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『あやかしの肌』・・・第十七章

     『あやかしの肌』
第十七章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

辰二は煙草に火をつけた。
案内された店の二階は、六畳と四畳半が二間続く美千代の住まいになっていた。

「引き留めちゃってごめんなさいね」

襖を開けて、藍染めの粋な浴衣に着替えた美千代が現れた。

「いや、約束だから」

辰二が団扇を扇ぐと、蚊取り線香と煙草の煙がゆらゆらと混じって揺れた。
美千代は敷き布団を引き終えると、男を知り尽くした年増女とは思えぬ羞恥を口許に浮かべた。

「裸になった方がいいの?」

「・・ああ」

「お風呂なら平気だけど、二人きりだと恥ずかしいわ」

布団に座って背中を見せた美千代は、もじもじしながら帯を解き、はらりと藍の浴衣を肩から落とした。
乳白液を流したような肌が現れた。

左手を布団について右手で乳房を隠した美千代の背中は、やや左へしなるように傾き、半分露になった尻とともに、浮世絵にも似た女の艶っぽい風情を描いている。
辰二は背後へ寄ると、震える指先でそっと美千代の肩に触れてみた。

しっとりと潤いを保った肌に、指の腹が貼りついてしまう錯覚に襲われる。
肌が濡れている時とは違って、一本一歩の産毛が絶妙な触感を増幅する。

(ああ・・)

陶然として言葉を失った辰二は、夢中で肩から背中へと指を這わせた。

「うふ、くすぐったいわ」

背中をくねくねとねじる美千代を、辰二は布団へうつ伏せに寝かせた。
肩からなだらかに下る背中に掌を這わせると、こんもりと盛り上がった白い双丘へ駆け上がる。
瑞々しい白桃を思わせる美千代の尻には、ビロードを思わせる産毛の濃密な触り心地があった。
つづく・・・

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『あやかしの肌』・・・第十六章

     『あやかしの肌』
第十六章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

辰二は美千代の過去を夢想した。
おそらく年老いた大旦那のことだ。
前戯で美千代の体を狂わせても、三十路を過ぎた熟肉を、最後まで満たすことはできなかっただろう。

(肌が男を求めている)

長年女の肌を見てきた辰二は、三助の勘で体の火照り具合がわかった。
その夜夫婦の営みを期待する妻の肌は、どこかいつもより熱くしっとりと湿っている。

間違いなく美千代の肌は、貪欲に男を求める女盛りの艶めきを滲ませていた。
辰二は鰯の丸干しを頭からかじった。

「もう十一時か・・女将、そろそろお愛想してくれ」

「あら、もう少しいいじゃない」

美千代は赤く潤んだ瞳で誘うような流し目を送ってきた。

「しかし明日があるから」

「ああん、肩が凝っちゃったの・・揉んでくれるって約束したじゃない。店を早仕舞するからちょっと待ってて」

辰二を席に座らせたまま、いそいそと美千代は店の外へ出てのれんを下ろした。
夜が更けていく。

神田の街もやっと静けさを取り戻しつつあった。
網戸を嵌めた窓の外には、吊りしのぶの風鈴が、チリンチリンと夏の弱い夜風に揺れている。
つづく・・・

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『あやかしの肌』・・・第十五章

     『あやかしの肌』
第十五章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

闇に暮れた神田の路地裏には、街燈換わりの赤提灯が点々と連なっている。
その明かりに照らされて、千鳥足で歩く男達の影が路面に揺れていた。

「ゴマすり部長なんかに、俺の実力がわかってたまるかよ!」

「いひひ、庶務課の和子ちゃん、でかいチチがたまらんなあ」

泥酔したサラリーマンの喧騒が、焼き鳥の煙とともに路地の隅々にまで充満していく。
辰二は『酒肴美千代』にいた。
カウンターでコップ酒片手の辰二に、女将が焼きたての鰯の丸干しを出した。

