浜へ戻ってからも、寛三は少女の存在が忘れられないようだったと言う。
それに妻の浮気も重なってか、間もなく寛三は横浜から突然いなくなってしまったのだ。
つづく…
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「クマミノウタニ」
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「な、何?」
手を震わせながら、金治は封書に書かれた差出人の名前を凝視した。
「足立・・寛三だと?」
「ご存じなんですか?」
降矢木は掻い摘んで事情を話した。
麻美の拉致。
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サンカ文字の手紙。
「その手紙に、クマミノウタニと・・?」
「ええ、これは麻美の母親が受け取った手紙なのですが・・」
金治はぽつりと呟いた。
「球磨の・・箕面谷かもしれんな」
「え、地名なのですか?」
「もし球磨地方の箕面谷ならば、足立寛三という差出人も合点がいくな」
驚く降矢木に、金治はまだ下積み時代だった頃の話を始めた。
愚連隊、香具師時代を通じて、金治は寛三を兄貴分と慕っていた。
そしてその弟分だった川嶋剛志とは三下時代に同じ釜の飯を食った仲間だった。
戦後十年ほど経った時、九州は西山親分の縄張りから戻った寛三は、稼業も疎かになって横浜から姿を消した。
妻の浮気が原因だと仲間は噂した。
旅稼業が多い香具師の生活に堪えられなかった寛三の妻は、若い男と懇ろになり、娘を連れて家を飛び出してしまったのだ。
だが金治は、妻の浮気が発覚する以前、九州から戻った時から寛三の様子がおかしいのに気づいていた。
金治は川嶋を問い質した。
すると熊本人吉の山村で、二人が不思議な少女に出逢ったことを話し出した。
「川嶋よ、ミソソクリの人生も素晴らしいかもしれねえな」
横浜へ戻ってからも、寛三は少女の存在が忘れられないようだったと言う。
それに妻の浮気も重なってか、間もなく寛三は横浜から突然いなくなってしまったのだ。
つづく…
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