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『再びの夏』 第二十章

『再びの夏』(二十)
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(二十)

縄めを解かれた由紀子は、四年間の鬱積した欲情を邦彦にぶつけた。
男として成長した邦彦は、逞しい肉体で由紀子を受け止めた。

目の前に屹立した邦彦の肉茎を、由紀子は跪いてくわえた。
飢えた女豹は、口許から唾液が流れるのも気づかず、夢中で肉茎を頬張った。

悠然と由紀子の奉仕を見下ろしていた邦彦は、ベッドで四つん這いになるよう命じた。
由紀子は尻を高く揚げて邦彦を待った。

剥き出しになった陰部が、発情で充血しているのか熱い。
由紀子は待ちきれずに牝犬のように尻を振った。

ぎゅっと尻を鷲づかみにして、猛り狂った邦彦が入ってきた。
空ろな淫膣が、みっしりと埋められた。

由紀子は低くうめいた。
もう何も考えられなかった。
ただ体だけが、快楽を貪るために勝手に動いた。

垂れ下がった乳房が、振り子のように大きく揺れている。
ぱんぱんと音を響かせ、邦彦の睾丸が淫芽を叩いた。

由紀子は邦彦に導かれ、絶頂へと駆け上がっていく。
夢中でシーツを握り締める。
獣の唸り声にも似た喘ぎ声が出る。

四年前、邦彦は邦夫のいない寂しさを紛らわす由紀子の玩具だった。
セックスも、邦彦の肉茎を使い、思い通りに自慰をしているようなものだった。

だが今は、邦彦に犯されて絶頂を迎えさせられている。
それは体だけではない。
夫の郁夫に頼らず、肩肘を張って一人で生きてきた由紀子は、初めて男に従う深い安堵感に包まれていた。

登りつめていく。
テレビの電源を切ったように、ぷつんと頭の中で何かが切れた。
体の奥で熱いものが弾けるのを感じた。

すっと意識が薄らいでいく。
由紀子は突っ伏すように、ベッドに倒れ込んだ。

つづく…
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『再びの夏』 第十五章

『再びの夏』(十五)
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(十五)

由紀子は戸惑った。

「で、でもまだ五十五よ。会社を辞めてもすぐ再就職するんでしょ?」

「いや。とりあえずは失業保険をもらって、のんびりと家で過ごそうと思うんだ。退職金と年金、それに今までの蓄えがあれば、当面生活の心配はない。再就職するかどうかは、その後ゆっくり考えることにするよ」

「……」

「八十歳まで生きるとすればあと二十五年、まだまだ先の長い人生だ。今までは会社一筋でかまってやれなかったが、これからゆっくり夫婦二人でできる趣味を探して、共白髪で暮らしていこうと思うんだ」

郁夫は薄い頭を掻いた。
由紀子は軽い眩暈を覚えた。

(共白髪ですって?)

老いは確実にやってくる。
いつかは郁夫も退職し、夫婦二人の暮らしが始まることはわかっていた。

だが由紀子の頭の中では、郁夫は死ぬまで馬車馬のように働き続ける予定になっていた。
それが突然百八十度の方向転換だ。

(今更、迷惑だわ)

今回の京都旅行だけでも、郁夫と二人でいる息苦しさに、由紀子は四苦八苦していた。
それが四六時中、しかも二十五年となると、考えただけで胃に穴が開きそうだった。

生き地獄だ。

(ああ、これが神の裁きなのかしら)

酒を飲んで上機嫌な郁夫を前にして、由紀子は絶望的なため息をついた。

大島邦彦を思った。
確かに由紀子は、郁夫を裏切って邦彦との愛欲に身を沈めた。

だがそれは、家庭を顧みない夫が悪いのだ。
結婚して三十年、家事も育児も立派にこなしてきた。
貞淑ではなかったかもしれないが、それも郁夫は預かり知らぬ秘密であって、妻としての役割は十分務めてきたはずだ。

(なのに何故?)

由紀子は、不遇の運命を突きつける神に、心の中で沸き立つ苛立ちをぶつけずにはいられなかった。

つづく…
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『再びの夏』 第十四章

『再びの夏』(十四)
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(十四)

夜の京都祇園。
賑わう表通りを折りて一つ小路に入ると、美しく着飾った舞妓とすれ違いそうな、町屋の風情がまだ残っている。

だが昔と比べると、スーツに身を固めた接待のサラリーマンは減り、女性客や若者向けの店が増えているとドライバーは言う。

由紀子は、郁夫が設えた黒塗りの社用車に乗り、変わりつつある京都の町並みを窓から眺めていた。

(こんな車じゃなくて、歩いたほうがよっぽど旅らしいのに)

