『あやかしの肌』・・・第八章
『あやかしの肌』
第八章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌
辰二は未だに独り身だった。
女客が辰二を男と見ていないのと同様、辰二も乳房や尻そのものに、今はあまり魅力を感じることはなかった。
銭湯の見習いを始めた時は、さすがに天を衝く肉茎を慰めるのに苦労した。
だが十五年も女の裸身を見続ければ、性欲が鈍っていくのは当然のことだった。
(女の裸は仕事だけで十分だ)
男なら誰しも憧れる禁裏にいながら、それ故に辰二は女への欲望を失っていた。
艶めかしい女肉の群れも、所詮は生活の糧としか見られなくなっていた。
辰二は最後にパンと老婆の背中を叩いた。
「タッちゃん、ありがとうよ」
弛んで染みだらけの肌は女の歴史を雄弁に物語っていた。
女の裸を見飽きた辰二だが、まだ満たされない女肉への想いが一つあった。
それは肌だった。
辰二は、隣で子供の体を洗う若い人妻の肌へ目を遣った。
ザラザラした藁半紙のような肌だった。
これまで何百という女に触れてきた辰二だが、あの夜のように、心を揺さぶられる肌とは相見えていなかった。
(・・母さん)
幼い頃生き別れになった母、辰二はその肌の感触を今も忘れられずにいた。
辰二の心を安らかしめるものは、淡い記憶の中に現れる母の肌だけだった。
そんな蒼い感傷を心の支えにして、辰二は独り厳しい東京での暮らしに堪えてきた。
思い出を美化しているだけかもしれない。
苦笑した辰二は、老婆から流しの木札を受け取ると、空いた風呂桶を片づけながら釜場へ戻って行った。
つづく・・・
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だが十五年も女の裸身を見続ければ、性欲が鈍っていくのは当然のことだった。
(女の裸は仕事だけで十分だ)
男なら誰しも憧れる禁裏にいながら、それ故に辰二は女への欲望を失っていた。
艶めかしい女肉の群れも、所詮は生活の糧としか見られなくなっていた。
辰二は最後にパンと老婆の背中を叩いた。
「タッちゃん、ありがとうよ」
弛んで染みだらけの肌は女の歴史を雄弁に物語っていた。
女の裸を見飽きた辰二だが、まだ満たされない女肉への想いが一つあった。
それは肌だった。
辰二は、隣で子供の体を洗う若い人妻の肌へ目を遣った。
ザラザラした藁半紙のような肌だった。
これまで何百という女に触れてきた辰二だが、あの夜のように、心を揺さぶられる肌とは相見えていなかった。
(・・母さん)
幼い頃生き別れになった母、辰二はその肌の感触を今も忘れられずにいた。
辰二の心を安らかしめるものは、淡い記憶の中に現れる母の肌だけだった。
そんな蒼い感傷を心の支えにして、辰二は独り厳しい東京での暮らしに堪えてきた。
思い出を美化しているだけかもしれない。
苦笑した辰二は、老婆から流しの木札を受け取ると、空いた風呂桶を片づけながら釜場へ戻って行った。
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