『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(十九)
『人外境の花嫁』
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七.迷宮の案内者 (十九)
降矢木が金治に質問した。
「ミソククリの少女と出逢った場所が、球磨郡箕面谷だったのですね?」
「確かそう川嶋が言っておったわ。箕面谷には、かつては一木集落と呼ばれた山深い部落があった。そこは西山親分の故郷で、縁日に現れた少女に寛三兄貴は惚れてしまったようだったと」
「だとすれば、横浜から失踪した寛三さんが箕面谷のサンカの一群に加わった可能性も考えられますね」
長年修羅場を潜って来た金治も、余りの偶然と歴史の巡り合わせにしばし呆然としていた。
降矢木が自分の頭を整理した。
「昭和三十年頃、吉水さんの兄貴分にあたる足立寛三が、横浜での香具師を辞めて失踪した。その後どうなったかわからないが、昭和四十八年、麻美さんの母親と思われる大阪在住の女性に手紙を送った。それはサンカ文字で球磨郡箕面谷と書かれており、足立寛三が興味を抱いたサンカの少女がいた場所と同定できる」
月絵が反論した。
「でもパパが知っている足立寛三さんが、麻美さんの母親と知り合いであったとしても、それが今回の誘拐事件とどう関連してくるんですか?」
「ふん、むろん関係はないさ」
「だったらサンカ云々より、麻美さんの交友関係にトラブルがあったと考えるのが正しいのではないですか?」
「・・・・」
沈黙する降矢木を尻目に、畠山が鞄から取り出したノートパソコンを開いた。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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「だとすれば、横浜から失踪した寛三さんが箕面谷のサンカの一群に加わった可能性も考えられますね」
長年修羅場を潜って来た金治も、余りの偶然と歴史の巡り合わせにしばし呆然としていた。
降矢木が自分の頭を整理した。
「昭和三十年頃、吉水さんの兄貴分にあたる足立寛三が、横浜での香具師を辞めて失踪した。その後どうなったかわからないが、昭和四十八年、麻美さんの母親と思われる大阪在住の女性に手紙を送った。それはサンカ文字で球磨郡箕面谷と書かれており、足立寛三が興味を抱いたサンカの少女がいた場所と同定できる」
月絵が反論した。
「でもパパが知っている足立寛三さんが、麻美さんの母親と知り合いであったとしても、それが今回の誘拐事件とどう関連してくるんですか?」
「ふん、むろん関係はないさ」
「だったらサンカ云々より、麻美さんの交友関係にトラブルがあったと考えるのが正しいのではないですか?」
「・・・・」
沈黙する降矢木を尻目に、畠山が鞄から取り出したノートパソコンを開いた。
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