心の中でそう呟く由紀子だが、大物ぶってシートにふんぞり返る郁夫の手前、黙って従うしかなかった。

やがて車は、敷居の高そうな料亭の前で停まった。

「有難う。支社長に宜しく伝えてくれ」

郁夫はドライバーへ鷹揚に手を上げると、さも偉そうに颯爽と門の中へと消えて行った。

由紀子はうんざりした。
夫婦二人で旅行しているのに、何も会社の車を使う必要もないだろう。

(哀れな人…)

妻にまで虚勢を張る郁夫の背中を見て、由紀子は軽蔑に近い感情を抱いた。
それはまるで、中身が虚ろな透明人間が。会社という鎧で身を守っているようだった。

庭が見える和室で、由紀子は郁夫と向かい合って座った。

華やかな京懐石。
先附、八寸、向附、椀物と料理は続く。

だが料理を味わうどころか、由紀子は郁夫の自慢話とうんちくで満腹になった。

「出張して全国のうまいものを食べ歩いたけど、京懐石ほど繊細な料理はないね」

「接待旅行で祇園は良く来たよ。目を瞑っても歩けるぐらいだ」

「昔は祇園で遊んだなあ。舞妓を呼んで大騒ぎをしたこともある」

「営業っていうのは、金が使えて一人前なんだ。今の若い連中は頭でっかちばかりで、接待の心得一つ知りもしない」

由紀子は耳を覆いたかった。
何故会社の話しかできないのだろう。

苛立ちが募り、気分転換にトイレへ行こうとした時、
「お前に話しておきたいことがある」と、郁夫がぐっと身を前に乗り出した。

「何ですか?改まって」

「実は、会社の早期退社に応じようと思っているんだ」

「そ、早期退社…?」

「会社はまだ俺を必要としているが、後進に道を譲ることも大切だと思う。それに老後の生活を考えると、人より早めに第一歩を踏み出しておきたい」

「老後の生活…」

郁夫はどうだと言わんばかりに、由紀子を見つめた。
もっともらしい郁夫の言葉だか、由紀子は直感的にその嘘を見破った。

三度の食事より仕事好きな郁夫が、老後の生活のために、自分から早期退社を志願するとは思えない。
先ほど若い社員への不満を口にしたのを考えても、リストラとまでいかないが、会社から肩を叩かれるようなことがあったのだろう。

つづく…
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『再びの夏』 第十三章

『再びの夏』(十三)
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(十三)

邦彦の上に跨った由紀子は、愛液にまみれた邦彦の口唇を丁寧に舌で舐めながら、肉茎を垂直に手で支えて淫花にあてがった。

そしてそのままゆっくりと腰を落とす。
邦彦の若い肉茎が花芯を貫いた。

「はうぅ…」

由紀子は上半身を仰け反らせてうめいた。
みっちりと巨茎をくわえこんだ淫膣は、歓喜の悲鳴をあげて軋んだ。

「いいっ、いいのよぉ!」

狂ったように髪を振り乱し、由紀子はリズミカルに腰を上下した。
乳房が、邦彦の目の前で千切れんばかりに揺れている。

「ああ…」

邦彦は小さく頷くと、眉間に皺を寄せて鳶色の瞳を瞑った。

「ねえ、イキそうなの?」

「は、はい…も、もうだめです」

絶頂に達していない由紀子は、後ろ髪を引かれる思いで肉茎を抜いて手でしごいた。

「ああ、ごめんなさい」

そう声を裏返らせて言うと、邦彦は太腿をヒクヒク引きつらせて射精した。

ドクドクと間歇的に吹き出す濃い白濁液が、どろりと由紀子の指に絡みついた。
だが射精してなお、邦彦の肉茎はその強度を保っている。

(若いから何度でもできそうだわ)

由紀子は息を弾ませている邦彦の愛らしい乳首を吸った。
ピクッと体が震えた。

(可愛い)

邦彦がいとおしいペットに思えた。

夫の郁夫が満たしてくれない心と体の隙間を埋めてくれる邦彦―
由紀子は指先についた白濁液に舌先で触れてみた。

苦かった。
だがそれが邦彦の分身だと思えば、苦みも甘味へと変わっていく。
由紀子はごくりと喉を鳴らした。

つづく…

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『再びの夏』 第十二章

『再びの夏』(十二)
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(十二)