「本当に来てくれるとは思わなかったわ」

「ああ、今日は定休日だから」

先ほどまでいたサラリーマン達は帰り、客は辰二独りになっていた。
女将は加賀美千代と名乗った。
三十五歳、この店の二階で暮らしをしていると言う。

「あたしね、辰巳芸者だったの。昔は大店のご隠居に囲われていたのよ」

しんみりと呟くと、美千代は辰二が返杯した日本酒をくっと小気味よくあおった。
芸者だった美千代は、呉服屋の隠居に見染められて妾になった。

ところがその隠居が昨年亡くなり、親族から厄介扱いされる形で手切れ金を貰い、ここ神田に小料理屋を開いたのだと言う。
辰二は酒でぽっと赤らんだ美千代の頬を見つめた。

「粋筋の女だと思っていたよ」

「厭ねえ、お風呂で裸を見られたと思うと恥ずかしいわ」

カウンターの中で美千代は、着物の胸元に手を当ててもじもじと身をよじった。

「旦那が亡くなって今は独りかい?」

「決まっているでしょう。あたしって結構一途な女なのよ」

ややぽっちゃりとした顔立ちの美千代が、薄いピンク色の頬を窄めて口を尖らせた。
つづく・・・

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『あやかしの肌』・・・第十四章

     『あやかしの肌』
第十四章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

女将の上腕がわずかに鳥肌立っている。

「ああ、気持ちいいわ」

「そうかい」

肌を覆う手拭いが恨めしかったが、辰二自身も類稀な触感に酔い痴れた。
三十路半ばでありながら、背中から尻にかけては、見事な砂時計型の体形を維持している。

だがうっすらと脂肪が乗った肌は、表面に湯玉ができるほどもっちりと張り、熟した女盛りの媚肉をこれ見よがしに誇っていた。
女将はうっとりとした顔で言った。

「ねえ、本当に次のお休みに飲みに来なさいよ。肩を揉んでくれたらタダにしてあげるから」

「気が向いたら寄らせてもらうよ」

またこの肌に触れられるかと思うと、背中を押す親指に自然と力が入った。

「ああっ」

不意の力強い指圧に、女将は思わず小さな声を洩らした。
そのどこか艶めかしい余韻を含んだ声は、辰二の股間に熱いたぎりを残したのだった。
つづく・・・

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『あやかしの肌』・・・第十三章

     『あやかしの肌』
第十三章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

(おや?)

竹の湯で働いて一五年、流しを頼む客の背中はたいがい覚えている。
ところが木札の前には見慣れない背中があった。

「お待たせしました」

「あら、済まないわね」

その女客と顔を見合わせて、思わず辰二は一歩後退りした。
昼間会った小料理屋の女将だった。

「まあ、昼間の・・お湯屋の三助さんだったのね」

「ど、どうも」

「厭ねえ、恥ずかしいわあ・・神田へ越してきて初めて頼んだ三助さんが、昼間顔を合わせた兄さんだなんて」

辰二の視線を警戒するように、女将はそっと手拭いで乳房を隠した。
だが鏡に映る顔には、男を挑発する妖婦の媚笑を含んでいた。

垢すりに石鹸をつけた辰二は、女将の背中をゆっくりと流し始めた。
一点の染みもない白い背中。

昼間陽射しの中で見た時よりも、乳白色の肌は深みのある青を湛えている。
それが垢すりで擦るたびに、ふわっと薄い紅を注したように色づく。

(こ、これは・・)

艶めかしさに辰二はごくっと生唾を呑み込んだ。
薄く肌理細かい肌から、熱い女の血潮が脈動とともに伝わってくる。

辰二は動揺を隠しながら、背中へざっと熱めの湯を流した。
そしてほんのり薄桃色に上気した肩に手拭いをかけ、上から指の腹でぐいぐいと揉み始めた。

(・・こんな肌があるのか)

軽く押せばとろけるような軟らかさ、そして強く押せばきゅっと引き締まった弾力がある。
その融通無碍な深みが、この世のものとは思えない法悦を肌に潜ませている。
つづく・・・

