『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(十四)
『人外境の花嫁』
FC2 Blog Ranking
七.迷宮の案内者 (十四)
再び降矢木は三角寛について言及する。
「月絵君が言う通り、サンカはマタギや木地師と同様に、山奥で平和に暮らす職能集団だった。ところが三角寛と言う男が、彼等を破天荒な異民族に祀り上げてしまったのだよ」
説教強盗で名を上げた新聞記者三角寛は、警察や文壇に取り入り、サンカ研究とサンカ小説の第一人者にのし上がった。
昭和十年あたりからサンカ小説を発表し始めた三角は、大衆小説作家として一躍脚光を浴びることになる。
小説の中でサンカは、山々を縦横無尽に歩行できる超人的な能力を持ち、隠語を操って世間を謀り、任侠さながらに親分子分の掟を守る漂泊民として描かれる。
突如身近に現れた異民族に人々は熱狂した。
それは鬱屈した時代の英雄感覚だったのかもしれない。
だがそこからサンカは一人歩きする。
三角は『山窩族の社会の研究』という論文で、東洋大学から文学博士の学位を取る。
それは、神秘的な生活様式から、全国的な統制組織の存在と規律、古代天皇まで遡る始祖古伝承など、平地民とは異民族であるサンカの姿を浮き彫りにしていた。
月絵は腕組みした。
「大学から学位を貰ったなら、三角寛のサンカ研究は本当じゃないんですか?」
「金で買ったとかいろんな噂がある。今となっては何の証拠もないけどね。大体サンカについての実証など何もないのだ。三角の根拠は、全てサンカの誰某から聞いたと言う伝聞に過ぎない」
「インチキなんですか?」
「わからない。ただ推論するならば、三角が異常な妄想力を具現化する努力をしたのは事実だろう」
と語った降矢木は、荒い画素の白黒写真を取り出した。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
にほんブログ村
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
FC2 Blog Ranking
七.迷宮の案内者 (十四)
再び降矢木は三角寛について言及する。
「月絵君が言う通り、サンカはマタギや木地師と同様に、山奥で平和に暮らす職能集団だった。ところが三角寛と言う男が、彼等を破天荒な異民族に祀り上げてしまったのだよ」
説教強盗で名を上げた新聞記者三角寛は、警察や文壇に取り入り、サンカ研究とサンカ小説の第一人者にのし上がった。
昭和十年あたりからサンカ小説を発表し始めた三角は、大衆小説作家として一躍脚光を浴びることになる。
小説の中でサンカは、山々を縦横無尽に歩行できる超人的な能力を持ち、隠語を操って世間を謀り、任侠さながらに親分子分の掟を守る漂泊民として描かれる。
突如身近に現れた異民族に人々は熱狂した。
それは鬱屈した時代の英雄感覚だったのかもしれない。
だがそこからサンカは一人歩きする。
三角は『山窩族の社会の研究』という論文で、東洋大学から文学博士の学位を取る。
それは、神秘的な生活様式から、全国的な統制組織の存在と規律、古代天皇まで遡る始祖古伝承など、平地民とは異民族であるサンカの姿を浮き彫りにしていた。
月絵は腕組みした。
「大学から学位を貰ったなら、三角寛のサンカ研究は本当じゃないんですか?」
「金で買ったとかいろんな噂がある。今となっては何の証拠もないけどね。大体サンカについての実証など何もないのだ。三角の根拠は、全てサンカの誰某から聞いたと言う伝聞に過ぎない」
「インチキなんですか?」
「わからない。ただ推論するならば、三角が異常な妄想力を具現化する努力をしたのは事実だろう」
と語った降矢木は、荒い画素の白黒写真を取り出した。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
にほんブログ村
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。