『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(二十二)
『人外境の花嫁』
FC2 Blog Ranking
七.迷宮の案内者 (二十二)
降矢木も僅かに寂しげな表情を見せた。
「日本から闇が無くなったということだ」
「闇ですか?」
「そう。文明の進歩は、この国から人外の異界を干上がらせてしまった。平安時代、都の外は鬼が棲む闇の領域だった。そこは人間の知性が届かぬ異界であり、恐怖と畏敬が常に隣り合わせで存在していた」
「ええ、確かに現代は情報手段の発達で、日本全体が同じ価値観を共有していますね」
「文明がもたらすものは画一化だ。多様性は自律的に排除され、他人と同じであることが無意識に強制される」
降矢木の言葉は厳しい。
文明に刷り込まれた価値観は、本来自由で多様化すべき人間を一つの型に嵌め込んでしまうのである。
「異質なものは世の中に潰される。サンカの漂泊生活然り、水上生活者も、乞食という職業もね」
「・・他人と同じであることが、幸せの必要最低条件だと・・」
「そうだ。だからサンカは戸籍もなく漂泊していられなくなった。溶け込みと言って、定住することを選んだのだよ。漂泊生活で、学校へも通わない子供の将来が、この国では許されないと悟ったのかもしれないね」
むろんプラスチック製品に押されて、竹細工の箕が売れなくなったこともあるが、世相が異界人を許すゆとりがなくなったのかもしれない。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
にほんブログ村
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
FC2 Blog Ranking
七.迷宮の案内者 (二十二)
降矢木も僅かに寂しげな表情を見せた。
「日本から闇が無くなったということだ」
「闇ですか?」
「そう。文明の進歩は、この国から人外の異界を干上がらせてしまった。平安時代、都の外は鬼が棲む闇の領域だった。そこは人間の知性が届かぬ異界であり、恐怖と畏敬が常に隣り合わせで存在していた」
「ええ、確かに現代は情報手段の発達で、日本全体が同じ価値観を共有していますね」
「文明がもたらすものは画一化だ。多様性は自律的に排除され、他人と同じであることが無意識に強制される」
降矢木の言葉は厳しい。
文明に刷り込まれた価値観は、本来自由で多様化すべき人間を一つの型に嵌め込んでしまうのである。
「異質なものは世の中に潰される。サンカの漂泊生活然り、水上生活者も、乞食という職業もね」
「・・他人と同じであることが、幸せの必要最低条件だと・・」
「そうだ。だからサンカは戸籍もなく漂泊していられなくなった。溶け込みと言って、定住することを選んだのだよ。漂泊生活で、学校へも通わない子供の将来が、この国では許されないと悟ったのかもしれないね」
むろんプラスチック製品に押されて、竹細工の箕が売れなくなったこともあるが、世相が異界人を許すゆとりがなくなったのかもしれない。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
にほんブログ村
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。