『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(五)
『人外境の花嫁』
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七.迷宮の案内者 (五)
秋月は首を傾げた。
「しかし降矢木君、色恋の恨みでなければ、麻美が何か重大な秘密を隠していたと?」
「それはわかりません。この部屋に何か手掛かりでも残されていればいいんですが・・」
そう言うと、降矢木は玄関から続くリビングへと足を踏み入れた。
リビングは荒らされた痕もなく、麻美の日常生活が、連れ去られた時間のまま止まっていた。
後ろ手を組んだ降矢木は、注意深く部屋の隅々まで調べ始めた。
「おや?」
降矢木はテーブルに置かれた古い封筒を取り上げた。
「・・・・」
封筒に入った手紙に目を遣った降矢木は、凍りついたようにその文字に見入った。
月絵が降矢木の異変に気づいた。
「先生、何か見つけたんですか?」
すると降矢木は無言のまま、茶色に日焼けした便箋を月絵に渡した。
月絵は首を傾げた。
「子供の落書きみたいですね。あっ、そう言えばこの間、麻美さんが店へ来た時、暗号みたいな手紙を解読して欲しいって・・」
秋月も覗き込んだ。
「う~ん、漢字の成り立ちみたいな絵文字じゃないかな」
皆目見当もつかない秋月は、腕組みする降矢木に便箋を戻した。
降矢木はぽつりと呟いた。
「これは『上記』の象形文字に似ている」
「ウエツフミ?」
「ああ、一二二三年、源頼朝の庶子で、豊後の国の太守だった大友能直が編纂した歴史書だよ」
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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「しかし降矢木君、色恋の恨みでなければ、麻美が何か重大な秘密を隠していたと?」
「それはわかりません。この部屋に何か手掛かりでも残されていればいいんですが・・」
そう言うと、降矢木は玄関から続くリビングへと足を踏み入れた。
リビングは荒らされた痕もなく、麻美の日常生活が、連れ去られた時間のまま止まっていた。
後ろ手を組んだ降矢木は、注意深く部屋の隅々まで調べ始めた。
「おや?」
降矢木はテーブルに置かれた古い封筒を取り上げた。
「・・・・」
封筒に入った手紙に目を遣った降矢木は、凍りついたようにその文字に見入った。
月絵が降矢木の異変に気づいた。
「先生、何か見つけたんですか?」
すると降矢木は無言のまま、茶色に日焼けした便箋を月絵に渡した。
月絵は首を傾げた。
「子供の落書きみたいですね。あっ、そう言えばこの間、麻美さんが店へ来た時、暗号みたいな手紙を解読して欲しいって・・」
秋月も覗き込んだ。
「う~ん、漢字の成り立ちみたいな絵文字じゃないかな」
皆目見当もつかない秋月は、腕組みする降矢木に便箋を戻した。
降矢木はぽつりと呟いた。
「これは『上記』の象形文字に似ている」
「ウエツフミ?」
「ああ、一二二三年、源頼朝の庶子で、豊後の国の太守だった大友能直が編纂した歴史書だよ」
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