由紀子は再び邦彦を椅子に座らせると、その前に立って服を脱ぎ始めた。

女体を知らぬ邦彦の熱い目線が、露になった柔肌に突き刺さる。
そんな淫らな刺激が、由紀子をストリッパーさながらに挑発的に舞わせた。

匂い立つような熟し切った裸体を前に、邦彦の愛らしい瞳が、征服欲に憑かれた雌の本能を宿していくのがわかる。

「来て」

由紀子は椅子に座って邦彦を呼んだ。
そして邦彦を足元に跪かせると、犬にお預けを仕込むように、目の前でゆっくりと両脚を開いた。

黒々と茂る草叢の下を、息を荒らげた邦彦が食い入るように覗き込んでいる。

「どう、初めて見た感想は?」

「は、はい…すごいです。もうびしょびしょに濡れて…」

「あなたが悪いのよ。私の体をじろじろ見たりするから。ねえ、舐めていいのよ」

「…はい」

邦彦は、淫らに濡れそぼつ陰部に顔を近づけた。
子宮が覗くほどに開いた淫花に、ざらついた舌先が触れた。

「あっ」

全身に電流が走り、由紀子はビクッと両脚を痙攣させた。

「す、すみません」

由紀子が痛がったと勘違いしたのか、邦彦は慌てて謝った。

「違うの、気持ちよかったのよ。いいからもっと続けて」

邦彦はほっと安堵の表情を見せ、再び草叢の中に顔を埋めた。
由紀子ははしたないほど声をあげた。

「ああ…気持ちいいわ。もっと上のほうも、あっ、そこ…そこがいいのぉ…強く、もっと強く舐めてぇ…」

郁夫のことはおろか、隣で寝ている英夫のことすら由紀子は忘れて喘いだ。

「もう、我慢できない」

由紀子は邦彦を立たせて抱きつくと、そのままひんやりと冷たい床に押し倒した。

つづく…

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『再びの夏』 第十一章

『再びの夏』(十一)
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(十一)

「勘弁してください」

邦彦は両手で股間を隠して許しを乞うた。

「だめよ。手をどけなさい」

由紀子は邦彦の前に跪き、頑なな両手を振り払った。
巨大は肉魂が、窮屈そうにブリーフの中でとぐろを巻いていた。

由紀子はごくりと生唾を呑んだ。
ゆっくりとブリーフを腰から下ろすと、バネ仕掛けの玩具のように、ピンク色の丸い先端が目の前に弾け出た。

下腹にくっつきそうなほど鋭角を保っている肉茎は、長さ太さともに郁夫のものを上回っていた。
結婚前、由紀子は三人の男を知っていたが、そのどれよりも雄大だった。

邦彦の猛り狂う肉茎を見て、由紀子は青年が自分の掌中にあることを知った。

「あなたは私の体を見て、こんなになるぐらい淫らな想像をしていたのね」

「…許してください」

「許して下さいと言うわりに、全然これは反省していないじゃない」

由紀子はドクドクと脈動する太い凶器を握ってみた。

(指が回らないほど太い。それに火傷しそうなほど熱いわ)

若い精気がみなぎる肉茎を手に、由紀子は下腹部がジンと痺れるほど興奮をした。

透明な液が滲んだ先端に口唇を当てた。

「あっ…」

小さく邦彦はうめき、両脚をかくかくと小刻みに震わせた。

「あなた、女を知らないのね?」

大きく口を開いて肉茎をしゃぶりながら、由紀子は意地悪く聞いてみた。

「…は、はい」

初めて肉茎を女に弄ばれる邦彦は、怯えたような顔で答えた。

「いいわ。私が教えてあげる」

つづく…

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『再びの夏』 第十章

『再びの夏』(十)
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(十)

「エッチな坊やね」

そう耳元で囁くと、由紀子は邦彦の腕を取って胸の谷間で挟みつけた。

「だ、だめです」

邦彦は息を荒げながら、ちらちらと乳房に触れる自分の腕を見た。
そんな仕草の一つ一つが、由紀子の母性本能を淫らに燃え立たせる。

「だめって言っても、良からぬことを考えているんでしょう?」

由紀子は、すでに不自然に膨らんだズボンの中心を掌で触れてみた。

石のように硬い。
由紀子は賭けに勝ったと思った。

「お、奥さん…」

邦彦はビクッと全身を震わせて姿勢を正した。

「ほら、ごらんなさい。こんなに大きくなっているじゃない」

俯いている邦彦の顔を覗き込んだ。
羞恥に顔を赤らめ、瞳が落ち着きなく揺れている。

(可愛い…めちゃくちゃにしてやりたい)

夫を裏切る罪悪感は頭から消えていた。
今、由紀子を支配しているのは、獲物を捕らえようとする雌の本能だけだった。

由紀子は邦彦に全裸になるよう命じた。
邦彦は、戸惑いを隠せない緩慢な動作で立ち上がると、恥じらいながらブリーフ一枚を残して裸になった。

贅肉がほとんどない長身な体は、褐色の肌に、しなやかな筋肉がうっすらと浮き出して見える。
久しぶりに見る若い男の肉体に、由紀子は下腹部の疼きを覚えた。

つづく…

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『再びの夏』 第九章

『再びの夏』(九)
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(九)

