『あやかしの肌』・・・第十二章
『あやかしの肌』
第十二章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌
着物姿の女将がいた。
たすき掛けして、夜の仕込みを始めたところらしい。
硝子戸に映る辰二の影を見たのか、布巾で手を拭きながら女将が出て来た。
「ごめんなさい、昼はやっていないのよ」
三十代半ばぐらいだろうか、髪を後ろに束ねた丸顔が艶っぽい。
化粧はしていないが、ほんのり年増の色気を漂わせた流し目が、男の背筋をぞくっと震わせる。
「あ、いや・・近くに住んでいるんだけど、ここに店ができたって知らなくて・・」
「今月から始めたんですよ。お近くなら是非夜に来て下さいな」
女将が頭を下げると、真っ白い襟首がちらっと覗いた。
「あ、ああ・・わかった」
真夏の陽射しに相応しからぬ、真夜中の月光にも似た肌の青さに、思わず辰二は言葉を詰まらせた。
そしてその眩しさから逃げるように、辰二は路地を抜けて竹の湯へ駆け込んだ。
瞼に残る女将の美肌に、釜場へ戻っても辰二は年甲斐もなく胸が高鳴らせていた。
盛吉が入って来た。
「タツ、そろそろ釜に火を入れてくれ」
「は、はい」
我に返った辰二は、首を振って妄想を掻き消すと、小走りに薪が積んである裏庭へと向かった。
休業日の翌日で客は普段より多かった。
辰二は湯の温度をやや高めにして、釜場で早めの夕食を掻き込んだ。
流しのブザーが鳴った。
辰二は食事もそこそこに、風呂桶を手に女湯へ向かった。
夕方に銭湯へ来るのは、楽隠居か泥だらけの子供、彫り物を背負った遊び人、夜が忙しい水商売人が多い。
浴槽で泳ぐ女の子を叱りながら、辰二は流しを頼む木札を探した。
つづく・・・
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「ごめんなさい、昼はやっていないのよ」
三十代半ばぐらいだろうか、髪を後ろに束ねた丸顔が艶っぽい。
化粧はしていないが、ほんのり年増の色気を漂わせた流し目が、男の背筋をぞくっと震わせる。
「あ、いや・・近くに住んでいるんだけど、ここに店ができたって知らなくて・・」
「今月から始めたんですよ。お近くなら是非夜に来て下さいな」
女将が頭を下げると、真っ白い襟首がちらっと覗いた。
「あ、ああ・・わかった」
真夏の陽射しに相応しからぬ、真夜中の月光にも似た肌の青さに、思わず辰二は言葉を詰まらせた。
そしてその眩しさから逃げるように、辰二は路地を抜けて竹の湯へ駆け込んだ。
瞼に残る女将の美肌に、釜場へ戻っても辰二は年甲斐もなく胸が高鳴らせていた。
盛吉が入って来た。
「タツ、そろそろ釜に火を入れてくれ」
「は、はい」
我に返った辰二は、首を振って妄想を掻き消すと、小走りに薪が積んである裏庭へと向かった。
休業日の翌日で客は普段より多かった。
辰二は湯の温度をやや高めにして、釜場で早めの夕食を掻き込んだ。
流しのブザーが鳴った。
辰二は食事もそこそこに、風呂桶を手に女湯へ向かった。
夕方に銭湯へ来るのは、楽隠居か泥だらけの子供、彫り物を背負った遊び人、夜が忙しい水商売人が多い。
浴槽で泳ぐ女の子を叱りながら、辰二は流しを頼む木札を探した。
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