『再びの夏』 第二十一章
『再びの夏』(二十一)
FC2 R18官能小説
(二十一)
ホテルのツインルーム。
照明を落とした灰色の闇に、郁夫の高鼾が響き渡る。
(まるで豚の鳴き声だわ)
由紀子は喧しさに思わず耳を覆った。
午後十一時。
祇園からホテルに戻った郁夫は、いい気分で酒に酔い、久しぶりに由紀子を抱くと、そのままベッドで眠りこんでしまった。
(本当におめでたい人)
由紀子は郁夫が羨ましかった。
言いたいことを言い、やりたいことをやる―他人の心情を思い遣らない独り善がりな人間は、きっとストレスなどとは無縁なのだろう。
だが今夜はその方が良かった。
由紀子は浴衣の合わせを整えると、郁夫が熟睡しているのを何度も確認し、鍵を持ってそっと部屋の外へ出た。
胸が高鳴った。
忍び足で廊下を横切り、向かいの部屋のドアをノックした。
細くドアが開いた。
「どうぞ」
その声に促されて部屋に入った。
由紀子の部屋と同じツインルームだ。
背後でガチャとドアの鍵が閉まった。
「いらっしゃい」
部屋の主は邦彦だった。
由紀子は邦彦の胸に飛び込んだ。
「会いたかったわ、あなた」
「ああ、待ち遠しかったよ」
邦彦は優しく由紀子を抱き返した。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
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ホテルのツインルーム。
照明を落とした灰色の闇に、郁夫の高鼾が響き渡る。
(まるで豚の鳴き声だわ)
由紀子は喧しさに思わず耳を覆った。
午後十一時。
祇園からホテルに戻った郁夫は、いい気分で酒に酔い、久しぶりに由紀子を抱くと、そのままベッドで眠りこんでしまった。
(本当におめでたい人)
由紀子は郁夫が羨ましかった。
言いたいことを言い、やりたいことをやる―他人の心情を思い遣らない独り善がりな人間は、きっとストレスなどとは無縁なのだろう。
だが今夜はその方が良かった。
由紀子は浴衣の合わせを整えると、郁夫が熟睡しているのを何度も確認し、鍵を持ってそっと部屋の外へ出た。
胸が高鳴った。
忍び足で廊下を横切り、向かいの部屋のドアをノックした。
細くドアが開いた。
「どうぞ」
その声に促されて部屋に入った。
由紀子の部屋と同じツインルームだ。
背後でガチャとドアの鍵が閉まった。
「いらっしゃい」
部屋の主は邦彦だった。
由紀子は邦彦の胸に飛び込んだ。
「会いたかったわ、あなた」
「ああ、待ち遠しかったよ」
邦彦は優しく由紀子を抱き返した。
つづく…
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