『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(二十三)
『人外境の花嫁』
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七.迷宮の案内者 (二十三)
一同無言で顔を見合わせた。
そこで畠山がぽつりと呟くように言った。
「これは密かに教えてもらった情報ですが、天神会は現在、後継者選びで分裂の危機にあるそうですよ」
「何っ、詳しく話したまえ」
身を乗り出した降矢木に、思わず畠山は吃驚して上半身を反らせた。
乱裁道宗は今年八十一歳になる。
ところが教団が急に拡大したため、次代乱裁を名乗る後継者が決まっていないと言う。
現在、四天王と呼ばれる教団の実力者は、東京、名古屋、大阪、福岡の主要支部を管轄している。
それぞれ四十代の若さで、もし後継指名されなければ、天神会を割って分派独立する可能性が強いらしい。
「だから乱裁に後継者となる子供でもいればよかったのでしょうが・・」
そう言いかけて、畠山ははっと掌で口を押さえた。
降矢木はにやっと笑った。
「そう、もし乱裁道宗が足立寛三であれば、麻美さんは彼の近親者、否、娘に当たる可能性も否定はできない」
だが金治が横から口を挟んだ。
「だが寛三兄貴には、香具師の頃に別れた妻と娘がおった」
「天神会が何かサンカと関連があるならば、その後継者はサンカの血を引く者である方がいい。畠山君、そのホームページに乱裁道宗の写真は掲示されていないのかね?」
「あ、あります」
畠山はノートバソコンの画面を金治の目の前で開いた。
乱裁道宗。
仙人のような白髪白髭の老人。
目を凝らした金治の表情が強張った。
「・・寛三兄貴だ。年は取っているが、若い頃の兄貴の面影が残っている」
絞り出すような金治の言葉に、周囲の四人はしばらく誰もが口を噤んでいた。
つづく…
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一同無言で顔を見合わせた。
そこで畠山がぽつりと呟くように言った。
「これは密かに教えてもらった情報ですが、天神会は現在、後継者選びで分裂の危機にあるそうですよ」
「何っ、詳しく話したまえ」
身を乗り出した降矢木に、思わず畠山は吃驚して上半身を反らせた。
乱裁道宗は今年八十一歳になる。
ところが教団が急に拡大したため、次代乱裁を名乗る後継者が決まっていないと言う。
現在、四天王と呼ばれる教団の実力者は、東京、名古屋、大阪、福岡の主要支部を管轄している。
それぞれ四十代の若さで、もし後継指名されなければ、天神会を割って分派独立する可能性が強いらしい。
「だから乱裁に後継者となる子供でもいればよかったのでしょうが・・」
そう言いかけて、畠山ははっと掌で口を押さえた。
降矢木はにやっと笑った。
「そう、もし乱裁道宗が足立寛三であれば、麻美さんは彼の近親者、否、娘に当たる可能性も否定はできない」
だが金治が横から口を挟んだ。
「だが寛三兄貴には、香具師の頃に別れた妻と娘がおった」
「天神会が何かサンカと関連があるならば、その後継者はサンカの血を引く者である方がいい。畠山君、そのホームページに乱裁道宗の写真は掲示されていないのかね?」
「あ、あります」
畠山はノートバソコンの画面を金治の目の前で開いた。
乱裁道宗。
仙人のような白髪白髭の老人。
目を凝らした金治の表情が強張った。
「・・寛三兄貴だ。年は取っているが、若い頃の兄貴の面影が残っている」
絞り出すような金治の言葉に、周囲の四人はしばらく誰もが口を噤んでいた。
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