『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(十六)
『人外境の花嫁』
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七.迷宮の案内者 (十六)
恐る恐る畠山が切り出した。
「・・ところで先生、麻美さんのアパートにあった手紙には、何と書かれているんでしょうか?」
「ん・・そうか、すっかり忘れていた」
降矢木は吉本新喜劇ばりに周囲をコケさせると、田中勝也氏の『サンカ研究』を再び手にした。
そして先ほど見せた比較表を基に、麻美の部屋から持ってきた手紙を解読し始めた。
「ク、マ、ミ、ノ、ウ、タ、ニ・・?」
「えっ? くまみの・・うたに・・?」
月絵は読み上げられた仮名の羅列を、文章にすべく頭の中でいろいろな変換を試みた。
降矢木も首を捻った。
「はて、これだけでは文章としては成り立たないな。しかしクマミノウタニだけで、読む人は内容を理解できたに違いない」
改めて降矢木は封筒の裏表をしげしげと見比べた。
昭和四十八年の消印。
大阪市西成区天下茶屋。
藤野タエ宛
差出人、足立寛三。
秋月が言う。
「確か麻美は母親に宛てられた手紙だと言っていたな」
「麻美さんの母親は、サンカ文字が読めたと言うことです。しかも足立寛三なる人物と、クマミノウタニの隠語だけで意思疎通できる間柄だった」
麻美さんはサンカの末裔だったのか、と降矢木は目を閉じて小さく呟いた。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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「・・ところで先生、麻美さんのアパートにあった手紙には、何と書かれているんでしょうか?」
「ん・・そうか、すっかり忘れていた」
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そして先ほど見せた比較表を基に、麻美の部屋から持ってきた手紙を解読し始めた。
「ク、マ、ミ、ノ、ウ、タ、ニ・・?」
「えっ? くまみの・・うたに・・?」
月絵は読み上げられた仮名の羅列を、文章にすべく頭の中でいろいろな変換を試みた。
降矢木も首を捻った。
「はて、これだけでは文章としては成り立たないな。しかしクマミノウタニだけで、読む人は内容を理解できたに違いない」
改めて降矢木は封筒の裏表をしげしげと見比べた。
昭和四十八年の消印。
大阪市西成区天下茶屋。
藤野タエ宛
差出人、足立寛三。
秋月が言う。
「確か麻美は母親に宛てられた手紙だと言っていたな」
「麻美さんの母親は、サンカ文字が読めたと言うことです。しかも足立寛三なる人物と、クマミノウタニの隠語だけで意思疎通できる間柄だった」
麻美さんはサンカの末裔だったのか、と降矢木は目を閉じて小さく呟いた。
つづく…
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