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『あやかしの肌』・・・第十二章

     『あやかしの肌』
第十二章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

着物姿の女将がいた。
たすき掛けして、夜の仕込みを始めたところらしい。
硝子戸に映る辰二の影を見たのか、布巾で手を拭きながら女将が出て来た。

「ごめんなさい、昼はやっていないのよ」

三十代半ばぐらいだろうか、髪を後ろに束ねた丸顔が艶っぽい。
化粧はしていないが、ほんのり年増の色気を漂わせた流し目が、男の背筋をぞくっと震わせる。

「あ、いや・・近くに住んでいるんだけど、ここに店ができたって知らなくて・・」

「今月から始めたんですよ。お近くなら是非夜に来て下さいな」

女将が頭を下げると、真っ白い襟首がちらっと覗いた。

「あ、ああ・・わかった」

真夏の陽射しに相応しからぬ、真夜中の月光にも似た肌の青さに、思わず辰二は言葉を詰まらせた。
そしてその眩しさから逃げるように、辰二は路地を抜けて竹の湯へ駆け込んだ。

瞼に残る女将の美肌に、釜場へ戻っても辰二は年甲斐もなく胸が高鳴らせていた。
盛吉が入って来た。

「タツ、そろそろ釜に火を入れてくれ」

「は、はい」

我に返った辰二は、首を振って妄想を掻き消すと、小走りに薪が積んである裏庭へと向かった。
休業日の翌日で客は普段より多かった。
辰二は湯の温度をやや高めにして、釜場で早めの夕食を掻き込んだ。

流しのブザーが鳴った。
辰二は食事もそこそこに、風呂桶を手に女湯へ向かった。

夕方に銭湯へ来るのは、楽隠居か泥だらけの子供、彫り物を背負った遊び人、夜が忙しい水商売人が多い。
浴槽で泳ぐ女の子を叱りながら、辰二は流しを頼む木札を探した。
つづく・・・

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『あやかしの肌』・・・第十一章

     『あやかしの肌』
第十一章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

国電が走るガード下のパチンコ屋で、煙草を二カートン勝った辰二は、昼下がりの神田をぶらぶらと歩いていた。
池田内閣の経済成長とやらで、雨後の筍のように神田にも会社が増えた。

ポマードで髪を固めた黒縁眼鏡のサラリーマン達が、ランニング姿の辰二を好奇な目で見ながら、さも忙しそうにせかせかと街を行き来している。
食堂で鯖の塩焼きを食べながら、辰二は神田の街が変わって行くのを実感した。

職人の街だった神田が、よそ者のサラリーマンに占拠されつつあった。
気風のいい男衆はもちろん、買い物カゴを手に割烹着を着た女房連、ベーゴマやチャンバラごっこで遊ぶ子供達の姿はすっかり見かけなくなった。

辰二は不安を感じた。
企業進出で神田から地元の住民が消えて行く。
わずかに残った住民も、所得が増えて風呂つきの団地に住むようになれば、当然ながら銭湯の商売は立ち行かなくなる。

後五六年もすれば、東京の銭湯は次々とつぶれていくに違いない。
暗欝とした心情で竹の湯へ戻る途中、路地を入ったところに、辰二は開店したばかりの小料理屋を見つけた。

『酒肴美千代』

昼は営業しておらず、店はのれんを下ろしていた。
まだ新しい硝子戸から中を覗くと、一階がカウンター席だけの小さな造りで、二階が住居になっているようだった。
つづく・・・

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『あやかしの肌』・・・第十章

     『あやかしの肌』
第十章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

子供でありながら、辰二は陶然と母の肌に魅惑された。

「・・母さん、背中に触っていい?」

「いいよ、でも変なことを言う子だこと」

笑いながら母は、体を洗うのを止めて背中を見せた。
そっと掌で撫でてみた。
物心ついて初めて触れた母の肌は、特殊な粘液でも塗っているのか、ねっとりと吸いついてくるような感じがした。

