『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(六)
『人外境の花嫁』
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七.迷宮の案内者 (六)
今しがたまで雲ひとつなかった空が俄かに掻き曇り、大粒の雨が激しく降り出した。
月絵は持っていたバッグを頭に載せて、慌てて降矢木ファーマシーへ駆け込んだ。
「わあ、酷い夕立ですね」
「いや、月絵ちゃん。昔の夕立ってのはもっと優しかったよ。ざっと雨が降り出すと、夏の陽射しで熱くなった土の匂いがしてね。それに比べると、今のゲリラ豪雨とやらは風情の欠片もない」
秋月はハンカチで頭を拭きながら、苦々しい表情でガラス戸に打ちつける雨を睨んだ。
不意に背後で声がした。
「こりゃ、御三人揃ってお帰りなさい」
官能文芸誌の編集者、畠山健一だった。
眼鏡の水滴を拭いながら、降矢木は不機嫌そうな顔で畠山に言った。
「原稿はちゃんと昨日送信しておいたぞ」
「いえいえ、別に原稿を取りに来たわけではありません。ちょっと近くで用があったついでに・・」
頭を掻きながら、畠山はちらっと月絵を横目で見た。
肩まで伸びた髪が濡れて光沢を帯び、白地のTシャツが雨に濡れてブラジャーが透けている。
ぴったりと肌に貼りついたシャツの生地が妙に艶めかしい。
「あっ、畠山さん、何をジロジロ見ているんですか?」
畠山の粘っこい視線に気づいた月絵が大声を上げた。
「い、いや・・その・・」
「おい、編集野郎、まだ月絵ちゃんにちょっかい出そうっていうのかい。女心がわからねえ野郎だなあ」
秋月は畠山を怒鳴りつけたが、実はその文句の矛先は降矢木へ向いていた。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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「わあ、酷い夕立ですね」
「いや、月絵ちゃん。昔の夕立ってのはもっと優しかったよ。ざっと雨が降り出すと、夏の陽射しで熱くなった土の匂いがしてね。それに比べると、今のゲリラ豪雨とやらは風情の欠片もない」
秋月はハンカチで頭を拭きながら、苦々しい表情でガラス戸に打ちつける雨を睨んだ。
不意に背後で声がした。
「こりゃ、御三人揃ってお帰りなさい」
官能文芸誌の編集者、畠山健一だった。
眼鏡の水滴を拭いながら、降矢木は不機嫌そうな顔で畠山に言った。
「原稿はちゃんと昨日送信しておいたぞ」
「いえいえ、別に原稿を取りに来たわけではありません。ちょっと近くで用があったついでに・・」
頭を掻きながら、畠山はちらっと月絵を横目で見た。
肩まで伸びた髪が濡れて光沢を帯び、白地のTシャツが雨に濡れてブラジャーが透けている。
ぴったりと肌に貼りついたシャツの生地が妙に艶めかしい。
「あっ、畠山さん、何をジロジロ見ているんですか?」
畠山の粘っこい視線に気づいた月絵が大声を上げた。
「い、いや・・その・・」
「おい、編集野郎、まだ月絵ちゃんにちょっかい出そうっていうのかい。女心がわからねえ野郎だなあ」
秋月は畠山を怒鳴りつけたが、実はその文句の矛先は降矢木へ向いていた。
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