先ほどまで賑やかだった子供部屋が、もう十分ほどしんと静まり返っている。

すっと襖が開いた。

「英夫君、寝ちゃいました」

邦彦が子供部屋から出てきた。

「ご苦労様。麦茶を入れるから、椅子に座ってて」

由紀子はキッチンから声をかけた。

麦茶をテーブルの上に置き、由紀子は邦彦の前に座って向き合った。

「疲れたでしょう?」

「いえ、子供と遊ぶのは好きですから」

ぐっとコップの麦茶を飲み干すと、邦彦は目の前にいる由紀子を見て、あっと驚いた表情で慌てて目を逸らした。

由紀子は、ボディラインがくっきりと浮き出す白いTシャツに着替えていた。
しかもノーブラで。

上から見下ろすと、迫り出した半球の膨らみがくっきりと浮き彫りになっている。
白い布地に先端の乳暈の小豆色が透け、はっきりと乳首が立っているのがわかる。

邦彦は真っ赤に頬を染め、もじもじ俯いている。
由紀子も心臓が張り裂けんばかりだった。
一歩間違えば、淫乱女だと軽蔑されるかもしれない。

女としての賭けだった。
それほど由紀子は追い詰められていた。
心の隙間を埋めてくれる邦彦をものにできるなら、如何なる天罰を受けてもかまわないと思った。

「今どこを見ていたの?」

由紀子はそう言うと、立ち上がって邦彦の隣に腰かけた。

つづく…

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『再びの夏』 第八章

『再びの夏』(八)
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(八)

邦彦が恥ずかしそうに顔を赤く染めるのを見て、由紀子もかっと胸が熱く燃えた。

「まあ、悪い子ね。子供のくせに女を喜ばせるようなことを言って。いやらしい。人妻を口説こうとするなんて」

「そ、そんなつもりは…」

「ダメ、許せないわ。夫に言いつけます」

「えっ、か、勘弁してください」

邦彦は泣きそうな顔で、すがるように由紀子を見つめた。
その表情が、また母性本能をくすぐる。

「もう、仕方ない子ね。罰として私の言うことを何でも聞く?」

「聞きます。何でも聞きます」

「では罰ゲームを宣告します。今日一日、英夫と遊んでちょうだい。でも公園は暑いから我が家に来ることを許します」

そう言ってから、由紀子はどきどきしながら邦彦の反応を窺った。

「謹んで罰を受けさせて戴きます」

言葉遊びの続きだと思っている邦彦は、無邪気な表情で深々と頭を下げた。

再び頭上の木がざわっと揺れた。
邦彦の笑顔を見た瞬間、心の中に独身時代のような情熱が沸き立つのを、由紀子は止められなかった。

夫のいない家に青年を招くのは、人妻としてあるまじき行いだ。
そして自分は、彼をそのまま何もなく帰すことはできないだろう。そう確信した。

(でも私を救ってくれるのは彼しかいない)

由紀子は罪悪感に苛まれつつも、そう懸命に言い訳をして決心を固めた。

空虚な心が壊れてしまう前に―。

つづく…

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『再びの夏』 第七章

『再びの夏』(七)
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(七)

由紀子はふうっとため息をついた。

「でも短大を卒業してからもう十年近く経つのか・・・」

「十年ですか・・・すると奥さんが二十歳の時に、僕は小学生だったわけですね。この差は大きいなあ」

「こら、まだ言うか!」

由紀子は軽く邦彦の肩を叩いた。
あまりに自然でフィーリングの合った会話に、由紀子は思わず軽口をきいた。

叩いてからはっとした。

「ご、ごめんなさい。つい…」

たまたま近所に住んでいるだけの関係でしかない邦彦に、由紀子は馴れ馴れし過ぎると反省した。
だが邦彦は楽しそうに微笑んでいた。

十八歳―屈託のない青年の笑顔だ。
その悪戯っぽい瞳が愛らしく、口唇から僅かに覗く白い歯が爽やかに見えた。

由紀子もつられて笑った。
笑いながら由紀子は、乙女のように胸が高鳴っている自分に気がついた。

(馬鹿な私…)

由紀子は自嘲しつつ、邦彦と一歩距離を置こうとした。

「全く、オバサンをからかうのもいい加減にしなさい」

だが邦彦は、由紀子の気持ちを掻きむしるような台詞を口にした。

「本当にオバサンだと思っていたら、冗談でも歳のことなんて言えませんよ。奥さんはお若くて綺麗ですよ」
つづく…

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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご挨拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。               
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
※ 小説を読まれる方へ・・・   更新記事は新着順に表示されますので、小説を最初からお読みになりたい方は、各カテゴリーから選択していただければ、第一章からお読みいただけます。
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