「母さんの背中、すごくも気持ちええ」

まるで皮膚と皮膚が溶け合い、掌が温かい母の体へと滲み入っていくようだった。
不意に母の背中が小刻みに震えた。

「ごめんよ・・幼いお前に不憫をかけてしまうね」

母は泣いているようだった。
母がいなくなってしまう気がして、辰二は白い背中にしがみついた。

「母ちゃん、どうして泣くの?」

涙の意味もわからないまま、辰二は頬を母の背中に押し当てて一緒に泣いた。
翌朝、母は家を出て行った。

以来三十年、二度と母に会うことはなかった。
だがその肌の感触は、その夜から永遠に辰二の掌へ刻まれたのだった。
つづく・・・

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『あやかしの肌』・・・第九章

     『あやかしの肌』
第九章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

母の記憶――それは心細いほど微かにしか残っていない。
戦前、尋常小学校へ上がって間もない頃だったろう。

辰二は山奥の農家で生まれ育った。
黒く煤ぼけた大きな生家には、楕円形の古い木桶風呂があった。

冬の夜、割れた磨り硝子の外は、子供の身の丈ほどの雪が降り積もっていた。
ざあっと湯を流す音が反響する。
立ち籠めた湯気に揺らぐランプの灯が滲んでいる。

「体を洗ってやるから出なさい」

すのこの上で立て膝をついた母が、桶にお湯を汲みながら辰二を呼んだ。
よじ登るようにして湯船から出た辰二を、母は前に立たせて手拭いで洗い始めた。

「くすぐったいよ、母ちゃん」

「ほら、男の子なら我慢しなさい」

首筋や脇の下を洗うたび、逃げようとする辰二の手を母は何度も強くつかんだ。
何故かその夜、母はいつもより辰二を隅々まで念入りに洗ってくれた。

むろんその時は何も知らなかった。
だが丁寧に体を洗う母に、良からぬ不安を直感的に抱いていたのかもしれない。
膝小僧を洗うために屈んだ母の背中を、辰二は肩越しにじっと見つめた。

朦々と湧き立つ湯気の中、仄かな桃色を湛えた白い肌が煌めく。
そのむっちりと張りのある肌には、まるで真珠のような湯の飛沫が無数に震えていた。
つづく・・・

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『あやかしの肌』・・・第八章

     『あやかしの肌』
第八章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

辰二は未だに独り身だった。
女客が辰二を男と見ていないのと同様、辰二も乳房や尻そのものに、今はあまり魅力を感じることはなかった。

銭湯の見習いを始めた時は、さすがに天を衝く肉茎を慰めるのに苦労した。
だが十五年も女の裸身を見続ければ、性欲が鈍っていくのは当然のことだった。

(女の裸は仕事だけで十分だ)

男なら誰しも憧れる禁裏にいながら、それ故に辰二は女への欲望を失っていた。
艶めかしい女肉の群れも、所詮は生活の糧としか見られなくなっていた。
辰二は最後にパンと老婆の背中を叩いた。

「タッちゃん、ありがとうよ」

弛んで染みだらけの肌は女の歴史を雄弁に物語っていた。
女の裸を見飽きた辰二だが、まだ満たされない女肉への想いが一つあった。

それは肌だった。
辰二は、隣で子供の体を洗う若い人妻の肌へ目を遣った。

ザラザラした藁半紙のような肌だった。
これまで何百という女に触れてきた辰二だが、あの夜のように、心を揺さぶられる肌とは相見えていなかった。

(・・母さん)

幼い頃生き別れになった母、辰二はその肌の感触を今も忘れられずにいた。
辰二の心を安らかしめるものは、淡い記憶の中に現れる母の肌だけだった。
そんな蒼い感傷を心の支えにして、辰二は独り厳しい東京での暮らしに堪えてきた。

思い出を美化しているだけかもしれない。
苦笑した辰二は、老婆から流しの木札を受け取ると、空いた風呂桶を片づけながら釜場へ戻って行った。
つづく・・・

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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご挨拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。               
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
※ 小説を読まれる方へ・・・   更新記事は新着順に表示されますので、小説を最初からお読みになりたい方は、各カテゴリーから選択していただければ、第一章からお読みいただけます。
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